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昔話~my平成の記憶SP(後編)
カテゴリ: 官能小説の館    掲示板名:ノンジャンル 官能小説   
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1:昔話~my平成の記憶SP(後編)
投稿者: 唯315
4勤2休。
昼11、夜13時間の交替勤務。
GW、盆正月はあるが他はカレンダー無視。

昼はともかく、夜は長かった。仕事的に楽な分、長丁場をいかに耐えるか、が鍵だった。

そんな勤務中の暇潰しも兼ねた、メール友達を探し続けて巡り合った人。
友人を通り越して意図せず恋仲になってしまった私達。

数ヶ月の間、甘い甘い、映画か漫画にあるような関係が続いていた。

離れているのに、いつもすぐそばにいるかのような感覚。

顔も知らない、喋りもしない、ただ文字が行き交うだけの関係。

なのに、ずっと前から互いのすべてを知っているような感覚。

ずっとこのままでいたい、意識しなくても心のどこかで願っていた。
でもそれは許されないこと。
私の身分上、あってはならないことだから。


私「今夜は大人しいね」

M「…欲しい。体が疼いて…」

私「そっか。我慢しないでしていいよ」

M「K、軽蔑しない?」

私「しない。自然なことだよ」

M「ごめんなさい。イヤらしいこの体、嫌い!」

私「一緒にいたら抱き締めてあげるのになぁ」

M「折れちゃうよ(笑)ありがとうK」

彼女の気持ちが膨らんでいくのがわかり過ぎて、自分の中にも、なにもできないことにもどかしさが募るようになってきた。

そしてある夜。

仕事から帰って寝支度をして、いつものように彼女と話しながら寝ようとしていた時。


M「K、あのね…」

私「何?」

直後に突然のワンコール。

M「声聞きたい」

私「え?それは…」

M「ごめんなさい。電話嫌いだったよね。忘れて」


読み終えた瞬間、コールをしていた。
自分でも驚くほどなんの躊躇もなく。


M「え…」

私「かけたよ」

M「いいの?」

私「今夜は声で話そう」

M「かけてくれると思わなかった…嬉しい」


初めての電話。初めて文字でなく、自分の声で話す夜。

まともな会話はしなかった。


「……好き」

「……ふふ」

「ふぅ……」

「愛してる…」


互いの息遣いを感じながらおよそ会話とはいえない、抱き合って耳元で囁き合うような感覚。

ただそんなことをずっと、一晩中、朝が来るまで続けた。

これまで溜まった分をすべて合わせたような長い長い電話。


M「わがまま聞いてくれてありがとう」


窓から日の光が差し、雀が鳴き始めた頃、最初で最後の電話は、終わった。

それから後、彼女は増々過激に気持をぶつけて来るようになった。


M「奥さんと別れてMだけのものになって!」

私「それは…できない」

M「わかってるよ、当然だよね。答え、わかってるのにわたし…」

私「家内には身寄りがない。義母さんが死ぬ前に約束したんだ。宜しく頼みます、と言われた。その約束だけは破れない」


事実だった。けれど今言うことじゃない。完全な、逃げの言い訳だった。


M「いいひとは必ず先に誰かに取られちゃうんだね…」

私「ごめんよ」

M「謝らないで。わたしこそ、K困らせること言っちゃって。ごめんなさい」

私「Mは悪くないよ。私とのことは次に上がるための踏み台にしなさい」

M「うん。でももう少し時間が欲しい。頑張るけど今はまだ無理。あなたが必要なの」


終わることを前提での、どうしようもない会話。
内容とは裏腹に、心には互いを求めることしかなかった。

いくら深く気持ちが繋がっていようと、こんな話を続けて楽しいはずがない。

もう苦しませたくない。

自分だけなら後悔しながら、鬱々とその後を暮らせばいいだけだけれど、彼女にはなにか吹っ切れること、決断出来るきっかけをあげたかった。


M「いつか会って、思いを遂げられたら、満足して終われる。そのときはうんと愛してね」


いつか彼女が言ったこと。ずっと憶えていた。

彼女に会いに行く。それでおしまいにする。


会ったら終わり。


この一見簡単なことを今までしなかったのはそれなりの理由があった。

私は大阪に住んでいる。

彼女が暮らしているのは八戸。

吹田IC~八戸IC、1270㎞(当時)

私は二輪でのツーリングが趣味だったが、さすがに往復だけで数日かかるような距離を移動するための休みは直近でもGWくらいしかなく、長らくそれを待っていたのだ。

公共交通嫌いな私が周囲にも怪しまれず行動するにはそれしかなかった。

GW前の勤務最終日。

旅行用のフル装備を積んだ愛車で出勤した私は、勤務終了と同時に高速に乗った。

夕闇迫る中、一路東を目指して走る。
途中補給と休憩を取りつつ携帯を開くと彼女からのたくさんのメールが。


M「仕事終わった?」

 「忙しいのかな?」

 「なんで返事くれないの?」

 「寂しい…」etc…

私「ごめんね。ちょっと今夜、忙しいんだ」


彼女には向かっていることは伏せてあった。
それは自分自身に対することで、気が変わってしまわないよう、中間地点である東京を過ぎて引き返せなくなってからにしようと考えていた。

深夜、環八に降り久喜から東北道へ。
安達太良で雨。避難と仮眠を兼ねて休憩。
ここで初めて、彼女に今向かっていること、東京を過ぎたこと、翌日昼には着くことを告げた。


M「本当に来てくれるの?どうしよう…こんなときにわたし、風邪ひいちゃってて…」

私「黙っててごめん」

M「ズルいよ。でも嬉しい。気をつけてね」


今は知らないが当時の東北道は市街地以外照明がなく、視界に他車がいなければ漆黒の闇だった。
暗闇をなにも考えず、ひたすら北上を続け朝霧の中、岩手で給油。


「ニイちゃん、大阪からかいな、気いつけてな」

「ありがとうございます」


スタンドのじいちゃんに現地周辺の天気予報を聞いた。

正午前、八戸ICへ。


遂に来た。


彼女の暮らす街。

この街のどこかに、彼女がいる。


私「来たよ。高速降りたとこ」

M「ごめんなさい。調子悪くって…もう少し後でもいい?」

私「時間は気にしなくていい。待ってるよ」

M「じゃ14時に駅の待合で待ってる」

私「わかった。無理しないでね」


コンビニで昼食休憩しながら時間を潰した。

約束の時間。
駅前へ向かう。

襲い来る眠気も疲労感も、初めて彼女に会う緊張でどこかに消し飛んでいた。

小さな駅のコンコースに彼女はいた。
初めてだけれど、すぐにわかった。

モデルのような美しい顔立ち。
中学生かと思うほど華奢で小柄な彼女。
拭いてきたとはいえ延々と走り、煤汚れと寝不足顔でみっともない私には不釣り合いな娘。

見とれてしまうほど、美しい娘。


M「あ…K…?はじめまして」

私「はじめまして…来たよ」

M「うん…大きい(笑)」

私「会えたね」

M「うん。ふふふ」


目の前にいる。

すぐ目の前に。

ほんの少し腕を上げれば簡単に触れられる。


M「ちょっとここ…人目があるから…」

私「歩こうか」


なんの関係もない会話をしながら駅前を散策した。
並んで歩く間、チラチラと彼女が見上げているのがわかる。

暫くして先に口を開いたのは彼女だった。


M「…ごめんなさい。調子、悪くって…今夜、仕事だから…」

私「帰って休むかい?」


彼女をバス停まで送った。


M「…ここまでで…いいよ」


うつむいたままの彼女。


私「バスが出るまで見送るよ」

M「……」


バスが着き、乗り込む彼女。


私「じゃ、元気でね」

M「………さよなら」


振り向き様、彼女が顔を上げた。
真っ赤だった。

袖を口元に当て、泣いていた。

泣きじゃくる彼女を車窓に映したバスは見送る私を残し、発車した。


帰る、は嘘。


2人とも、どうしていいかわからなかった。

それに彼女は耐えられなかった。

恋い焦がれた、待ち焦がれた人が目の前に。

なのに。

なにもできない。

触れることすら叶わなかった。

触れてはいけないような気がした。
この娘は汚してはいけない。
そう思った。

時間にして15~20分。

2人の最初で最後の逢い引きは、終った。

彼女を見送ったあと、郊外に移動した私は緊張が解けたのと疲労感で単車に跨がったまま、無心で眠った。

日が落ちた頃、目を醒ました私は小高い住宅地からもう一度、彼女の暮らす街を見下ろした。深呼吸のあとエンジンをかけ、インターへ向かう。

GW初日。
時間はまだいくらでもある。
その気になれば、彼女の体調が戻るまで待つことも。再び会う時間を作ることも…

でもそれはしない。


会ったら終わり。


彼女も理解している。
それを承知で帰った。

強引に続けることは望まないだろう。


再び会うことはない。

もう二度と来ることはない。


気が変わらないうちに。


インターを入ってそのまま、燃料が切れるまで走った。
振り切るように。少しでも早く。遠くに。

もちろん彼女からはメールが。


M「もう帰っちゃたかな」

 「泣いちゃった…恥ずかしい」

 「たくさん触れようと思ってたのに…なにもできなかった…耐えられなかった」

 「触れてくれるの、待ってたのに」

 「抱きしめて欲しかった」

 「自信、あったんだけどなぁ」

 「抱いてくんなかった人、初めて」


それぞれの台詞にどう答えたかは憶えていない。
ただ、彼女の気持ちは想像通りだった。

帰り道も半ばを過ぎると、ペースを落とし長い休憩を挟みながらのんびりと走った。
何事もなかったかのように。

M「今どの辺りかなぁ」

私「東京だよ。杉並区、って書いてある(笑)」

M「もうそんなに離れてるんだ…」

私「もうすぐしたら、Mはこの東京で暮らすんだよね」

M「うん」


いつもの2人。

でもなにか吹っ切れた、どこかよそよそしい雰囲気。

互いに言わずともわかっていた。


会ったら終わり。


M「K、帰ったら…終わっちゃうんだよね…」

私「会ったら終わり、の約束だよ」

M「そうだね…本当に来てくれるなんて思ってなかった。もっと続く、って思ってた」

私「そう…」

M「でもあなたは来てくれた。嬉しかった」

M「無事家に着くまで見送らせて。そしたらちゃんとやめるから」

M「あと少しかぁ」

M「あなたは本当に人を好きになることを教えてくれた。凄く感謝してる。ありがとう」


呼ばれ馴れたニックネーム、K、はいつの間にか、あなた、に変わっていた。

彼女と出会って半年間。

あっという間だった気も、何年も経ったような気もする、けれど楽しく幸せな日々だった。

瞬間湯沸し器みたいに一気に沸いた恋は、遂にその終焉を迎えようとしていた。



私「ただいま。帰ったよ」

M「お帰りなさい」

私「これで…おしまいだね」

M「そうだね。いままでありがとう」

私「こちらこそ。じゃ、元気でね」

M「うん。あなたも」

私「ありがとう」


M「K、もうこんなことしちゃダメだよ(笑)」



(完)
 
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2019/04/01 06:01:58(IF0/lT7m)
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