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1:二人の女 第5章
投稿者:
影法師
キヨシのお袋満子と再会したのはそれから一週間位後だった。
俺の働いているスーパーに、偶然満子が買い物に立ち寄ったのだ。 俺はここで働いている事は、彼女には言ってはいなかった。 品出しをしている時、満子の方から声を掛けて来たのだ。 「タクローさんでしょう?」 俺は背中越しに声を掛けられ、驚いて振り返ると、思いがけない人物に驚い た。 「なんか照れるわね・・ふふふ・・。」 満子が意味深な言葉を吐いた。 「そうですね・・。この間はどうも。」 俺はこの挨拶が正しいのか如何か判らなかったが・・。 「やめて・・そんな挨拶、思い出しちゃうわ。」 二人だけが判る共通の秘密だった。 「此処にお勤めしているの?」 「ええ、卒業してから・・。」 「そうなの、内のキヨシとは違うのね。自分の処で働くと言うのはダメよ ね。主人も私に遠慮しているから・・、あまり注意もしないのよ。だから、 あの子ったら好き放題。」 「まあ、キヨシらしいけど・・。」 「女の尻ばかり追い回しているのよね、タクローさんはよく知っているわよ ね。」 「学生時代とは違って、今は時々しか逢わないから・・。」 学生時代と比べれば、最近のキヨシの行動をそれ程は知らないと言って良い だろう。 「ここ2~3日は、仕事もしないで出掛けてばかりよ・・何しているのか・・ あの馬鹿!」 「いいの? キヨシの事そんな言い方して・・、起こられますよ。」 「平気よ、これでもあの子の母親よ、形の上ではね。」 満子は母親と言う言葉を強調して行った。 「お仕事中だったわね・・御免なさい。」 満子はそう言ってその場から離れようとしたが、 「あっ、満子さん・・。」 俺は彼女を思わずそう呼んだ。 「えっ? 何か?」 「今度又ゆっくり逢えません?」 満子は俺の言葉に驚いたようだ。 キヨシは、俺も年上好みと言う事を話していないのだろうか? 「そうね、あの子に聞いてみないと・・、勝手なことしたらあの子に叱られ るから・・。」 「いや、キヨシには内緒で・・。」 「えっ?」 満子は先程以上に驚いている。 「あの子に内緒って・・、そんな事をしたら・・。」 「それとも、旦那さんの方ですか?」 「それは別にかまわないけど・・、タクローさんは又どうして?」 今度は満子の方が訊ねて来た。 「言わないとダメですか?」 「そういう訳じゃないけど・・なんで私なんか誘うのかな・・・と思っ て。」 「逢いたいからじゃダメですか?」 気のせいか、満子の顔が少し赤くなった様に思えた。 「もう、タクローさんたら・・年上をからかうものじゃありません。」 「返事聞かせてくれますか?」 「強引ね・・、考えておくわ。それじゃダメ?」 満子は俺の反応を確かめるかのようにして訊いた。 「それで構いません、宜しくお願いします。」 俺はその場で満子と別れた。 初めてタクローに対して秘密を持った。
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2009/12/22 07:56:18(gNc91iZx)
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