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1:亜衣と私のstory2
投稿者:
moon
2 出合い
亜衣は、15分程で到着した福祉施設には入らず、河川敷へと続く道を、 歩いていきました。 その頃、私は、いつものようにコンビニの、Lサイズのコーヒーと共に、川辺に車を止め、 5月のやっと春めいた風に、まったりとした気分に浸っていました。 そこに亜衣が一人でやってくると、川辺にちょこんと体育座りで腰を下ろし、 川面を見つめていました。 始めのうちは、季節外れのベンチコート以外、とくだん気にかける事もなかったのだが、 Lサイズのコーヒーを、飲み終わるまで微動だにせず、水面を見続ける様子に、 (自殺者)ピンと来るものがあり。声をかけるしか、ありませんでした。 (自殺者するつもりかよ!まだ子供じゃないか、とりあえず保護し、警察に連れていくか。) 普段なら関り合いになりたくないと、見て見ぬふり、していたはずが、 首都圏より二週間以上遅い、春の陽気に、自分等しからぬ行動をしていました。 不審に思われるかな?と、思いながら、恐る恐る、 極、自然を装おって、[暖かく成ったね]と、知り合いにでも、話す口調で声をかけました。 亜衣はこの時、飛び込んだら死ねるのかな、苦しむのかなと、考えていたそうで、 急な私の問いかけにビックして、 [はいそうですね]と、ちょとスットンキョな声で答える亜衣に、 思わず吹き出しそうに成りました。 亜衣は死のうとしている事を、私に悟られまいと、必死で誤魔化そうと、 私の話しに付き合う様に、頷いてくれました。 私はスーツのズボンが汚れることも気にせずに、亜衣の横に腰を下ろしました。 恋人同士の距離というほど近く、相手の体温が感じられる距離に腰かけたのは、 飛び込む瞬間に、腕をつかめるのかなと、思っていたのだと思います。 この時亜衣は、突然現れたスーツを着た出川に、違和感も感じず、 こんな人が、亜衣のお父さんなら良かったのにな、と思っていたそうです。 この時24才の私を、40才台と思った亜衣は、父親の影を私の姿に重ねて、 生きる理由にしたかったのかもしれません。 しばらく、他愛もない話をしているうち、しばらく話が途切れ、沈黙が続いた後、 [風は暖かく成ったけど、水はまだ冷たいよ!]と私が諭すように話すと、 亜衣は突然、声をあげて泣き出しました。 私はこの場所に亜衣を居させては行けないと、抱き抱えるように車に乗せました。 河川敷から車を走らせ、近くの運動公園の駐車場に、車を止め、 自販機で買った、暖かいカフェオレを、亜衣に飲ませ、落ち着かせました。 暫くすると、落ち着きを取り戻した亜衣は、ポツポツと自分の事を話始めました。 三時間以上、話を聞いていたと思います。 等に、昼飯の時間は過ぎていた事も有り、シリアスな亜衣の話の途中で、 私の腹の虫が、何度か悲鳴を上げました。 目を真っ赤にして話していた亜衣は、私の腹の虫の鳴き声に 我慢できずにクスクスと笑い出しました。 ファミレス等で昼飯を食べようと亜衣に提案したのですが、 人の居るところには、行きたくないと、言いますので、 コンビニ弁当を車で食べるか?カラオケボックスに行くか? それとも私の家でなにか食うか?と、幾つかの選択肢を出した所、 私の家で食べると言われ、正直、驚きました。 自分が提案したのですが、まさか初めて会った、 おじさん(24才なんですが!)の家に、来たいと思うはずがなく、 おじさんの家でいいの?と何度も確認しました。 当時の私は、亜衣の家から、車で10分程の場所にある、会社所有のマンションに、 住んでいました。 5階建ての古びた建物でしたが、もともと家族向けの社宅として 作られたものでしたので、男の一人住まいには少々、持て余していましたが、 現在、一階はコンビニに改装され、一般向けに賃貸されており、 社員はほとんどいないということで、住んでいました。 駐車スペースに車を止め、亜衣を抱きしめるように、エントランスのエレベーターを 待っていました。亜衣も私に抱き着くように身体を寄せていたので、 通りかかった何人かの住人には、部屋に未成年を連れ込もうとしている、 悪いおやじに見えたのでは無いかと、心配になりつつも、 亜衣を早く落ち着かせたいと、部屋に急ぎました。 部屋に入ると亜衣をソファーに座らせ、ピザのデリバリーメニューを渡しました。 自殺しようと考えていた亜衣が、何も食べていない事は、 容易に想像できましたので、サイドメニューとピザを多めに注文しました。 ピザが届くまでの僅かな時間でしたが、怯えた子犬を抱くように 亜衣を抱きしめていました。 部屋のインターフォンが鳴り、ピザの配達を知らせました。 ピザを受け取る間も、亜衣は私にしがみついていた為、配達の若いスタッフは 少し不審そうに思っていたようです。 思いつめて食欲も湧かないのか、一向に食べようとしない亜衣に しびれを切らした私は、まるで赤ちゃんに食事を与えるよう [あーん]と声をかけながら、亜衣の口に食事を運びました。 亜衣も幼稚園児が赤ちゃん返りをしたように甘え、 私に与えられるまま、食べていましたが、両手を私から離さず 自分から食べようとは、決してしませんでした。 この時、亜衣は私から手を離したら自分が消えてしまいそうで、 必死に私にしがみついていたそうです。
2023/08/24 00:59:53(6TdrZO5C)
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