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淫獣達の艶かしき戯れ24
カテゴリ: 官能小説の館    掲示板名:ノンジャンル 官能小説   
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1:淫獣達の艶かしき戯れ24
投稿者: 彩未 ◆sPqX4xP/g6
徹の講演活動は次第に活発になった。
地方への講演が月に複数回入った。
東北や近畿ならば飛行機で日帰りが可能だ。
が、北海道や九州での連続講演となると2~3泊を要した。
講演の内容は全て性愛に関するものだった。
徹は加奈子との性交や性愛教での性交を通じて「異性の肉体や異性との性交を讃美する思想」を全国に広めていた。
性愛教のような違法運営は賛同しかねるが「性愛の快楽を謳歌する」という教義自体は徹は大いに賛同した。
明治から昭和にかけてわが国に根づいた「性欲のタブー視」の撤廃を目的として講演活動を始めたのだった。
人間の三大欲求「睡眠欲」「食欲」「性欲」の内、前者二者は公的に堂々と話題にできる。
が、「性欲」のみ私的な部分でしか話題にできないのがわが国の文化だ。
「美味しいものを食べたい」がために食文化は発展した。
これは国籍や時代や性別を問わず大いに研究され語られてきた。
一方「性交で気持ちよくなりたい」がために性文化が発展してきた。
が、これは秘密裏に研究され裏で陰で受け継がれてきた。
いずれも全人類にとって大いに興味がある内容でありながら何故その扱いに関してこれほどまでに差異が生じるのか。
徹はその疑問を講演活動を通じて全国民に投げ掛けていた。
「性欲をタブー視せず、自己の性欲に素直に向き合い、不自然に抑制せず大いに性愛の快楽を愉しむべき」というのが徹の持論だった。
三大欲求の目的は、生物学的には……、
睡眠で心身を休める、
食事で空腹を満たし栄養補給する、
性交で性欲を満たし生殖を図る、
……とされる。
が、人間の文化はその目的に付加価値をつけた。
睡眠では心身を休めるために「より快適な環境」を追究してきた。
安心できる静かな部屋、快適な寝具(ベッドや布団やパジャマ)等々。
親や縫いぐるみがいないと眠れないという幼児を別とすれば、一般的には複数の者達で寝るより一人で寝る方が快適な睡眠が得られる。
食事の場合はどうか。
本来の食事の目的に加え、より美味しく食べること追究されてきた。
より食べ易く、より美味しくなるよう、食材や調理法が研究された。
より美味しく感じられる食事環境や食事マナーも研究された。
一人で黙々と食べる方が良ければ環境やマナーは問題にされない。
他の動物と異なり、人間は複数の者達でお喋りしながら食事する方がより美味しく感じられると考えた。
では、性交はどうか。
三大欲求の目的の中で、「睡眠で心身を休める」「食事で空腹を満たし栄養補給する」の2つは人間にとって必要不可欠の要素ばかりだ。
が、「性交で性欲を満たし生殖を図る」は実践しなくても命に別状はない。
必要不可欠な要素ではない。
時に「性欲を満たす」必要は感じても「生殖を図る」必要など一生感じない者も数多い。
そこで人間は性交の目的を生殖ではなく快楽に重点を置いた。
性交でいかに強く深い快楽を得るかを追究してきた。
性交は一人ではできない。
心通わせた特定の異性と秘密裏に行う性交が最も快楽を得られる。
心が通わない強姦や乱交や自慰で得られる快楽より強く深い。
そのために秘密裡に安心して安全に性交できる環境が求められる。
より強烈な快楽、より濃厚な快楽を得る為の体位が追究された。
但し、2人の性交を決して公にしてはならない。
性交する男女の姿態は極めて卑猥で淫らだ。
他人には見せられない。
性交する男女の悶声は極めて破廉恥だ。
他人には聞かせられない。
と言って、理性で統率された生真面目な性交では快楽は半減する。
心通わせた信頼できる2人の間だからこそ、卑猥で淫らで破廉恥な性交を繰り広げることができるのだ。
卑猥で淫らで破廉恥な性交に興奮して深い快楽が得られるのだ。
一般に、性愛や性交による快楽が睡眠や食事による快楽のように堂々と公的に語られないのは、このような理由があるからだろう。
性愛や性交の快楽には食事と違って卑猥さや猥褻さが伴うのだ。
 
2021/03/20 06:58:53(rhMdEHLB)
7
投稿者: 彩未 ◆sPqX4xP/g6
倉田には妻も娘もいた。
つまり倉田自身も妻と性交している。
それも複数回、いや数え切れぬほどと言ってよいだろう。
これを「悪」と言うならば、生まれた娘は「悪」の結晶と言えよう。
倉田は「善からぬ原因によりて生を享けたものがなる故にその素質の中に既に不幸と邪淫の種を植えられている」と書く。
「限りなく美しく愛すべきもの」である娘を見るたび可愛がるたび世話するたびに「不幸と邪淫の種」を見出したというのか。
娘をそのように見る倉田の思考こそが「不幸と邪淫の種」だろう。
娘を作る際、
美しい妻に欲情したこと、
妻を可愛がりその躰を弄んだこと、
その妻の喘ぎ声に興奮して勃起したこと、
「聖らかなものを涜」すべく妻に射精したこと、
等々、そのような「悪」の行為の結果、妻が妊娠したことも「悪」であり、生まれた娘も「悪」と考える倉田は、自分の行為と自分の思想との矛盾に悩み苦しんだ不幸な男だ。
何故、愛し合う男女間の性交の快楽、恋い慕い合う男女間の性交の快楽を素直に受け入れ敬わないのか。
私は不思議でならない。
倉田の思考に基づく行為が「道徳」的に尊い行為だとも思えない。
寧ろ何故それほど偏屈な思想に捕われ苦しむのか、客観的に見れば愚の骨頂と言えよう。
芥川龍之介は、「悲劇とは自ら羞ずる所業を敢てしなければならぬことである、この故に万人に共通する悲劇は排泄作用を行うことである」と述べた。
「悲劇」をこのように定義するならば芥川の主張は理解できる。
芥川の言う「自ら羞ずる所業」は「肉交」も含まれるか。
性行為も排泄行為も敢えて他人に見せるべきものではなく、逆に見られると羞恥心を催すものであることは間違いない。
が、自然界の動物にはこの感覚はない。
羞恥心を催すのは人間の文化的背景による影響だ。
だからといって性行為を「悲劇」と考えるのが妥当かどうか。
倉田にとっては悲劇だろう。
欲望に敗けて「性交=悪」なる羞ずべき所業をしてしまうのだから。
経済学者、河上肇も「肉体の欲望は人間の欲望の中で一番下等で色食の二欲は最も低級のもの」と述べている。
何故、食欲と性欲を「下等」「低級」と見做すのか。
が、これが大正教養主義の影響下の見解だと言える。
この時代の学者と言えばエリート中のエリートだった。
中卒すら多くなかった時代だ。
旧制高等学校への進学だけでも世間からは憧憬の眼差しを受ける。
況してや大学生(=東京帝大・京都帝大の学生)となると畏怖の念で見られる。
河上肇のような京大教授ともなると、一般大衆のみならずエリート学生から見ても「神」のような存在となる。
間違っても性欲を肯定するわけにはいかなかったのだろう。
倉田と同様、河上にも妻と娘がいた。
彼の主張によれば、彼が娘を作る過程で妻に向けた「欲望」は「下等」で「低級」だったということになる。
「低級」だと罪悪感を感じながら妻と性交したのか?
「下等」なことだと考えながら娘を作ったのか?
それならば、産まれてきた娘は「己の下等で低級な欲望の証」だ。
娘は目にするたびに抹殺したいくらいの「忌まわしい存在」となる筈だが、本当にそうなのか。
そんなはずはない。
生まれた娘は可愛く美しく、大事に育てたのではなかったか?
娘ができた(娘を作った)ということは、妻の躰に射精したということ。
妻に射精したということは妻に性欲の疼きを感じて男根を勃起させたということ。
男根が勃起したということは、妻を可愛いと感じたということ。
その可愛くて愛しい妻の躰を弄んだり辱めたりして、彼女が淫らに喘ぐ姿に興奮したということ。
妻との激しい性交に溺れながら2人で深く愛し合う悦びを共有したということ。
だからこそ、その結晶として可愛い娘ができたのではなかったか?
河上肇の妻にも同様のことが言える。
妻としても、娘を生んだということは、膣に夫の射精を受けたということ。
夫の射精を受けたということは、夫に性欲の疼きを感じて膣を濡らしたということ。
膣が濡れたということは、夫に躰を弄ばれて興奮したということ。
夫が自分に覆い被さって気持ちよさそうに腰を前後させながら男根を出し入れする姿に興奮したということ。
夫が自分を女として性欲の対象にしてくれることを喜んだ筈だ。
自分の躰に欲情した夫に淫部を責め立てられて弄ばれて妻も妖しく悦び喘いだということ。
夫との激しい性交に溺れながら2人で深く愛し合う悦びを共有したということ。
だからこそ、その結晶としての娘ができたのではなかったか?
……そもそも、河上肇の妻=河上秀は、その著書『獄中日記』でも、性欲を否定するような文章は全く書いていない。
妻の方は性交の快楽を悦び、授かった娘も無条件に可愛がったと思われる。
性欲は「一番下等」どころか、これは寧ろ自然が人間に与えてくれた「一番美しく一番尊い」欲望と言えるのではないか。
実際、色欲の「二欲」が旺盛ということは、人間として健康に恵まれ人間らしく生活できていることの証だ。
逆にこれを喪失した者は、生命力が衰えている(死期が近い)ということを意味する。
従って、性欲というものは、一生大切にすべき「一番高等」な欲望なのではないか。
衰えないよう健康に気を付け、出来る限り異性との性交を長く続けていくべきだろう。

徹はこのように結論して講演を結んだ。
徹はこの内容での講演を全国各地で行った。
21/03/20 07:05 (rhMdEHLB)
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