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同人誌即売会
カテゴリ: 官能小説の館    掲示板名:ノンジャンル 官能小説   
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1:同人誌即売会
投稿者: フジタ
男は、ベッドでバイブを入れられたまま身悶えする女の姿を見ながら食事をしていた。2人に会話はない、あるのはバイブの音と食事の音だけだった。


出会いは1年前。
友人の同人誌即売会の手伝いをしていた時に本を買いに来たのが彼女だった。

年に2回夏と冬に開催される同人誌即売会は、あらゆるジャンルの人間が集う国内外問わず最大のイベントである。
始発に間に合う様に前乗りする者、その前乗りのための前乗りをする者、買う本をプリントにまとめ数人で手分けして列に並ぶ者、コスプレ衣装を入れたキャリーバッグを引く者、様々な熱量を持った者達がいる脇を友人から貰ったチケット持ちながら歩いていた。

「俺でいいのかな」

男は隣にも聴こえないぐらいの小さな声で独り言を呟いた。
何度か来たことはあったが、手伝いとはいえチケットで入ることに抵抗があった。

しばらく歩くと入り口が見えてきた。LINEでサークル番号を確認する。

東25a。

レストラン脇のエスカレーターを降りてサークルに辿り着くと友人が隣ブースの人と談笑しているのが見えてきた。

友  「じゅん!」
気づいて友人が手招きをしてきた。

じゅん 「準備終わったの?」

友 「もう終わったよ」

じゅん 「じゃ片付ける?」

友 「これから!」

そんな冗談を言っていると、聞いたことのある曲、そしてどこからともなく無数の拍手が建物を包み込んだ。

友   「じゃよろしく」

こちらが返答する前に友人は歩き出していた。






どれくらい経っただろうか、交代でサークルを出たり入ったりしていると、昼をゆうに過ぎていた。

もう、この頃には完売の文字も増えてきて撤収しているサークルも出始めていた。
自分たちもそろそろかなと思っていると、1人の女性が本を手に取り、前に差し出してきた。

じゅん 「あ、ありがとうございます、」
(なんだろうこの感じは)

女性 「....」

じゅん 「.....................」

女性 「あの....」

じゅん 「あ、あ、ありがとうございました」


女性がいなくなった後も金縛りの様にただその方角を見つめていた..





あの仮...を..外.......






後ろから友人が声をかけてきた。

友人 「撤収は終わったからこれから夕飯どう?今日のお礼も兼ねて」

じゅん 「有り難いけど今日は帰るわ、慣れないことして疲れたのかも」

友人 「そっ、じゃまたあとで連絡するわ今日はありがと」
そう言って帰って行った。


なんだか今は誰かと話す気持ちになれなかったのだ。

すっきりしないまま駅に向かって歩いていると、人混みの中にさっきの女性が立っているのが見えた。

その瞬間、



あの仮面を外したい...... 

仮面の下にどんな素顔を隠しているんだ.....

少しずつあの仮面を剥ぐことができたら.........



堪らずポケットにしまってあったくしゃくしゃになったコンビニのレシートに連絡先を書いて手渡していた。
女性は無表情にただその紙を受け取り、駅の方へ消えて行った。


男も駅に歩き出した。


つづく
 
2020/10/18 07:57:11(MgTAbx4q)
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