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見せる女。
カテゴリ: 官能小説の館    掲示板名:ノンジャンル 官能小説   
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1:見せる女。
投稿者: カフカ ◆52.FsIEe7o
早智子は封筒を受け取ると、それを測りに置いた。
「定形内で100g以下ですね。140円になります。」
そう言い、客の前にキャッシュトレイを置く。

パートを始めてから2年になる。
20代の時、いわゆる〝出来ちゃった結婚〟をし、出産後育児に追われる幸せな時間を過ごした。
娘が小学校高学年になりパートとしてここで働き始めた。
「お待ちのお客様、こちらへどうぞ」
41歳。OL時代は営業をしていた。いまはこうして接客をしている。

時計が16時をさすと、早智子は局内に向け小声で
「お先に失礼します。」
と言い、女子更衣室へと入った。
制服を脱ぎ、くるぶしまでの白のパンツを履くと、グリーンのブラウスを着る。
グレーのパンプスは少しヒールが高かった。
ヒールがガタツク。
(削れちゃったか。)
早智子はそう思い片足をあげてヒールを確かめた。

局を出たのは16時で日差しがまだ強い。
カバンを肩にかけ脇で押さえて歩きだす。
平日は16時に退社しスーパーに立ち寄り、17時には帰宅する。18時には娘に夕飯を作る毎日だった。
だけれど今日はスーパーに寄る必要がない。
娘は夏の林間学校で、朝から支度をしてキャンプへと出かけた。帰宅するのは明日の夕方で、主人といえば相変わらず終電まで帰宅しないだろう。
(さて、どうしよう。)
日差しを避けながら歩く早智子は、自由な時間の使い方を考えていた。
(そっか、ヒールを直そう。)
そう思い靴修理屋さんを探すが、こういう時に限って店が見つからない。
日差しは早智子を追いかける。彼女は暑さに負けて、コーヒーチェーン店に駆け込んだ。

店員からアイスコーヒーを受け取ると、禁煙席を探す。
エアコンが効いた店内は少し寒いくらいだった。
日差しで身体が熱くなり汗ばんでいたが、もともと冷え性の身体、すぐに冷えるだろうと、彼女はエアコンの位置を確かめて席を決めた。

カバンからスマホを取り出し、席に座る。
アイスコーヒーを一口飲むとスマホを見つめた。
SNSのアプリ、通知が届いている。
「キャンプ地到着!」
友人と自撮りした写真を添えて、娘が投稿していた。
安心とともに、今夜は一人で夕飯を食べることに少し寂しく感じた。
SNSのタイムラインには娘以外にもフォローしているママ友たちの投稿が表示される。
お手製の手料理、遊園地へ来ている、髪型を変えたなど、皆それぞれ自分の人生を楽しんでいる。
(新しい髪型か。そういえば私も髪型かえようか、、)
肩まで伸びた髪。茶色く染め毛先にパーマかけた髪型、もうずっとこれで彼女は少し飽きていた。
だけれど変えられない。
変わっていく怖さがある。
いまの生活には満足はしていない。少し退屈なパート、終電まで帰らず相手をしてくれない主人。
だけれど仕事を辞め、主人と離婚なんて考えられなかった。変わっていくことより、現状維持。いつだってそう思ってきた毎日だった。
早智子は毛先のパーマを触りながら、変わりたいけど変われない自分を少し卑下していた。

と、主人からメッセージが届く。
「残業。飯いらない。」
たった一言それだけのメッセージに返信する心の余裕はなく、ただ既読するだけでせいいっぱいだった。

アイスコーヒーをまた一口身体に入れた早智子は、SNSのタイムライン、皆の幸せな投稿を見ながら少し寂しくなった。
久しぶりの自由な時間が彼女に空虚を与える。
(私は幸せだろうか。)
誰かにみせるわけでもなく、心の中でつぶやいた彼女。
冷たいアイスコーヒーと、冷えた店内が心をもっと冷たくさせる。

SNSのタイムラインには広告も表示されていた。
「絶対出会えるアプリ!」
と題した出会い系アプリの広告は、ポップで女性らしさがあった。
彼女は何気なく、その広告をタップしアプリをダウンロードした。
誰かと喋りたい。ただそれだけだった。
インストールされたアプリ、開いてみれば登録は簡単だった。
名前にサチといれ、年齢を40代初とし、都市を選ぶ。写真にはお気に入りのパンプスを買った時に撮影した、足元の写真を選んだ。
40代初とした年齢、正直に登録したが、誰にも相手にされないのではないかと思った。
が、登録後、アプリの通知が止まらない。
アプリ上の男達は皆ハイエナのようにサチにメッセージを送ってくる。
「はじめまして!30代独身会社員です。ステキな脚ですね!」
「こんばんは、お酒は好きですか?」
など、通知が止まらない。
「20歳になりました。大学行ってます。年上の女性がタイプです!」
数打てば当たる、そんなメッセージだろうか、彼等は誰にでも送っている。早智子はすぐに気がついた。
それでも嬉しかった。普段なら相手にもされない20歳の大学生でさえメッセージをくれる。空虚感が埋められた気がした。
彼女はマメに一つ一つメッセージを開封して確かめる。
と、気になるメッセージを見つけた。
「みてくれませんか?」
たった一言だった。
プロフィールを見れば40代後半会社員とある。
写真は本人だろう、ネクタイを締めたスーツ姿、中肉中背で職場にもいそうな中年男性だった。
「みてくれませんか?」というメッセージに添えられた画像ファイル。
早智子がそれを開く。
画像はスーツ姿の男性が、多目的トイレで姿鏡に向かい自撮りする姿だった。
が、彼はスラックスのチャックを下ろし、勃起した陰茎を出して握りしめ、スマホで鏡に映る自分を撮影している。
(やだ!)
驚いた早智子はスマホの画面を隠し、コーヒーチェーン店の店内を見回す。
16時台の店内、人はまばらだった。
早智子はアイスコーヒーをまた一口身体に入れると、画像をもう一度目に入れた。
スーツ姿の中年男性。チャックを下ろしたそこから見える勃起した陰茎。顔がはっきり写っている。彼は躊躇わずそれを見せているようだった。
(変態…)
そう思いながら彼女はまた冷たいアイスコーヒーを身体に入れていた。
身体が火照っている。
寒いと感じるくらいエアコンの冷風が効いた店内。身体が冷たくなっていたはずだっが、冷たいアイスコーヒーを欲するくらい身体が火照りはじめていた。
男のメッセージに既読と表示される。途端に男がまたメッセージを送ってきた。
「みてくれたのですね。もっとみたいですか?」
既読となっただからだろう、男が続ける。
「みてください。」
また画像ファイルが添えてある。
早智子がそれをタップすると、画像は勃起した陰茎それそのものだった。
(やだ…)
と心でつぶやきながらもその画像を凝視する彼女。
根元が黒々した陰茎は筋に血管が浮き出ていて亀頭が赤い。
主人とはSEXレスだった。
何も彼女がSEXを避けているわけではない。
終電帰りの主人は、彼女の身体を求めなくなった。ただ彼女は求めいた。
41歳。彼女はまだ女だった。職場に来る男達、彼等から封筒や荷物を受け取るたびに、
彼女は、彼等がどんなSEXをするのかを妄想していた。お気に入りに男性を頭に描きオナニーする日々。
満たされないのは心だけでなく身体もだった。
冷えきった店内。禁煙席でアイスコーヒーを空にした早智子は、脚を何度も組み替える。
身体が火照っていた。
と、既読に気づいた男がまたメッセージを届ける。
「みたいですか?」
短文のメッセージに画像ファイルは添えられていなかった。
(みたい…)
心でそう思った早智子。だけれど返信できない。
恥ずかしい女、変態な女と思われたくない、早智子はそう思っている。
「サチさん、みてくれませんか?」
男がたたみかける。
早智子は思った。私はサチなんだ。早智子ではなくてサチ。
アプリの中の私。そう思うと日常を変えずに自分を変えれる気がした。
「みたいです。」
そう返信する彼女。
彼女はムズムズする股間をほぐすように、また脚を組み替える。
「じゃあ会いましょう。〇〇市ですよね?〇〇駅で会いましょう。」
と、男のメッセージ。
(え!?実際に?)
もちろん彼女は戸惑った。
たった10分程度のコミュニケーション。男はそれで会うという。
たしかに移住地は同じだった。指定駅はここから3駅と離れていない。
だけれど、と彼女は思う。
脚を組み替えす彼女はまたあの画像をみていた。
終電帰りの主人は残業ではないだろう。不倫していると知っていた。
職場の20代の部下。41歳の妻を抱くより、20代の女を選んだ主人。
いつも髪を整えて、細身の身体のラインを維持して、女らしさのある服を選んで、彼女はずっと女を維持してきた。
だけれど主人には相手にされない。
勃起した陰茎の画像を見つめた早智子は、変わりたいと思った。
このまま日常は変えずに、こうして非日常の時間を作る。
変わらず、変われる。
彼女はそう思ったのかも知れない。
脚を組み替えながら、スマホをいじる早智子。
「少しの時間なら」
とだけ、男にメッセージを返信した。

…続く

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2018/08/07 15:20:40(lErQvISa)
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