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1:キャンプへ行った妻
投稿者:
不甲斐ない夫
今年の夏、妻がキャンプに行ってもいいか、と訊いてきた。
パート先で企画が持ち上がったらしく、日頃の慰安を兼ねて、バイトの子やパート仲間で行くのだという。 子供たちは夏休みであったし、無理に反対する理由もないので快く承諾した。 キャンプに出掛ける日は、軽装に着替えた妻をパート先の近くまで送ってやったものだ。 ぴっちりとしたホットパンツに小さめなTシャツと、めずらしく肌の露出が多い服装をしていたのが、いささか気になりはしたものの、若い男の子たちも来るというから、老けて見られるのを嫌って若い格好をしているのだろうと、あまり気にも留めなかった。 集合場所に着くと、待っていたのはキャンプ資材を積んだ真新しそうな新型のワンボックスと、バイトの子らしい3人の若者たち。 礼儀正しい青年たちだった。 まだ、大学生だという。 他に車は見あたらず、そこに立っていたのは、妻を含めてその4人だけだった。 「他は、まだ来ていないみたいだな。」 「うん、まだ早いから、これから来るんじゃない?」 パート仲間や従業員たちも一緒に行くのだと聞いていた。 だから、誰もいないのを不思議にも思いもしたが、何食わぬ顔で、そう言った彼女に私はまったく疑問さえ感じていなかった。 「ありがと。もう、いいわよ。」 行ってくるね、と手を振る彼女に笑顔で見送られ、私は、妻を残して家に帰った。 キャンプの予定は3日間。 日頃の妻の苦労をしっかりと肌に感じつつ、その3日間は、子供たちを相手に悪戦苦闘したものだ。 3日目の夕方になって、妻はようやく帰ってきた。 「ああ、疲れた!」と、玄関で荷物を下ろした彼女は、疲れてるわりには、とても晴れ晴れとした表情を浮かべていた。 きっと、仲間といっぱい遊んで、リフレッシュできたに違いない。 家計をやりくりするためにパートをふたつも掛け持ちしている彼女だ。 たまには家族を忘れて気分転換するのもいいことだ、などと、晴れやかな表情を浮かべる彼女を見て、私は心の底から喜んだりしていた。 しかし、よく見ると、妻は怪我をしていて、ひざやひじのあたりには小さな擦過傷が幾つもある。 小さな傷は、ふくらはぎや足の先にも見てとれた。 「それ、どうしたの?」 気になって、訊ねてみたら「ああ、ちょっと転んじゃって。」と、妻は、はにかむように笑っていた。 どれほど羽目を外したのかは知らないが、「歳なんだから気をつけろよ。」と、窘めると「失礼ね。これでも、まだ若いのよ。」と、彼女は勝ち誇ったように笑っていた。 それから一週間ほどが過ぎた頃のことだ。 近くのスーパーで買い物をしていたら、たまたま妻の友達にあった。 ママ友で、長女が幼稚園からずっと一緒だったせいか、私にも気軽に話しかけてくれる、気さくで明るい女性だった。 ノースリーブのシャツを着ていた彼女の肩が、真っ黒に日焼けをしているのを見て「さすがにキャンプに行ったら、焼けてるねえ。」と、私は笑った。 彼女も、妻のパート仲間で、この間のキャンプへ行ったのだ。 すると、不意に彼女が怪訝な顔をした。 「キャンプ?なにそれ?今年は行ってないよ。」 「え?この間、うちの奴と一緒にキャンプに行ったでしょ?それで、焼けてるんじゃないの?」 妻は、彼女も一緒に行くと、確かに言っていた。 だから、安心して、妻を送り出すことができたのだ。 「これ?全然違うよぉ。実家の手伝いに行ってたの。毎日畑仕事させられて、大変だったよぉ。」 訊けば、実家のお母さんの具合が悪くなったらしく、帰省を兼ねて、家族ぐるみで農家をやっている家の手伝いに帰っていたのだという。 「じゃあ、キャンプには行ってないの?」 「行ってないよ。」 「でも、うちの奴が、○○さんも一緒に行くって・・・。」 「そんな話聞いてないよぉ。」 「だって、パート先の慰安旅行を兼ねているから、みんなで行くって・・・。」 言葉が続かなかった。 この辺りから、胸がざわつき始めていた。 「それって、いつぐらいのこと?」 妻がキャンプに行った日を教えてやった。 急に彼女が思案顔になって、不安そうな目を向けてきた。 「あのさ、こんなこと言ったら、なんなんだけど・・・。奥さん、気をつけた方がいいわよ。」 「気をつけた方が、いいって・・・?」 「うん、××さんの奥さんね、職場で意外と人気があるのよ。ほら、スタイルだっていいし、顔も可愛いでしょ?だからね、奥さんに声掛けてるバイトの子が結構いるみたいなの。まだ学生の子が多いから年上の人に興味があるみたいで・・・。奥さんは、相手にしていないみたいだったけど、その時って、ちょうどバイトの子の何人かがキャンプに行くって言ってた日なのよね。だから・・・もしかしたら、その子たちと行ったのかも・・。ああ!これは、あくまでも私の想像だけどね!」 慌てて否定していたが、もはや、私の頭の中には、疑念だけしか渦巻いてなかった。 「私が言ったこと、奥さんには黙っててね。」 まずいことを教えて妻との関係がこじれるのを嫌ったのか、バツの悪そうな顔をして、逃げるように立ち去ろうとした彼女を呼び止めた。 「悪いけど、頼みがあるんだ・・・。」 疑惑は、確信に変わりつつあった。 キャンプから帰ってきた日、妻はノーブラだった。 ふっくらと盛り上がっていたTシャツの薄い生地に、ふたつの小さな突起が飛び出していたのを思い出していた。 ひどく暑い日が続いていたし、日頃からブラジャーを嫌って、家の中では、あまりしたがらないのを知っていたから、さほど気にも留めなかった。 だが、今思えば、若い男たちの前にノーブラの姿をさらすなど、既婚とはいえ、羞恥心がないわけではないのだから、普通ならできることじゃない。 しかし、身体の関係があるなら、話は別だ。 私は、彼女にあることを頼むと、携帯電話の番号を教えて、別れた。 妻とは、結婚をしてから12年になる。 結婚したての頃は、25歳だったから、彼女は今37歳だ。 ふっくらとした顔をしていて、眼尻が下がっているから、年齢よりも幼く見られることが多い。 そのせいか、見ようによっては男好きのする顔をしている。 子供を3人産んでいるわりには、スタイルはまだ崩れてなくて、乳房なども目を見張るほどに豊かな張りに富んでいた。 尻も大きくて、細い身体とのアンバランスが、よく男の目を惹いた。 性格は、これと言って問題はない。 大人しいかと言えば、そうでもないし、かといって、特に口うるさく騒ぎ立てることもなく、毒にも薬にもならない気性をしているから、ことさら不満を覚えたこともなかった。 夫婦仲は、それほど悪くない。 ただ、2年ほど前から、軽いEDになって、夜の生活は、ここしばらくご無沙汰している。 私と妻は、8つ歳が離れていた。 妻も気遣っているのか、無理に求めて来ようとはしないので、申し訳ないと思いつつも、今まで甘えてきた。 だが、可愛がってやらないからと言って、それを理由に妻が不機嫌になることはなかったし、仲違いをしたこともない。 派手なことを好む女ではなかったし、ことさら癖のある性癖を持っているわけでもなかったから、あまり興味がないのだと思っていた。 どちらかと言えば性行為には控え目な性格をしていて、ことさらしたがるタイプでもなかったのだ。 だから、浮気などそれまで一度として考えたこともなかった。 ましてや、妻に変態的な嗜好があるなどとは夢想だにしたこともない。 実に、良き妻であったし、良き母親であった。 私は、心の底から彼女を信じ切っていたのだ。 ママ友の彼女から、携帯に電話があったのは、つい先日の夕方のことだ。 スーパーで会ってから、1週間ほどが経っていた。 近くの喫茶店に呼び出されて、そこで落ち合うことになった。 結論から言えば、クロだった。 それも、開いた口がふさがらないほどの真っ黒だ。 「待ち合わせしたところに3人いたんでしょ?その3人を相手に頑張っちゃったみたいよ。」 アイスコーヒーのストローを口にくわえながら、彼女は呆れたように言っていた。 にわかには信じられない話に、呆然と聞いていたものだ。 「そこに背の高い子がいなかった?その子が、奥さんをすごく気に入ってるらしくて、強引に口説いて、キャンプに行く前から、もう関係はあったらしいわ。私も知ってるけど、なかなかカッコいい子だから、今は奥さんの方が夢中になってるみたい。それでね、その子には、仲の良い子が他に二人いて、奥さんは、その子たちの相手もしてるみたいね。それが、待ち合わせ場所に一緒にいたふたりよ。どうして3人も相手にすることになっちゃったのかは知らないけれど、無理矢理ってわけでもないみたいで、キャンプに行った時も、納得して行ったみたいよ。奥さん、最初から3人を相手にするつもりだったのね。」 冷ややかな目で彼女に見つめられて、思わず頬が赤らんだ。 思わぬ妻のふしだらさと、それに気付きもしなかった自分が恥ずかしくてならなかったのだ。 「向こうに行ってからも、ずいぶんとすごかったみたいよ。最初からエッチ目的だったみたいで、誰も来ないような山奥まで行ったんだって。行く途中も車の中で散々したらしいわ。向こうに着いてからも、ずっと裸で服を着る暇もなかったって話よ。奥さん、休むこともできなかったんじゃない?若い人って、ほんとにすごいし、3人もいたらねぇ・・・。それで、3人いっぺんに相手までしちゃったって言うんだから、ちょっと彼女の性格からは信じられなくて、話を聞いたときには私も耳を疑っちゃったわ。でも、事実らしくて、ずっとそんなことばかりしてたみたい。真ん中の日は、裸の奥さんを山の中に逃がして、強姦ごっこみたいなこともしてたって言うんだから、まったく驚いちゃうわよねぇ。3人で追いかけて、捕まえた人からしたんですって。ずっと、一日中そんなことばかりしてたらしいけど、奥さん怪我とかしてなかった?でも、なんか、私も聞いてて、少しだけうらやましくなっちゃった。ちょっと、憧れたりはするわよねぇ。」 そう言った彼女の瞳には、妖しい光が浮いていた。 あの妻からは、信じられないような話ばかりに、現実のものとして捉えることができず、夢の中で話を聞いているような気さえしてならなかった。 しかし、言われてみれば、確かに妻の手足には、幾つもの擦過傷があった。 あれが地面にひれ伏しながら犯された傷ならば、納得もできる。 だが、アナルまで使わせたなどとは、にわかに信じがたかった。 アナルに触れただけで、嫌がるような妻だったのだ。 「コンドームなんて使わないでしてたって言うから、避妊はどうしたんだろ?赤ちゃんなんかできたら、最悪なのにね。」 おそらく、それはないだろう。 それだけは、確信があった。 私との交渉は、ここのところまったく途絶えていた。 だから妊娠などすれば、すぐに浮気が発覚する。 もし、彼女の話が事実であるならば、おそらくキャンプに行く前から、妻は避妊の準備をしていたのだ。 子供の学校の支度は、必ず前日のうちに終わらせていて、朝になっても、子供たちが慌てふためくことなど、一度もなかった。 何事にも念入りに準備をして、きちんとしていなければ、気の済まない性格をした妻だった。 おそらく、彼女は妊娠することがないように、きっと用意周到に準備をしていたはずだ。 ピルでも飲んでいたのかもしれない。 今夜、タンスの中でも探ってみよう、などと彼女の話を聞きながら考えていた。 「ねえ、ほんとにまったく気付いてなかったの?私は気付かなかったけど、若い子の間では、奥さん評判にもなってたみたいよ。」 彼女の瞳には、非難するような色があった。 正直なところ、性欲というものが失せかけていて、ここのところまったく妻の裸を見ていない。 多少でも、妻を気にかけていれば、もっと早くに気付いていたのかもしれないが、私は、それを怠っていたのだ。 非難されても仕方のないことだった。 「なんかね、その3人のうちのひとりが良いとこの坊ちゃんらしくて、結構いいマンションに住んでるみたいでね、そこをたまり場にして、乱交パーティみたいなこともしてるんですって。それでね、時々は、その3人以外にも、他の子が混じったりしてたらしいのよ。手当たり次第だったみたいね。ほんと、迷惑な話だわ。」 ため息混じりに、ぽつりとつぶやいた最後の彼女の言葉の意味がわからなかった。 淡々と口にしていたが、その時の彼女は、まるで妻を嫌ってるかのようにも思えた。 いったい、妻が彼女になんの迷惑をかけたのだろうか? 同じパート仲間として恥じているのか? それとも、同性として、妻のふしだらな行為を軽蔑しているのか? 妻と同い年の彼女だった。 歳が同じだったせいか、知り合ってからは、同じ勤め先を探してくるなど、ひどく懇意にもしていた。 だが、その時の彼女は、妻を忌み嫌っているようにも見えたのだ。 そう言えば、一人言のようにしゃべり続ける彼女に、妙な疑問を覚えた。 彼女は、いったい誰から話を聞いたのだ? まるであたかも自分が見てきたように話をしているが、それはいったい誰に教えてもらったことなのだろう? それを考えると、不思議でならなかった。 「ねえ、ところで、それは誰に聞いたの?」 疑問が、口をついて出た。 彼女は、迷惑そうな顔をしながらも、あっけらかんと答えた。 「私のカレから・・・。私も奥さんと同じで、あの職場に若いカレ氏がいるの。奥さんを気に入ってる子と仲が良いから、頼んで全部訊いてきてもらったのよ。それを、あなたに教えてあげてるの。」 予想もしなかった答えに息を飲んだ。 彼女も、浮気をしていたのだ。 「でね、訊いてよ・・・。」 急に眉根をしかめ、不機嫌そうな顔つきで身を乗り出してきて、彼女が続けた。 「あなたに言われてから、すぐにカレに聞いたんだけど、なかなか教えてくれなくて、おかしいな、とは思ってたのよね。でも、やっと昨日白状して、なかなか教えてくれなかった理由がわかったわ。実は私のカレもね、その子に誘われて、今言ったマンションに、行ったことがあるんですって。それでね、あなたの奥さんとしてきちゃった、なんて言うのよぉ。挙げ句にすごく良かったなんて言うもんだから、もう腹が立っちゃって。あなたが、しっかりと奥さんを見ていないから、私まで嫌な思いしちゃったじゃない。」 怒ったように告白されて、ようやく疑問が解けた。 そうか、彼女は男を寝取られたと思っていたから、妻を快く思っていなかったのだ。 まさか、妻が彼女の男まで相手にしていたとは思いもしなかった。 それにしても、なんと言うことだ。 あの妻が、次々と若い男たちに体を開いているの言うのだ。 まさに彼女が言うように手当たり次第ではないか。 だが、聞けば聞くほど、あの妻が、そんなことをしているなど、にわかには信じがたい気持ちが強くなっていき、戸惑いさえ覚えた。 それは、おそらく事実なのだろう。 わざわざ私を呼び出してまで、嘘を教えるメリットが彼女にはない。 むしろ、浮気の事実さえ教えてしまったデメリットに、真実味さえ感じてならない。 きっと、彼女の言っているとおりなのだ。 妻は、次々と若い男たちに身体を与え、そして喜悦の声を上げて悶えているのだ。 「これから、どうするの?」 塞ぎ込むように黙り込んでしまった私に、彼女が苛立つように訊ねた。 答えなど求められても、すぐには返答などできそうになかった。 どうしても信じられなかったし、信じたくもなかったのだ。 その時、不意に彼女の携帯が鳴って、彼女は慌てたように小さなバッグから携帯電話を取り出すと、耳へと当てていった。 「うん・・・うん・・・わかった。すぐ、行くね。」 携帯を畳んだ彼女は、実に嬉しそうな顔をしていた。 「カレが迎えに来てくれたみたいだから、もう行くね。」 「彼?」 「今言った、若いカレ氏。浮気した罰に、今から遊びに連れて行ってもらうの。」 「えっ?これから?子供たちはどうするの?こんな時間から、いったいどこへ行くって言うの?」 本当なら、主婦である彼女は、夕げの支度にいそしんでいる時間のはずだった。 私の問いに、彼女の目が意地悪そうに輝いた。 「そのマンションに遊びに行くのよ。今日は、早くに仕事が終わったから、子供たちは、旦那が見てくれてるわ。たまには、私だって息抜きくらいさせてもらいたいわよ。」 「えっ!?」 露骨に乱交をしに行くと告げたのだ。 そのマンションは、乱交パーティのたまり場だと、彼女自身が言っていた。 予想もしなかった返事に、ただただ驚くばかりだった。 息抜きにしては、ずいぶんと艶めかしいことだ。 「じゃあ、行くね。」 立ち上がって、すぐさま背中を向けようとした。 「あ、それとね・・・。」 不意に振り返った彼女が、ひどく暗い目で私を見つめてきた。 「奥さんのことは、黙っていた方がいいかも。騒いでも何もいいことはないわよ。どうせ、遊びなんだし、向こうだって本気にはならないから、子供のことを考えたら、何も言わないで好きにさせてあげてた方がお互いのためだと思うわ。きっと、すぐに飽きちゃうだろうしね。それに、××さんだって、ずっとしてあげてなかったんでしょ?やっぱり、問題はあったと思うのよね。奥さん、ずっとこぼしてたもの。だから、少し遊ぶくらい大目にみてあげなきゃ。本気にならなければいいんだし、奥さんもバカじゃないから、それくらいわかってるわよ。」 妻を引き合いに出しているが、それは彼女のことも黙っていろと、暗に告げているように聞こえてならなかった。 若い男に弄ばれながら、喜悦の声を上げる妻のふしだらさが、大したことではないのか? 呆然としている私を尻目に、彼女はスタスタと歩いて店を出ていってしまった。 目の前で、話を聞かされても、にわかには信じがたい。 とても、浮気ができるような女ではなかったし、そんな気配など、これまで一度として感じたことはなかったのだ。 だが、あの奥さんが嘘をついているとも思えない。 やはり、妻は浮気をしているのだろうか? しかし、乱交だと? 山の中で、強姦ごっこをしていただと? あの妻がか? キャンプから帰ってきた後も、いつもとまったく変わらない妻だった。 家事も手抜きすることなく、きちんとこなしていた。 相変わらず明るく笑うし、家族にも優しかった。 彼女は、彼女のままであって、ずっと良き妻であったし、良き母親であったのだ。 とても、ママ友の奥さんが言っていたようなことをしていたとは、到底思えない。 乱交までした事実を、あれほどうまく隠せるのなら、妻は、まさしく悪魔だ。 仮にそれがもし事実だとして、これからどうする? 離婚するのか? 3人の子供の面倒は誰が見る? 三女はまだ幼い。 長女にしたところで、まだ手の掛かる年頃だ。 思春期になって、いよいよ扱いづらくなってきた。 そこに、離婚話など持ち上がったら、いったいあの子はどうなってしまうのだ? 仕事にしたってそうだ。 今は、出世レースの大事な時期だ。 もし、離婚の事実が判れば、管理能力を問われるだろう。 私に不利益が働くのは、目に見えている。 浮気をしていようが、していまいが、選択肢など残っていないような気がした。 それに、私自身が、まだ妻を愛していた。 この事件が発覚するまで、なんの不満などもなかったのだ。 確証があるわけではない。 疑いがあるだけだ。 信じたくない思いが強すぎて、無理に信じ込もうとしていた。 キャンプだって、あれから仲間が来たのかもしれない。 ママ友の奥さんは、私をからかっただけなのだ。 気さくな彼女は、よく人をからかって楽しむところがある。 もう少し妻を信じてみよう。 無理にそう思い込みながら、私は家へと帰った。 玄関を開けると、ちょうど出掛けようとしていた妻と、ばったり出くわした。 「ああ、あなた、帰ってきたの?よかったぁ。ちょうど今、電話しようと思ってたとこなの。」 携帯電話を手にしていた妻は、いかにも助かったといった顔をして、明るい笑顔を向けてきた。 「え?なに?どうしたの?」 小綺麗に着飾った服を着て、丁寧に化粧をしていた。 強めの香水の匂いが、やけに鼻をくすぐってならなかった。 「あのね、ごめんなさい。また急にパート先から電話が入っちゃって、夜のシフトに入ってくれないかって、頼まれちゃったの。人がいなくて大変みたいで・・・。悪いけど、ご飯の用意はしてあるから、あの子たちに食べさせてあげてくれない?」 パートに出掛けるだけなら、そんなに着飾ることはない。 ずっと、気にはなっていた。 『あら?外に出るなら、これくらい普通よ。あなただって、自分の奥さんが綺麗に見られた方がいいでしょ?』 そうやって、いつも言いくるめられてきた。 私は、ずっと騙されていたのだ。 もはや、疑いの余地はなかった。 妻はふたつのパートを掛け持ちしている。 ママ友の奥さんと一緒に勤めている化粧品の配送センターの他に、深夜まで営業している大手焼き肉チェーン店の清掃婦もしているのだ。 通常なら、どちらも子供が学校へ通っている昼間だけだが、ここのところ、焼き肉屋の方が、突然、夜間のシフトが入れることが多くなっていた。 それを疑問に思ったことは、一度もなかったが、嘘だったのだ。 ついさっき別れたばかりのママ友の奥さんは、これからマンションに行くと言っていた。 そのマンションに待ち構えているであろう男たちと、息抜きと称した乱交を愉しむのだ。 おそらく妻も、その乱交に加わる。 「12時前には帰れると思うから。」 まだ6時にもなっていなかった。 つまり、これから5時間以上も、妻は何人もの男たちに弄ばれるのだ。 返事も待たずに、妻は、急ぐようにハイヒールに足を入れていく。 表情に悪びれた様子はない。 口元に微笑まで浮かべていた。 そんなに若い男はいいのか? 私の知らない妻が、目の前にいた。 「じゃあ、お願いね。あなた♪」 見事なまでに屈託のない笑みを残して、妻は、嬉しそうに玄関を出て行った。 きっとママ友が来ることは知らないはずだから、驚くはずだ。 だが、何事もなかったように、彼女たちは明日もパートに出掛けていく。 そして、今夜を境に、ふたりはより親密になっていくことだろう。 そうなったら、もう、私には、真実を知る術がなくなる。 口裏を合わせるようになるからだ。 胸の奥で、何かがすっぽりと抜け落ちたような感覚を覚えてならなかった。 私は、ぼんやりと玄関に佇みながら、妻の運転する軽自動車のエンジン音が遠のいていくのを、黙って聞いていた・・・。
2011/08/21 01:49:24(95m0bXiu)
投稿者:
(無名)
この旦那、女女しすぎ。バカみたい。
11/09/13 08:34
(.awTG5H/)
投稿者:
レスに、質問して、すみません。
なかなかさんへ。その方は、どういう経緯でその真実を、知り得たのでしょうか?
11/09/13 15:26
(Wo9zq8Fm)
投稿者:
ヤナ~!
現実、こんな問題に直面したら誰だってアレコレ考えるのでは?
是非続きをお願いします。
11/09/13 15:38
(V3meOm.z)
投稿者:
代表
是非続きお願いします最後まで頑張って下さい
11/09/13 22:06
(xHCAIW0A)
投稿者:
不甲斐ない夫
信じるべきは誰なのか? そんなことは言わずとも知れている。 私が信じるべきは、何物にも代え難い家族であり、長年連れ添ってきた妻、その人だ。 決して、目の前にいる小僧なんかじゃない。 それは道義的に当然のことだし、人として当たり前のことだと言うことはわかっている。 しかし、どうしても信じ切れない自分が、やはりそこにいる。 浮気の事実を告げたとき「な~んだ、やっぱりバレてたんだ。」と、まったく悪びれた様子もなく、まるで子供がちょっとした悪戯を叱られた程度にしか受け応えていなかった妻の姿が、脳裏に残っている。 今まで見たこともない妻の態度だった。 その豹変ぶりに驚き、見知らぬ女を見ているような錯覚さえ覚えた。 あれが、私の知っている妻などとは、何があっても信じることはできなかった。 しかし、それが事実であり、紛れもない現実だった。 あの調子で、不倫の事実もあっさりと認めてしまうのが怖かった。 そして、「ごめ~ん。実はあの子は、パパの子じゃないのぉ」と、いとも容易く告げられてしまうのが怖かった。 その事実を告げられたとき、私は人として生きていられるか、自信がなかった。 いったん、もたげた疑惑は、上の娘たちまでをも疑わせる。 頭の中で、いらぬ疑惑ばかりが首をもたげては、それを無理に封じ込める作業に苦しめられた。 サトシは、飯をすべて食べきってしまうと、「一本いいですか?」と、開いた二本の指を口の前に持っていった。 平静を装ったその表情には、腹の中を探られまいとする狡猾さを必死に隠そうとするような態度に見えないでもなかった。 疑念が疑念を呼び、いらぬ邪推ばかりが、頭の中で巡り続けた。 タバコを一本取り出して、ライターごと渡してやると、サトシは火を付けて、うまそうにタバコを吸い始めた。 さっきまでの脅えた表情は、もう、どこにもなかった。 これがサトシの策略であるならば、心理戦で、私は奴の巻き返しを許したことになる。 ペースを奪い返さねば、この先何を仕掛けてくるかわからなかった。 信じるべきは、妻なのだ。 こいつじゃない。 自分の中で、無理にそう思い込ませた。 「まったく、今の話が本当のことなら、大変なことだな。」 たいして気にも止めていない風を装って、答えた。 返してきたライターを受け取り、私もタバコを取り出した。 火を付けようとして、震えそうになる指先を抑えるのに苦労した。 「僕の話を信じないんですか!?」 サトシは、身を乗り出してきて、意外そうな顔をしていた。 「君の話だけを一方的に信じる気にはなれんよ。浮気がバレての、この状況じゃ、何を信じろと言うんだ?自分が助かりたいために、あることないことを吹き込んで、女房だけを悪者にしようとしてるのかも知れないじゃないか。双方がいる場所で互いの話をこの耳で聞くまでは、どちらの話しが正しいかなどと判断はできんさ。もっとも、二人とも自分が正しいと言うんだろうがな。」 確かにそうだ。 自分で話しているうちに、まったくその通りだと思えてならなかった。 妻の不倫にしたって、疑惑の芽があるだけで、確かな証拠があるわけじゃない。 その疑惑にしたところで、こいつがさっき、さもあり得そうな話をして私に植え付けただけだ。 不倫の確固たる証拠を示した訳じゃない。 どちらが正しいかなど、まだ、誰にもわかりはしないのだ。 「僕は、嘘なんてついてませんよ!あなたが知らないようだから、親切で教えただけじゃないか!」 「そういうのをいらぬお世話というのさ。ところで、まだ聞きたいことがあるんだがな。」 今度は、こっちが巻き返す番だ。 「なんですか!?ぼくの言ったことが信じられないなら、何を聞いたって仕方ないでしょ!?」 憮然とした表情をしていた。 確かにサトシの言うとおりだった。 鼻から嘘だと決めつけて掛かるのなら、何を聞いたところで仕方がない。 だが、これだけは、どうしても確かめておきたかった。 「うちの娘を、どうやって嵌めた?・・・。」 「え?・・・」 サトシの顔色が一瞬変わるのを見逃さなかった。 もしかしたら妻は、サトシの言うように、ふしだらで、だらしのない女なのかもしれない。 避妊リングも自ら希望したのかもしれない。 しかし、そもそもの発端は、長女の万引き事件にある。 それを、どうしても確かめたかった。 「は、嵌めたって、なんですか?・・。いったい奥さんから、どんな風に聞かされたかはしれませんが、あの子が万引きをしたのは確かです。ぼ、僕が、その現場を発見して、奥さんに知らせたんですから・・・。」 「そして、脅して関係を迫った。そうだな?」 「お、脅しただなんて・・。ただ、僕は、これからのことを奥さんと話しに行っただけです。脅したわけじゃありませんよ・・・。」 「わざわざ話し合いにラブホテルを選んだわけか?」 「それは・・それは、二人きりになれるところが、そこしか・・なかったから・・・。」 最後の方は、ほとんど聞き取れないほどに小さな声だった。 だが、これではっきりしたことがある。 妻が、自らサトシに関係を迫ったわけではない、ということだ。 彼女がサトシの言った通りの女であるならば、自ら関係を迫ったとも考えられる。 だとすれば、妻の話とは真っ向から違うことになり、彼女を信じる糧も失われる。 だが、長女の万引き事件は、実際にあった。 別に妻がねつ造したわけではない。 つまり、妻の話には、まだ信憑性があるということだ。 これが、はっきりとわかっただけでも、妻を信じられる材料にはなる。 「いったいどうやって、あの子を嵌めた?」 すべてわかったような顔をして、奴を睨みつけた。 「べ、別に嵌めたわけじゃ・・・。」 「わかってるんだ。すべて話せ。それとも、またここでプロレスの続きをやるか?言っておくが、俺は強いぞ。お前のように学生時代に遊んでいたわけじゃない。」 半分は、はったりだった。 確かに学生時代は、柔道に明け暮れていた。 だが、それは20年以上も前のことだ。 さっきは、不意を突いて襲撃に成功したが、まともにやり合ったら勝てるかどうかは、五分五分と踏んでいた。 だが、喧嘩慣れしてないらしく、サトシは、こんな脅しでも効いた。 「シュンが・・・。」 ぽつり、とつぶやくように答え始めた。 「シュン?あいつが関わってるのか?」 「そうです・・。シュンが全部仕組んだんです・・・。」 全部、と言ったあたりにサトシのずるさを見たような気がした。 相手がいなければ、好き放題なことをしゃべる。 我が身が可愛いばかりに、助かるためには、他人を陥れようとする傾向が、サトシには強いのかもしれなかった。 ならば、妻の不倫話も信じられたものではない。 「いったい、シュンは何をやって、うちの娘を嵌めたんだ?」 あの子が、万引きなどするわけがない。 そう確信できるから、こいつ等が何かを仕掛けたと想像がついた。 カマを掛けたつもりだったが、やはり何かを仕掛けていた。 万引きの瞬間をムービーに収めるなど、あまりにも話が出来すぎている。 「塾の帰りに、あそこのコンビニにいつも立ち寄るのは知ってました。あの日は、暑かったからアイスクリームを買ってました。うまい具合にアイスクリームを買ってくれたんです。だから、買い物を終えて出てきたところを、シュンが呼び止めたんです。」 「うまい具合というのはなんだ?コンビニに立ち寄るのを知っていたというのは、つまり、調べていたということか?」 「はい・・・その・・どうしたら、奥さんと仲良くなれるか、考えてたときに、シュンが教えてくれたんです。娘がいるなら、いい方法があるって。それで、少しの間、お嬢さんを尾けて、行動を調べました・・・。」 つまり、時間を掛けて、念入りに調べ、タイミングを図っていたわけだ。 巧妙に仕組んでいたということになる。 「うまい具合というのは?」 「アイスクリームなら、手から放せませんから。」 「どういうことだ?」 「それは、今から話します。お嬢さんがアイスクリーム片手に店から出てきたところを、シュンが、ちょっと、お願いがあるんだけど、って呼び止めました。お嬢さん、訝しげな顔をしてましたよ。」 そうだろう。あの子には、知らない男と口をきくな、と口が酸っぱくなるほど言って聞かせてきた。 「でも、シュンは、口がうまいからお嬢さんも仕方なく、黙って言うことを聞いてました。」 「シュンは、なんて言ったんだ?」 「彼女にプレゼントしたいけど、男が買うのは恥ずかしいから、コンビニに戻って口紅を買ってきてくれないか?って、頼んだんです。そして、返事を聞く前に、お金をお嬢さんのポケットの中に入れました。お嬢さん、左利きですよね。だから、右側のポケットの奥に突っ込んだんです。」 「ん?右とか左とか、何か関係があるのか?」 「簡単なことです。お嬢さん、アイスクリームを左手に持ってました。コンビニに戻って、口紅を買うとしますよね。左手は塞がってるわけだから、どっちの手で口紅を掴みます?」 「そりゃ、右手だろう。」 「そうですよね。そして、お金は、どっちのポケットにあります?」 「右側だろ?さっきそう言ったじゃないか?」 「ええ。その通りです。右手に口紅を握って、お金を出すために右のポケットに手を入れた。ここまで言ったら、もう、わかりますよね。」 ああ!なるほど!そういうことか! ポケットにある金を取り出すために、賞品を握ったまま、何も考えずにポケットに手を入れたのだ。 左手は塞がっていたのだから、どうしても、そうなる。 それは、つまり、知らない第3者から見れば、万引きをしているように見える。 「わかりましたか?僕は、それをずっと棚の影から、ケータイで撮ってたんです。そして、ポケットに手を入れた瞬間に、万引きだ!って、大声で騒ぎました。お嬢さん、最初は自分のことじゃないと思っていたらしいです。でも、そこでバイトしてた友達が、お嬢さんを捕まえて、必死に違うって言ってましたけど、警察に連れて行くって言ったら、すぐに泣き出しました。その時には、シュンなんてどこにも居なくて、どうすることも出来なかったんです。」 最後は、見事だろうと言わんばかりに、得意そうな顔までしていた。 ファミレスの中に、他の客がいなかったら、その場で何も考えずに、サトシに襲いかかっていたことかもしれない。 どれだけ、あの子が怖い思いをしたかと思うと、居たたまれなかった。 どれ掛け、悔しい思いをしたかと思うと、可哀想でならなかった。 ふと、あの子が、たとえ自分の子供でなくても、ずっと育てようと思った。 私の怒りが伝わったのか、サトシは口を噤んだ。 つまりは、想像通り、巧妙にこいつ等に嵌められたわけだ。 「そこまでして、俺の女房が欲しかったのか?・・・。」 声が震えているのが、自分でもわかった。 サトシは、俯いたまま答えなかった。 「うちの娘まで、使いやがって・・・。」 「あ、あれは、シュンが!」 弁解がましく顔を上げたが、怒りに満ちた私の顔を見た途端に、また顔を俯かせた。 「シュンじゃねえ・・・。お前だ。お前が俺の家族を嵌めたんだ・・・。」 「す、すいません・・・。」 「まだ、やめるつもりは、ないのか・・・。」 「そ、それは・・・僕じゃなくて、奥さんに聞かないと・・・。」 「なぜだ?」 「ぼ、僕が強要してるわけじゃなくて・・・その・・奥さんが勝手に・・。」 「まだ、そんなことを言うのか!?」 「嘘じゃありません!僕は、もう、どうでもいいんです!こうしてバレちゃったわけだし、はっきり言って、僕だって奥さんとは、もうやめたいです・・・・。でも・・・奥さんの方が・・・。」 「そうか・・。あくまで女房のせいだと言いたいわけだな。ならば、女房本人に聞こう。」 その場で、ケータイを開いた。 発信履歴から、妻の名前を探し出し、ボタンを押した。 何度目かのコールのあと、妻が出た。 (あ、あなた・・・。大丈夫なの?・・。サトシ君は?) スピーカーから、不安げな声がすぐに聞こえてきた。 「ああ、俺は何ともないよ。坊やも目の前にいるよ。」 (今、どこに居るの?) 「近くのファミレスさ。そこで坊やと飯を食ってるよ。ところでな、お前に話がある。坊やは、お前との関係をやめたいそうだ。」 (え?・・・そ、そう・・・。仕方ないわね・・・。) 心なしか、寂しそうな声だった。 「お前は、それでいいのか?」 (いいもなにも・・・。向こうがやめたいって、言ってるなら、仕方ないじゃない・・・。) 確かにその通りだ。 「未練は、ないんだな?」 (ないわ。でも、ビデオはどうしよう?返してくれるの?) もっともな心配だ。 妻の痴態を収めたビデオは、まだこいつ等の手中にある。 「それは、これから行って奪い返してくる。だから、帰りは遅くなると思う。ところで娘たちは、みんな帰ってきたか?」 なぜか、ひどく子供たちの顔が見たくてならなかった。 (う、うん・・・。みんな、居るけど・・・。) 「そうか。子供たちを頼む。お前はあいつ等の母親なんだ。ちゃんと面倒見てくれ。」 (そんなこと、言われなくてもわかってるわ。じゃあ、帰りは遅くなるのね。夕方からだと、帰りは6時くらいになるのかしら。先にご飯食べさせちゃうわよ。) こんな時にも、子供たちの飯の心配か。 さすがに母親なのだと、思わず笑みがこぼれた。 「時間は、何時になるかわからん。だから、先に飯を食わせておいてかまわないよ。こっちのことは心配するな。ちゃんとビデオも持って帰る。それで、すべて終わりだ。これからは、また、元の生活が始まるのさ。」 (うん・・・。) 「じゃあ、切るぞ。」 (うん。) 妻の声を聞くと、ホッとするのはなぜなのか? それはまだ、私の心が妻の中にあるからだ。 こんなことは、犬に噛まれたようなものだ。 たいしたことではない。 本心から、そう思えた。 妻さえ戻ってくれれば、すべてが、やり直せる。 なぜか、この時の私には、そう思えてならなかった。 サトシとの別離を妻の口からはっきりと確かめることが出来た。 それが嬉しくてならなかった。 サトシは、上目遣いに私たちの会話を眺めていた。 「女房もいいそうだ。お前さんと別れるとさ。」 「嬉しそうですね。」 思わず表情に出ていたのかもしれない。 「浮気をやめるとはっきり言ったんだ。お前さんだって、未練はないだろう?」 「はあ。」 「なら、喜んでもおかしくはないだろう。」 「幸せな人ですね。」 「なんだと?」 「いえ、何でもありません・・・。まだ、時間がありますけど、どうしますか?」 さほど、時計は進んでもいなかった。 まだ、14時半にもなっていない。 向かうのは、16時だ。 「お前さんと、このまま黙って面を合わせてるってのも、あまり気分のいいものじゃないな。」 「だったら、お代わり頼んでいいですか?」 「ああ?」 「腹が減っちゃって・・・。黙ってるよりは、いいと思いますけど。」 「勝手にしろよ。」 サトシはウェートレスを呼ぶと、違ったメニューを注文した。 私は、新しいタバコを取り出した。 今日ですべてを終わらせる。 タバコに火を付け、目の前の小僧を眺めながら、心の中で、固く誓っていた
11/09/13 22:54
(/C82oKix)
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