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中学校の同窓会。僕は、村瀬まいと11年ぶりに再会。けれど、彼女と話をしたのは・・
カテゴリ: 官能小説の館    掲示板名:ノンジャンル 官能小説   
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1:中学校の同窓会。僕は、村瀬まいと11年ぶりに再会。けれど、彼女と話をしたのは・・
投稿者: 1Q79
2006年6月。同窓会は都内のホテル宴会場で開かれた。
幹事を務めたのは横山トオルだった。

横山の家は裕福で、父親は輸入貿易会社を経営していた。
だから会費は妙に安かったし、料理もそこそこまともだった。

僕は地元の成人式には出なかったから、
ほとんどの同級生とは卒業以来、11年ぶりの再会だった。

ある友人は昔のままだったし、ある友人は見違えるほど太っていたし、
ある友人は驚くほど禿げ上がっていた。
時間の流れ方は人それぞれだった。


村瀬まいは、昔のままだった。
黒髪のロングストレート、落ち着いた雰囲気、どこか遠くを見ているような表情は、
中学3年生の彼女と何ひとつ変わらなかった。

当時の僕にとって彼女はただの「同じ部活の同級生」以上の存在ではなかった。

僕たちは同じ吹奏楽部だった。僕はサックスを吹いていた。彼女はフルートだった。

サックスパートの前にフルートパートが座っていたけれど、彼女と話した記憶は一度もない。
なので、彼女が同窓会で僕に話しかけてきたときは、本当に驚いた。

「久しぶり、元気してた?」









彼女はごく自然に言った。
僕は一瞬、誰かと間違えているんじゃないかと思った。

「人違いじゃないかな。僕は、…だよ?」

彼女は軽く首を振った。

「知ってるわよ、そんなこと」

彼女が微笑んだ。そのときの笑顔を、僕は今でも忘れられない。

---

彼女は中学3年のころ、同級生と付き合っていた。
僕はその彼が嫌いだった。というか、一度殴ったことがある。
理由は単純だ。そいつが僕の親しい友人をいじめていたから。





だから僕は、そいつの後頭部を思いっきり殴ってやった。
次の日から彼はいじめをやめた。

だから、村瀬まいが僕に話しかけてきたとき、僕は彼女に殴られるんじゃないかと思った。でも彼女はただ微笑んで、

「元気してた?」と言っただけだった。

---

「私ね、結婚して子供がいるの。3歳の娘が」

村瀬はそう言った。
僕の中では彼女は11年前のままの中学生で、記憶がそこで止まっている。
だから、彼女が結婚して、子供を産んで、母親になったという事実がすぐには飲み込めなかった。


「旦那さんは?」

「証券会社に勤めてるの。私より7歳年上」

「どこで知り合ったんだい?」

「楽団。私、今ヴァイオリンをやってるの」

「ヴァイオリン?」

彼女はうなずいた。
中学のころ、彼女は合唱コンクールでピアノ伴奏もしていた。
たしかに、彼女がヴァイオリンを弾いている姿を想像するのは、それほど難しくはなかった。

「今度、定期演奏会があるんだけど、よかったら来ない?」




「もちろん、行くよ」

「あとね、楽器をやってたなら、ぜひ読んでほしい漫画があるの」

「漫画?」

「のだめカンタービレって知ってる?」

「のだめ…なんだって?」

「のだめ・か・ん・たー・び・れ」

「聞いたことないな」

「吹奏楽出身なら、きっとハマると思うわ」

それで、次に会うときに貸してくれることになった。

「よかったら、メアド交換しない?」






彼女の提案で、僕たちは連絡先を交換した。

---

同窓会が終わった夜、村瀬からメールが届いた。

「今日はありがとう。とても楽しかった」

「正直、驚いたよ。君とは中学時代、一度も話したことがなかったからね」

「私ね、友達が少なかったの。だから、今日誰と話せばいいのか、ホントは困っていたの」

「そんなことないだろ?君は昔から勉強もできたし、ピアノだって上手だったし、仲のいい友達くらいいただろ?彼氏だっていたじゃないか」




「そう、あなたが殴った彼ね(笑)」

「だから余計に驚いたんだよ。てっきり、僕のこと嫌ってると思ってた」

「今日ね、何人かの人に話しかけたんだけど、みんな困った顔してたわ」

「それはなんで?」

「今日、初めて話しかけたからよ。私、本当に友達がいなかったの」


彼女は控えめに言っても、かなりの美人だったし、
性格はよく分からないけれど、陰湿な嫌がらせをするタイプには見えなかった。
ただ、とても大人びていて、どこか近寄りがたい雰囲気があったのは確かだ。

まるで、僕たちとは違う世界の住人みたいに。



「私って、いつもそうなのよ。どこへ行っても、誰からも話しかけられないの。だから今日、あなたが普通に話してくれたことが、とても嬉しかったわ」

それから、僕たちはメールをやり取りするようになった。

そして、そのうち僕は休みのたびに、
村瀬の家に遊びに行くようになった。

**村瀬のこと**

僕たちは、村瀬の家で三人で遊んだり、食事をしたりした。娘はまだ三歳だった。
食事のあとは、彼女の家でピアノやヴァイオリンを習った。
僕にとっては、そう悪くない時間だった。

村瀬の住むマンションには、同じ会社の人間しかいなかった。





でも彼女には、気の合う奥さんも、ファミレスでお茶をするようなママ友もいなかった。
この土地に特別な縁があるわけでもない。ただ、三歳の娘を育てるのに精一杯だった。

「本当は、子供なんて欲しくなかった」

ある晩、村瀬はそう言った。

彼女は授かり婚だった。
最初に彼と身体を重ねたとき、避妊はしなかった。
生理がこなかったけれど、彼女は気にしなかった。
そんなことは今までにも何度かあったし、
仕事が忙しくて病院に行く暇もなかった。
妊娠検査薬を買うことすらしなかった。


ある日、突然、多めの出血があった。
それでようやく病院に行った。妊娠が発覚したのは、そのときだった。
その日の帰り道、彼女は泣きながら歩いて帰った。

「母が厳しくてね、しつけが本当に厳しかったの。だから家にいるのがとても嫌だったの。今でも母のことは好きになれない。そんな家庭で育ったから、子供を持つなんて考えられなかったし、結婚もしようとは思わなかった」

妊娠中、彼女はうつ病を患った。
心療内科に通った。治療の一環で、気持ちを手紙に書くというプログラムがあった。
そのときの手紙を、彼女は僕に見せてくれた。書かれていたのは、断片的な言葉の羅列だった。


意味のわからない言葉が散乱していた。
読んでいると、こちらの頭がおかしくなりそうだった。
あれを書いたのが、目の前にいる村瀬と同じ人物だとは思えなかった。

彼女が今、笑って僕と話をしていることは、ある種の奇跡のように思えた。

でも、彼女は時々、三歳の娘に向かってひどく大きな声で怒鳴った。
おもちゃを片付けなかったり、決まった時間にピアノの練習をしなかったりすると、
爆発したように声を上げた。僕が目の前にいるときでさえ。

「何度言ったらわかるの?」

「もういい加減にしてよ!」

彼女がそう叫ぶたびに、僕は黙って見ているしかなかった。


そうかと思えば、しばらくすると何事もなかったかのように振る舞った。
ニコニコしながら、のだめカンタービレの話をした。
まるで、どこにでもいる普通の母親のように。

**映画の日**

相変わらず、僕は休日になると彼女の家に通った。
ある日、マンションの住人の中年女性が僕に話しかけた。

「今日はお休みですか?いつも三人一緒で楽しそうですね」

たぶん、彼女は僕を村瀬の夫だと思ったのだろう。


***********


「ねぇ、あなた、映画監督になるのが夢だったわよね?」

「うん、確かにそんなことを言ってた。でも、もう僕は中学生じゃないよ」

「もう何年も映画を観ていないのよ。今度、一緒に行かない?」

「三人で?」

「子供は実家に預けられるわ」

こうして、僕たちは映画を観に行くことになった。

七月の休日、彼女の娘を実家に預け、僕たちは実家近くの駅で待ち合わせた。
村瀬は車をコインパーキングに停め、僕の車に乗り込んだ。


「車で男性と二人きりでどこかに行くのって、初めて」

「旦那さんとはドライブしないの?」

「あの人、免許を持っていないの」

村瀬の希望で、『デスノート』を観ることになった。
映画館には上映時間ギリギリに到着した。
ポップコーンをひとつ買って、慌ただしくスクリーンに向かう。

劇場の中は真っ暗だった。
進む前が見えない村瀬は声を出さずに、
両手を前に差し出しながら、僕に合図を送った。

僕は彼女の左手をそっと握った。
彼女の手は細く、柔らかく、少し汗ばんでいた。



席についたとき、ようやく僕は自分が大胆なことをしていることに気づいた。
気まずくなって、手を離した。でも、その瞬間、彼女が僕の耳元で小さく囁いた。

「ありがと」

映画の途中、村瀬はそっと僕の手の上に自分の手を重ねた。

僕は手の平を返し、彼女の手を握りしめた。
映画が終わるまで、僕たちはずっと手をつないでいた。

劇場を出ても、そのことには一切触れなかった。
わざわざ話すようなことではなかったし、村瀬の旦那に対して後ろめたい気持ちもなかった。




夕食は近くのレストランでとった。
中学の部活の話、初恋のこと、卒業式の思い出、彼女の大学時代、
そして旦那さんが初めての相手だったこと——そんな話を二時間くらい続けた。

彼女の車がある駐車場まで送ったとき、村瀬が言った。

「もう少し、あなたと話がしたい」

「来週、主人が神戸から帰ってくるの」

「そうか。もう遊びに行けなくなるね」

「結婚なんてしたくなかった。私は子供も家庭も持つべきじゃなかったのよ」

僕は何も言えなかった。






「今日は、妊娠がわかった日以来、初めて楽しいと思えた日だったわ」

「実は、僕は女性と映画を二人きりで観るのは、今日が初めてだった」

「それじゃあ、私はあなたにとっての“初めての女”ね」

そう言って彼女は笑った。


**************


村瀬が亡くなったという知らせを受け取ったのは、
それからちょうど一か月後のことだった。

中学の吹奏楽部で一緒だった友人から電話があり、
彼女の死を知らされた。

けれど、それが現実のことだとはどうしても思えなかった。

ついこないだ、僕たちは手をつないで映画を観たばかりだったのだ。
そんなふうに簡単に人が死ぬなんて、どうしても信じられなかった。

お通夜には、中学時代の友人たちと一緒に参列した。
そこで初めて、村瀬の旦那の顔を見た。
何も感じなかった。ただそこにいるだけの、知らない男だった。
彼のそばには、小さな女の子が立っていた。



遺影の中の村瀬は、
僕の知っている村瀬とは少し違う顔をしていた。

棺の中の彼女は、まるで人間用に作られていないみたいに窮屈そうに見えた。
でもその顔は、まだ生きているみたいに穏やかだった。

お通夜のあと、自宅に戻って、押し入れの奥から中学時代のアルバムを取り出した。
3年4組のページを開くと、さっき見たのと同じ顔の少女が、そこにいた。
ほんの数秒間、その写真を見つめた。そしてふと思った。

人の死というのは、特別なものではなく、
ただそこにあるものなのかもしれない、と。


僕は他にも村瀬が写っている写真を探した。
でも、どういうわけか、どこにも見つからなかった。

夜が更けていく中、
僕は村瀬から借りたままになっていた『のだめカンタービレ』を手に取った。

パラパラとページをめくると、
彼女が指で折った跡がいくつか残っていた。

僕はそのページを開いたまま、
しばらくじっと見つめていた。
 
2025/02/26 21:45:59(z9j34kqH)
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