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1:俺とお客様
投稿者:
夢多
彼女のサラサラな髪の毛。それをスルリと撫でると甘い香りが鼻腔をくすぐった。
外は雨。 「…良かったら家まで送っていきますよ?」 そう言うと彼女は嬉しそうに微笑んだ。 「…ぇ?本当ですか?」 期待、しているようなそんな表情。 こっちまで期待してしまいそうになって、彼女から視線を逸らした。 自分には二年も付き合ってる彼女がいるのだから。6つも年下の、しかも美容室のお客様に、何を考えてるんだか…。 「…待たせちゃってごめんね。車に乗って」 そう言えば、彼女は遠慮がちに助手席に乗り込んだ。 「わざわざ送ってもらってすいません」 横目にみる彼女は、肩が少しあがってて緊張してるようで、むくむくと悪戯心が芽生える。 信号で停止した時に、彼女の髪へ触れた。 びくりと、彼女の身体が揺れる。 「…いつも思うけど、髪、いい香りだよね」 トリートメントの香りかな? 耳元でそう言えばまたぴくりと反応するかわいい女。 「…ったぶん、そうだと思います」 彼女の頬が赤く見えるのは、赤信号の灯りのせいだけではないのだろう。 「…貴之さんは…いつもかっこいいですよね」 ふいに、彼女がそんなことを言った。 「…あたし、貴之さんが彼女さんのこと大切にしてるのわかってるのに…、貴之さんに可愛いとか言われたり、優しくされたりすると…」 なんか、ダメなんです…。 彼女の顔が青信号の灯りで青くなって、俺は慌ててアクセルを踏んだ。 「…それって…」 鼓動が高鳴って、胸があつくなる。こんな気持ちになるのは久しぶりだ。 「…っごめんなさぃ…こんなこと、急に言われてもっ困りますよねっ…。そこのコンビニで降ろしてくれたら、もぅ大丈夫ですから…っ…」 泣きそうな彼女と、焦燥にも似た感情に支配される俺。 気づいたら、コンビニの前を通り過ぎていた。 「…ごめん。…とりあえず、俺ん家きてくれる?」 next
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2010/02/21 13:38:38(9bam8RZE)
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