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理恵の身体がバスルームの姿鏡に映っている。
シャワーを出したまま、溢れ出る蒸気に包まれながら、髪を洗い終えた彼女は鏡に映っている自分の身体を見つめていた。少し太くなった横腹を指でつまみ、 〈男性からみれば、魅力のない身体なのだろう〉 そう思った。 脱衣所で身体を拭き、体重計に乗れば、 〈そこまで太くなってはいない〉 と、傷ついた自尊心を少しばかり取り戻せた気がした。 42歳未婚。婚姻歴はなく、子供もいない。 東京都台東区、隅田川の側とはいえ、ローンを組み買った分譲マンション。1LDKの部屋は彼女だけの空間だった。いや彼女しかいない寂しい空間なのかも知れない。 いわゆるキャリアウーマン。 新卒で就職した保険会社では小さな課だが、そのチームを任され管理職になることが出来た。 ただただ仕事に没頭する毎日だった。 だからこそ未婚、子なしなのかも知れない。 彼女はキッチンの冷蔵庫から取り出した、冷えた缶ビールを開けると、勢いよく喉に入れた。 リモコンでテレビをつけ、ソファに座る。 Netflixで最近見始めた韓流ドラマを再生させた。 ソファに寝転んだ彼女はテレビに映る韓国人俳優をみて思う。 〈私はこんな良い男に出会ったことがない〉 いや、彼女はわかっていた。横腹を指でつまむ。 〈こんな私が、こんな良い男に出会えるわけがない〉 そう思うと、缶ビールを飲むのをやめた。 42歳。 20代30代の時に比べれば、当然身体に変化が現れている。客観的に言えば彼女の身体は、誰が見ても太ってはいないと思うであろう。しかし仕事にも自分にもストイックな彼女にとって、この数年で身体に現れた指でつまめる脂肪は、受け入れられないものであった。 ソファに寝転んだ彼女はクッションを抱きしめている。ちょうど韓流ドラマはクライマックスを迎え、主人公の女性が年下男を抱きしめていた。キス、愛撫と続き、ドラマの中で美しい男女が身体を絡めていく。 彼女はクッションを抱きしめながら、下着の上から、自分の陰部を指で触っていた。20代であろう俳優が舌を絡めキスをしている。彼女も舌を出してキスの真似をした。 下着が濡れていく。指の動きは早くなる一方で、クッションを力強く抱きしめていた。 ハァハァと喘ぐ理恵。 ドラマはエンディングに切り替わっていたが、彼女の指は止まらなかった。下着の中に指を入れ、クリトリスをいじる。20代の男に舐められる妄想が頭を覆う。右手でクリトリスをいじり、左手は立ち上がった乳首をいじっている。ソファの上で横になった身体がそり返るほど感じていた。ハァハァハァッ!身体に電気が流れるように震えると、目を閉じその快楽を頭の先から足先まで震えるように感じていた。 身体中からその快楽が抜けきると、彼女は我に返り、リモコンでテレビを消して缶ビールの中身をキッチンのシンクに流し捨てた。 寝室のベットに入ると目を閉じた。 〈もう5年。5年もセックスをしていない〉 私はもはや女ではないのではないか、そう思うとまた自尊心が傷ついた。心の傷は広がり、頭の中に自然と父親の姿が映った。10年前に亡くなった父。長女であった彼女にひたすら厳しかった父。 〈なぜ私にだけ、あれだけ厳しかったのだろう〉 受験に就職、一人暮らしを始めてからも、彼女を褒めることはなかった父親。結局、管理職になった彼女を見届けずに癌で死んでしまった。 彼女は父親に褒められたくて、認められたくてひたすらに頑張って生きてきた。彼女が自分自身に厳しくストイックなのは父親の存在があるからかも知れない。 〈お父さん、なぜ?〉 傷ついた自尊心が冷たくなり、彼女は自分を温めるようにくの字になりながら布団潜り、泣きながら眠った。 翌朝、銀座線蔵前駅から電車に乗り込む。朝10時とはいえ混んでいる車内、混雑する銀座駅を降りると宝町方面へ少し歩き、無骨なビルに入館、混み合うエレベーターを降りると、電話が鳴り止まないフロアの自席についた。 大手保険会社給付審査部。彼女は窓側を背にした管理職席に座ると、自身が管理するチームを見渡した。いくつものチームが混雑するフロア。彼女が管理するチームは総勢7名。同じフロアの周りのチームに比べ最少人数だったが、42歳、独身女の彼女にとって大切な自分の城であった。 フレックスタイム制。チームの数名がすでに出社し、残り数名がこれから出社する。彼女自身、午後出社であり時計は11時を過ぎていた。 週末に買ったヒール高めのパンプスが少し小さく、足が痛い。座ったままパンプスを脱ごうとすると、部下で後輩の多香子が声をかけた。 「先輩、パンツみえちゃいますよ。」 笑顔でそう言う多香子。たしかに座ったまま脚を上げた理恵のタイトスカートから下着が見えそうになっていた。 「馬鹿」 そう言い返した理恵に多香子が言う。 「先輩は何時終わりですか?今夜、飲みに行きませんか!」 あぁ、また彼氏の自慢かと思いながらも、理恵を顔を下げパンプスに目をやりながらも、ウンウンと頭を上下に動かし、いいよと返事をした。 飲みの相手、いや自慢話を聞いてくれる相手をみつけた多香子が笑顔で言う。 「紫だ!エッチー」 下着の色を当てられた理恵は、 「え?本当に見えてたの?」 と慌てて座り直し、白のタイトスカートを整えた。 周囲を見渡せば、スーツ姿の男性陣は皆、パソコンに目を落としているか、電話をしているか。吉田に菊池、まだ20代の男達はアラフォー独身女の下着になどに興味がないのか、彼女のスカートに目を向けている男はいなかった。 「…でね、隆は優しすぎるからぁ」 角ハイボールを飲みながら笑顔の多香子。 時刻は23時を超えていた。多香子は20代後半で入社以来何かと面倒見てきた後半だった。会話が苦手で女友達が少ない理恵に比べて、真逆の存在。よく喋り、よく食べよく飲む。理恵は内心、多香子が羨ましかった。末っ子で甘え上手、若くて、自慢できる彼氏がいる。喋り続ける多香子の顔をじっと見つめる理恵は酔っていた。酒に弱いのは父親に似たからか。また父親の顔が頭に浮かんでいた。 「あーお昼食べてた時、菊池がね、私はフジテレビの堤アナに似てるって!先輩はNHKの小郷アナに似てるって!」 アナウンサー好きの菊池。メガネをかけた小太りな姿、彼の顔が浮かぶ。理恵はスマホで似ていると言われたアナウンサーを検索していた。 「はいはい。」スマホを鞄にしまうと、理恵は伝票を手に持ち立ち上がった。 身体がよろめく。高めのヒールでうまく立ち上がれなかっただけではない、酒に酔っていた。 「先輩、大丈夫ですか?」 多香子が理恵のグレーのジャケットと鞄を持つ。よろめきながらレジに向かう理恵を支えた。 支払いが終わり、ゴールドのクレジットカードを受け取ると、店の外で多香子からジャケットを着せてもらう。少し肌寒い。 2人でタクシーを探した。 と、ここまでは理恵の記憶にあった。たしかその後、後輩の多香子を先にタクシーに乗せて、理恵は酔い覚めに少し歩いた気がする。いやそうだ、飲んでいた神田駅周辺から少し歩いた記憶がある。 酔いが回り状況が掴めていない彼女は、公園のベンチにいた。隣に誰かがいる。黒いスーツ姿の男。男が理恵の身体を弄っていた。 声が出ない。オレンジ色の街灯で薄暗い公園。男は理恵のジャケットの胸元、ベージュのブラウス、それに顔を埋める。シルクのブラウスは滑らかであろうし、小ぶりとはいえ、柔らかい理恵の乳房、それを味わうかのように顔を埋めていた。 「…いや、だめ」 理恵の声が出る。黒いスーツ姿の男は周囲を見渡す。気まずいのであろう。男は彼女を立たせると、抱えるように理恵を抱きしめながら、公園内を歩いた。個室トイレの扉を開けると鞄を床に置き、理恵を抱えるように抱きしめながら彼女にキスをした。 「いや、いや」 そう小さく言う理恵の口元を黙らせるかのように舌を使ってキスをした。 男の舌が理恵の口周りをざらりと舐めまわす。理恵にとって5年振りのキスだった。 「ぁあ」 小さく喘ぐ理恵に、ニチャァとにやつく男。 男は理恵を背中から抱きしめ直すと、嫌がる理恵の顔を首筋を舐めながら、身体中を弄った。理恵の身体が熱い。肌寒い、秋が始まったばかりの深夜の公園。その公衆トイレで身体が熱っていた。 背中から理恵を羽交い締めている男は、理恵の白のタイトスカートに手を伸ばした。膝下丈の上品なタイトスカートを捲し上げると、紫色のレース下着が露わになった。 ニチャァとまた笑顔になる男。 理恵の首筋を舐めながら、ベージュのパンスト、紫の下着の中に手を入れる。 濡れていた。 また笑顔になった男は指を使って理恵の陰部をいじった。 「あぁ!」 少し声を高めた理恵。ビクビクと身体が勝手に動く。理恵は酔って目が定まらないでいる。男の顔さえわからない。たが身体は正直に感じていた。身体で感じた快感が頭に届く。男の指が動く度に、脚がガクガクと震えた。ヒールがコツコツと音を鳴らす。立っていられない。 「いやらしい女だな」 酔っていて覚えていないが、少し高めの声で男がそう言ったように聞こえた。 男が理恵の背後から理恵のタイトスカートを捲し上げ、個室トイレに備え付けられたおむつ台に理恵の身体を押し付けた。くの字になり、お尻を男に向ける理恵。おむつ台に身体を預けないと立っていられなかった。 男は舌を出しながら笑い、理恵のパンストと下着をずらすと、露わになった陰部を触る。笑いながら自身のベルトを緩めスラックスを膝まで下すと、ボクサーパンツから勃起した陰茎を出した。 それが理恵の身体に入っていく。ヌチャっと音がした。理恵が喘ぐ。 5年振りに理恵の身体に男の陰茎が入ってくる。 ドンドンドン、と理恵の身体がおむつ台に押し付けられるように男が腰を振る。 パンパンパンッと、理恵の尻と男の身体がぶつかる音が鳴る。 「あぁ、あぁ、あぁ!」 喘ぐ理恵。男は理恵の口元を手のひらで塞ぎながら必死に腰を振る。グレーのジャケットを着たまま、白いタイトスカートを捲し上げられている。品のない姿、いや、いやらしい姿だった。 「おらっ、あぁ!気持ちいいか?」 男が言った。ニチャァと笑う男は、パンパンパンッと音を鳴らしながら腰を振る。 「おい、ああ!」 まるで折檻のように、男が理恵の尻を叩いた。「あぁ!」 喘ぐ理恵。頭に厳しかった父親が浮かんだ。まるで父親に犯されている気持ちになった。 男が小声で「イク…」と言った。理恵の陰部から陰茎を抜き取ると、ドバドバとトイレ内の床に精液を流し出した。2分もたたずにイッてしまった男。しかし白い精液はまるで小便のように流れでていた。 理恵は身体の中にも少し精液が垂れ流れたように感じた。 ハァハァハァ、男も理恵も声が荒い。理恵はそれでも酔いが回り立っていられなかった。トイレの床が何色だったかも、もちろんこの公園がどこかも、男の容姿も覚えていない。ただ、5年振りの陰茎、勃起した男の陰茎を、身体中で感じたことは覚えている。 高い声の男は、ことが終わると理恵の下着、パンスト、タイトスカートを元にもどす。鞄と理恵を抱えてまた公園を歩きタクシーを捕まえた。理恵だけを乗せる。 なんとなく理恵の記憶にはその様子が残っていた。 気がつけば、朝だった。自宅のソファで横たわっていた。 頭が痛い。これほど酷い二日酔いは初めてだった。フラフラと立ち上がりキッチンで鎮痛剤を飲み、脱衣所でベージュのブラウス、白いタイトスカートを脱ぎパンスト、下着を脱ぐ。紫の下着はベトベトに精液で汚れていた。 〈あぁ、、、〉 昨晩のことを思い出した理恵の眉間に皺がよる。 シャワーで身体を洗い、シャワーで自身の陰部を洗う。 〈今日は有給休暇を使い婦人科に行き、アフターピルを…〉 そんなことを考えながらも、昨晩トイレで、容姿も思い出せないサラリーマンから、後ろから犯されたことを思い出した。パンパンパン。音が蘇えり聞こえてくるかのようだった。シャワーの陰部にあて洗う理恵の指が自然とクリトリスをいじっていく。 「あぁ」 小さな声で喘ぐ理恵。 後ろから押し込まれた陰茎を思い出していた。犯されたはず、泣かずに喘いだ自分がいた。 理恵が思い出す、折檻のように尻を叩く男、厳しかった父親と重なっていた男。 その男がタクシーに乗るまでに、理恵に言った。 「いい子だね、気持ちよかったよ」 まるではじめて父親に褒められた気がした。 また父親に褒められたい、理恵は必死にオナニーをしていた。 つづく
2022/09/04 14:19:53(9YJW7Ssb)
投稿者:
(無名)
いいですねぇ。
久しぶりに続きを期待できる投稿に逢えた気がします。 楽しみに待っていますね。
22/09/19 23:11
(lh2YpgMG)
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