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堕天の星
カテゴリ: 官能小説の館    掲示板名:ノンジャンル 官能小説   
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1:堕天の星
『さぁ、今日のゲストはこの方達です』
 
 液晶モニターの向こうで微笑む少女達。少し可愛い身近な少女達がアイドルとして持て囃される芸能界。その光り輝くスポットライトに夢を求める者達が集まってゆく。
 
 
「ヨロシクお願いします!」
 デビューしたての【水無月彩乃】ウチの事務所に所属するイチ押し新人アイドル。人懐っこい笑顔の可愛い今時スレた感じのしない正統派な清純さが売りだ。
 そして僕は桂木祐也、彩乃のマネージャー兼、幼馴染み兼、彼氏をしている。僕は彼女より3歳年上、きっかけはホンの些細な事だった。
 
「わたし、"あいどる"になる」
 テレビを観ていた彩乃が突然そんな事を言い出した。まだ小学校に上がる前の話だ。
「彩乃みたいなチンチクリンがなれる訳無いだろ」
「なれるモン!」
「ムリだって…」
「なるモン、だから祐くんが"まねーじゃ"してね」
「…わ…わかったよ」
 そんな馬鹿な約束を信じ、全うする為、彩乃は音楽、ダンスとおよそアイドルになる必須レッスンを希望、驚く事に彩乃の両親はそれを快諾した。
 かくいう僕はマネージャーになるべく、有名校の芸能マネジメント学科を目指した。彩乃が信じて疑わないならそれを助けたかったし、何より僕にはその道しか選択肢は無かった…。
 
 時は過ぎ、彩乃はみるみる才能を伸ばしてゆき、僕も独学で知識を増やしていった。が…全てが順調…そんなに人生が甘い筈は無い。暗い影は受話器の向こうからやって来た。
 
「ハイ、僕が桂木祐也で……」
 
ガッシャーーン!!
「モシモシ…モシモシ?」
 
・・・・
 
「ゆ…祐…く……」
 案内されたのは病室でもICU(集中治療室)でも無かった。地下にある薄暗く寒い部屋。独特の匂いと揺れる炎…。いくつも列んだ白い布の前に彩乃が座っていた。
 
 
 あっという間だった…一瞬の判断を誤った運転手僕達の両親を載せた観光バスはそのまま谷底へ…。
 残酷なようだが…と捲くられた骸布…。
「間違い…ありま…せ…」
 それが限界だった。
 彩乃はずっと僕の腕にしがみ付いて泣き続けた。
 
・・・・
 
「…泣き疲れたか」
 いつの間にか彩乃は僕に身体を預けたまま眠りに落ちていた。
 
 
 後日、改めて彩乃をアイドルにする事こそが一番の供養にもなると決めた僕の前に父の知り合いという弁護士が現れた。
「本当ですか!?」
 まだ未成年だった僕のサポートを申し出てくれた。お陰で問題事もスムーズに解決に向かっていった。
 彩乃は学校の寮に住む事になり、僕はバイトを続けながら家に住み続けた。後で知った事だけど、第三者を介して祖父が援助していてくれたらしい。何故そんな回りくどい真似をせねばならなかったかというと、僕の両親は親の反対を押し切り、半ば駆け落ち同然で結婚した為、互いに蟠りが残っていたからだった。
 
 
「オイ、桂木ぃコッチやっとけ!」
「桂木君、アレは何処~?」
 バイト先に選んだのはそんなに大きくない芸能事務所。ここなら収入を得ながら色々学ぶ事が出来る。まさに一石二鳥の環境だった。とはいっても最初は雑用ばかりだったが努力を認められ、やっと契約社員になれたある日…。
「桂木、社長がお呼びだぞ」
 その日はやって来た。
 
 
「今日からこの新人のマネージャーをしてもらう。出来るな?」
「ヨロシクお願いします」
 そこに居たのは誰あろう水無月彩乃だった。
「これでやっと二人の夢が叶うね」
 帰り道の途中にある小さな公園、あまり照明も無い少し薄暗いベンチに座り、二人は自動販売機の缶ジュースで祝杯を交わした。
「…祐くん」
「彩乃…」
 どちらからとも無く、瞼を閉じて唇を重ねた。
「……アハハ、コーヒーとオレンジが混ざって変な味…」
 空はもう暗くなり始め、一番星が瞬いていた。
「祐くん、私絶対アイドルになるよ。あの星みたいにキラキラと輝く…」
 そう笑う彩乃だったが、現実はそう甘くは無かった。いくら頭を下げて売り込みを続けても業界のコネを持たない祐也と無名の新人では殆ど門前払い。たまに群衆の一人や背景の一部として笑っているだけのひな壇、良くて地方番組のレポーターだった。規模の大きさがそのまま力関係となり、逆に事務所の小ささが仇となってしまった。
 移動もタクシーなど使えない、電車で渡り歩くしかなかった。傍から見ればただのカップルだろう。
 
 
 そんなある日、二人の運命を劇的に変える男と出逢う事となる…。
「本当ですかっ!?」
 それは今企画が上がっている映画に彩乃の主演と主題歌のチャンスが巡って来たのだった。話を聞けば本来予定されていた槙備芹亜が急に降板してしまい、その代役としての抜擢だった。
 たまに詐欺紛いの胡散臭いものも多い。話を持ってきたのは業界でも1・2を争う敏腕プロデューサー。話の信憑性は充分だった。「どうだ?新人には荷が重いか?」
「と…とんでもないっ!ウチの彩乃ならやれます。きっとご希望に沿えます」
 理由は何だっていい、このチャンスを逃がす手はない。僕はその申し出を受け、テレビそしてステージの上でスポットライトを浴びて光り輝く彩乃を思い描き悦びに震えた。
 
 ……だからその時の僕には気付く事が出来なかった。光り輝くにはそれだけの理由があるのだと。そう丁度あの日の夜空の様に……。
 
 
 翌日から彩乃の生活は一変した。もとより経緯が経緯だけに時間が無く、真っ白に近いスケジュールは分単位で埋まっていた。打合せは基より映画の撮影と主題歌のレッスン、そして収録と多忙を極めた。だからだろうか、たまに彩乃の表情に影が差して見えた。
「キツイのか?調子が悪いなら…」
「ウウン、大丈夫。少し疲れただけ。新人だもん我が儘は言えないよ」
 確かにその通りだ。だからこそ僕も彩乃のマネージャーとしてバックアップに努めた。ただそんな時、1本の電話が入った。
「ハイ、私が桂木祐也で…エッ!?…何ですって…?」
 それは祖父の死去を告げる電話だった。業界の通例であれば自己都合で休むなど有り得ない、例えスタッフであろうと…。だが相手が相手で、避ける事は出来なかった。
「ウ…ン、分かった。今日は打合せだけだから祐くんが居なくても大丈夫だよ…」
 そう笑う彩乃だったが、何か違和感があり、別れ際後ろ髪を引かれながらも僕はタクシーに飛び乗った。
 今、考えれば行くべきでは無かった、いや行かせるべきては無かった。打合せ内容を知る為に彩乃の服に忍ばせたICレコーダー、そこには愕然とする内容が残されていた。
 
『い…イヤ…ヤメテください』
『大人しくしろよ!俺に逆らったらどうなるかは想像がつくだろう?』
 
 言い争う男女、ガタガタと物が転げ壊れる音。何があったかは容易に想像がついた。
ギリッ…
 僕はこれまでに感じた事の無い憤りと怒りを覚えた。それは彩乃の犯した泉堂というプロデューサーにでは無く、守れなかった自分自身に…。
「……クッ」
「何処へ行くつもり?」
 ダンッ!!と机を叩き、立ち上がった瞬間、後ろから声がした。
「槙…備…さん」
「何処へ行くのかと聞いたのだけど…聴こえなかったかしら」
 答えるまでも無い、僕が行くべき場所は決まっている。
「行ってどうするつもり?まさか私が何故降板したか考え無かったの?」
2011/08/28 20:55:16(bJ08OrI5)
2
投稿者: たんたんタヌキの○○
そうだ…泉堂プロデューサーの話を承けたのは僕だ。だからこそキッチリ話をつけなければ…。
「貴方だってこの業界がただ煌びやかなだけでは無い事は知っているわよね?抗議でもするつもり?例え証拠が有ったとしても簡単に握り潰される、泉堂はそういう男よ。まして彼女に起こった事実は変わらないわ。逆らえば逆にこの世界で生きてはいけない…」
 現在トップアイドルの座に君臨する槙備、そのオーラに気圧され言葉を継げなかった。だけど僕は彩乃のマネージャーなんだ。
「さぁ…どう動くつもりかしら?」
 
・・・・
 
「で、どうする気だ?」
 泉堂は深々と腰をかけ、睨みを効かせている。
「そのツラだと、気付いてんだろ?俺が何をしたか…」
「き…今日はお願いに参りました」
 本当は今すぐにでも殴り倒したい、自分が何をしたかその身に解らせたい……だけどそれは彩乃の将来の為には…。沸騰し逆流する血を、震える拳を、猛る心を無理矢理抑え込み、血を吐く思いで言葉を継ぐ。
「せ…泉堂プロデューサーのお陰で彩乃もかなりに…人気が出てき……ですからこれ以上手を出さな…噂がたっては互いに利になりま…」
「恋人を犯した男に頭を下げるというのか?」
ギリ…ッ
 泉堂がわざと嘲り煽っているのは判る、コイツはそういう男だ。
「いえ…今の私は彩乃のマネージャーです。ですから彩乃にマイナスとなる可能性を除外した上で……」
「…上で?」
「彩乃をよ……宜しくお願いします」
 90度…体を直角になるまで頭を下げる。こんな事では足りないかもしれない、この男なら土下座や靴を舐めろとまでも言うだろう。だが…。
「…良いぜ。その気概に免じて俺が彩乃に手を出すのは止めてやろうじゃないか。世の中ヘラヘラと媚びる奴が多い中、お前みたいな奴俺は嫌いじゃねぇぜ」
「あ…有難うございます」
 もう一度深々と頭を下げ、部屋を後にした。
「胆の据わった良い彼氏じゃねぇか…なぁそうお前も思わねぇか?」
 そう言って視線を下げた先、机の下で隠れる様に身を屈めている少女が目に涙を浮かべながら頭を上下に動かしていた。
「フ…負け犬が…」
 
 
ダンッ!!
 玄関を抜けた一番最初の街路樹に拳を叩き付ける。力だ…僕に力があれば彩乃をあんな目に遭わせずに済んだ。
~♪~♪
「ハイ、桂木です。あ、先日は有難うござ…エッ?遺言…」
 着信音は一ツの希望を運んできた。一瞬悩んだものの僕は了承し、その準備に取り掛かった。
 映画公開まであと1ヶ月余り…僕は緊急役員会議の壇上に立っていた。
「…それでは決を摂りたいと思いますので皆様投票箱に…」
 結果は満場一致、祖父の遺言との事もあり、最初の反対派も筆頭株主である祖母と両親の時にお世話になった顧問弁護士が後見人となる条件で賛同を得る事が出来た。あとは…名義変更と各種届け出、そして今の会社、つまりメガプロのカタをつけねばならない。
 
 会社には病欠と届け出ておいたので数日なら自由がきく。その数日である程度形にしておかなくては…。幸いにして名義変更の届け出の書類などはスムーズに受理され、名実共に大東亜興業の社長となれた。あとはタイミングの問題…。
 
 
 最近の彩乃は以前の様な暗く疲れた表情をしなくなったらしい。それどころかイキイキと積極的に仕事をこなしてレコーディングも完了、既に生産に入っているとの事。だから僕も彩乃の為に…。
 
「桂…木…君?」
 槙備芹亜…何故いつもこう嫌なタイミングでこの女性と出くわすんだろう…。
「何故最近姿を見せない貴方が此処に居るの?」
「あ、スミマセン…実は今から病院へ行くところなんですよ…」
「病院…?何処か悪いのかしら、見た目いつもと変わらないようだけど…」
 相変わらず鋭いな…、だからこの女性は苦手なんだ。アイドルより参謀向きなんじゃ無いだろうか。
「そう、でも今貴方が見るべきは自分の体じゃ無くて彼女なのでは?大変な時に支えてあげなくてどうするの」
 芹亜の言葉はいつも僕の心に突き刺さる。僕よりも長く業界にいて多く知っているだけじゃない何かがある。
 心に過ぎる一抹の不安、僕は泉堂プロデューサーの控室へと向かった。
「・・・ッ!?」
 ドアをノックしようとした瞬間、微かに聴こえてくる居るべき以外の人の声。
「…まさか」
 ソッとドアを細く開けて中を覗き込むと…。
「アッ…アアッ…ンン…ハァ…」
 彩乃だ…机に突っ伏した彩乃が泉堂に後ろから犯されていた。
(何故だ…?予定ではこの時間インタビューを受けている筈、しかも場所はこことは真逆の方向… つまり彩乃自身がここに来た?まさか…いや、しかし…)
 いくら考えても違和感が拭えず、全てが最悪な結果を導く。そして何より彩乃の目は強姦され凌辱に苦しむものでは無く、性欲に溺れ快楽を貪る雌そのものだ。
(……彩乃)
 最期の望みをかけて携帯を鳴らす。
~♪~♪~♪
「ぁん…ん…祐く…ん…」
(出てくれ…そして僕の名を呼んで助けを…)
 携帯を手に取り、そして……
 
ピッ…
 
 ……切った。
「んあ…あ…後で…掛け直せば…あっ…ああ…イイ…」

(・・・・・)
 その瞬間僕と彩乃を繋ぐ何かが切れた気がした。
 最早決定的だった、僕が見たのは疑い様の無い残酷な現実だった。
(・・・・・)
 僕は音をたてないようにゆっくりと立ち上がり、その場をあとにした。そしてビルを出たと同時に電話を掛ける。
 
「モシモシ、桂木です。実は調べて貰いたい事が…ええ、その試写会の……お願いします」
 流石は祖父が仕切っていた会社だった。僅か数分の後、メールが送り返されてきた。そこには会場の場所だけで無く、日時や参加予定社とその連絡先、設営する業者と会場の見取り図まで添付されていた。改めて祖父の力に驚かされる、コチラが全てを話さずとも望む情報が全部手に入った。
 見取り図を基に必要器材を揃えて貰い、ネットワークに詳しい数名のスタッフと共に設営業者に臨時のバイトとして潜り込むのにも成功した。次は…。
 
 
 試写会1週間前…僕は所属事務所の社長室を訪ねていた。
「…という訳で申し訳在りませんが…」
「そうですか…大東亜の社葬の際に君を…いえ、貴方をお見掛けしたので疑問には思っていたのですが…。正社員への登用の話も出ていたので当社としては大変残念です」
 これまでの社長と照らし合わせると零れそうな笑みを堪え難い程の豹変だった。改めて力関係の凄さを理解した。
「で…では…早速引き継ぎの者を…」
「その事なんですが…」
 引き継ぎの必要が無い事に頭を傾げていたが、そんな事は関係無かった。
「…これで下準備は完了…っと」
 日時設定をしたFAX機にある文章が書かれた用紙を読み込ませる。
「…これでヨシ!」
 あとは当日まで普段通りに過ごせば良い。
 
「嗚呼~祐くん、心配したんだからねっ!」
 久し振りに会った彩乃はいつもと変わらず、いや上機嫌で接してきた。不思議なものだ…そんな彩乃を見ても何も感じない。お陰で僕も普通にこれまで通りのマネージャーを演じられる。
「アハハ、ゴメンな。ちょっと色々言い難い状態でさ…」
 どうやらまだ彩乃には既に僕が退社している事は知らされていないようだ。尤もそうじゃなきゃ困るけど…。
 
 
 収録を終えた帰り道、打ち上げパーティーで誰かの悪戯で僅かにリキュール酒を混ぜられたジュースに酔った彩乃は殊更僕に甘えていた。腕にしがみついていないとフラフラとして歩き辛そうだ。
「飲み物買って来るからちょっとここで休んでてくれ」
 このベンチはあの日彩乃と初めてキスして、二人の未来を夢見た場所。大切な想い出の場所だった。
11/08/28 20:56 (bJ08OrI5)
3
投稿者: たんたんタヌキの○○
「ホラよ…」
「ん…有難う」
 あの時と同じ場所、同じ缶コーヒーとジュース、そして同じ星が瞬く空…。何もかもが同じだ、たった一ツを除いて…。
「…祐…くん」
 抱き締めた僕の腕のYシャツの袖を引っ張るとそっと目を閉じた。
「・・・」
「……どう…したの?」
 触れられ無い唇に彩乃が不安気に見上げてくる。
コツン…
「痛…ッ、もう何するのよ祐くん?」
 不意打ちでデコピンを喰らった彩乃は額を擦り、口を尖らせている。
「馬~鹿、今お前は一番大事な時期なんだ。スキャンダルのネタは避けなきゃならない、少しは自重しろ」
「……あ…うん…そう…だね」
 フ…と視線を落とす。その複雑な表情は何に対してなのだろうか…。もっともソレが何であれ今の僕には何の価値も無かったのだが…。
「さぁ、もう帰ろう。明日も忙しいよ」
「……ウ…ン」
 
 
 それからの5日間、彩乃と共に笑い、叱責し、激励し、慰めた。そんな僕と彩乃の時間はどんな三流作家でも書かない様なごく平凡な茶番劇にすら思えたのだった。
 
「・・・・・」
 ここの処、帰宅してからの僕は何をするでも無く、放送が終了した砂嵐の様なテレビ画面をただ見詰める夜が続いていた。いや…この1ヶ月僕の見ていた全てが同じだったのかもしれない。
 
 
―試写会前日―
「皆様、本日はお忙しい中、誠に有難うございます。私は未だ祖父の足元にすら及ばぬ未熟な若輩者ではございますが…」
 大東亜興業の新社長として正式に僕は関係者の前に立っていた。責任者が決まり安堵する者、この機会にと野心を抱く者、あくまで自分の立場を知る者、その目が語っている。これが祖父が僕を指名した理由か…。
 こんな事が出来るなら彩乃をは…、いや今の僕の使命はそんな小さな事じゃない。この大東亜興業に災いとなるものを排除する事だ。
 
 
「社長、例の件ですが…」
 お披露目のパーティーも一段落着いた時、特別班から報告が入った。準備万端全てが滞り無く完了、あとは当日を迎えるだけだ。
 
ピ…ピ…ピ…
「あ…彩乃?夜にゴメン…実はちょっと会社でトラブったらしくて明日は先に行っててくれないか?ああ、現地集合って事で…。早く寝ろよ、折角の大舞台に目の下に隈作ったむくみ顔なんて見せられないだろ?…ああ、僕も"愉しみ"にしてる。……じゃあ…な」
 
ピ…
 
「おやすみ…良い夢を…」
 
 
―公開記念特別試写会 当日―
 
 会場は多くの彩乃のファンとマスコミ関係者で溢れていた。このチケットを入手する為、応募券付きの1stシングルCDは記録的な売上げを見せ、彩乃が国民的なアイドルとなった証明でもあった。
 
「おかしいな…祐くんまだなのかな…?」
 関係者以外立入禁止のバックヤードで各方面に挨拶をしながら未だ姿の見えないマネージャーを捜していた。
「あ、彩乃ちゃん。いよいよだね。緊張してる?」
「あ、お早うございます。今日は宜しくお願いします」
 
 すれ違うスタッフに頭を下げながらも目は人混みを追っていた。動ける範囲は全て捜し、携帯にかけても繋がる事はなかった。
「…ここが最期…」
 貼紙にはプロデューサーの名前が書かれている控室の扉、この奥にあの男がいる。

コンコンコン…
「お早うございま~す」
 ある種の緊張が走る。
「オゥ、来たか。ン~?ボウズはどうした?」
「そ…それが…」
 
 
 簡単に状況を説明すると静かにうなだれた。
「だがお前独りってのは都合が良いな。ちょっとコッチに来な」
 そう言うと彩乃の腕を掴み、強引に引き寄せた。
「あ…でも時間が…メイクも…」
 言葉は拒絶しても身体は疼き始めていた。
「ン…ンン…」
 四つん這いになり、片膝で包まった下着、白い尻を突き上げた姿で後ろから無粋に捩込まれた肉棒を受け入れている。思わず漏れそうになる喘ぎ声をスカートの裾を咥える事で堪えていた。
「ククク…馬鹿みたいに金出して何枚もCDを買ってまで集まった野郎共が後ろから突かれてケツ振ってるお前を見たらどう思うかな?」
 下卑た笑みを浮かべ欲望の白濁液を彩乃の腟内にぶちまけた。
「ァ…アアアーーッ!!」
 口許から涎を垂らし、グッタリと横たわる彩乃。白濁の零れる秘裂と菊門に冷たい感触が侵入してきた。
「な…何を…」
「プレゼントさ…ちゃんと着けて出るんだぞ」
 無機質な機械音は低い羽音をたて彩乃の股間を凌辱する。
「そ…そんな…」
コンコンコン…
「そろそろお願いします」
 彩乃の抗議は呼びに来たADによって遮られてしまった。
「さぁ、行くぞ」
「ハ…ハイ…」
 
 
 
「本日は当試写会にお集まり頂き有難うございます」
 MCの言葉により始まった試写会、もう逃げ場は無かった。
(ク…ゥゥ…)
 容赦無く襲いくる快楽に堪え、どうにか営業スマイルを絶やさぬ様努力している彩乃の横でプロデューサーはいつもの自信タップリな態度でレポーターの質問に応え、彩乃を褒めちぎる。
「大丈夫?彩乃ちゃん、調子悪そうだけど…」
 共演者の一人が声を掛けてきた。原因は勿論、彩乃の股間でうねっている2本のバイブレーターだった。泉堂は話しながらリモコンを操作し、羞恥と快楽に堪える彩乃の様子を見て愉しんでいたのだった。
「だ…大丈夫です。こんな大舞台初めてで緊張しちゃって…」
「そう…だったら良いけど…」
 僅かに頬を染め、小刻みに震える彩乃の言葉を鵜呑みにしたようだ。
 
 
 ひと仕切り泉堂プロデューサーの雄弁を聞き終えると一人のレポーターが彩乃に質問を投げ掛けた。
「スミマセン、所属していた事務所から独立してまでこの映画に挑んだ覚悟と理由をお聞かせ願えますか?」
 
 
「・・・エッ?」
 
 寝耳に水だった。自分はそんな事は一言も言ってないし、話も聞いていない。言葉を失い呆然とする彩乃にレポーターは一枚の紙切れを突き付けた。
「今朝、このFAXが全てのマスコミ各社に送られてきたんですよ。彩乃さんのサイン入りでね」

 その紙切れにはこう綴られていた。
【拝啓 マスコミ各社様
 
この度、私 水無月彩乃は一身上の都合により所属事務所から独立し、泉堂氏プロデュースの下、芸能活動を続けていく事になりました事をご報告申し上げます。
  ―水無月 彩乃―】
 
 
「そ…そんな…」
 彩乃には全く身に覚えの無い事だった。しかし1stアルバムがいきなりのランクインし、主演映画発表当日による電撃退社発表の販促手段はマスコミが喰い付くには充分過ぎるインパクトだった。
 
 戸惑う彩乃から注目を逸らす為、泉堂がMCに指示を出す。
「エ…エ…ッと、それでは質問はこれまでとし、お楽しみの映画をご覧頂きたいと思います」
 
 
―同時刻―
 
 上映会場からかなり離れた駅前のベンチに祐也が座っていた。
「そろそろかな…」
 何かを映し出しているスマートフォンを眺めていると後ろから声を掛けられた。
「アラ?桂木君じゃない。どうしたのこんな所で。確か今日は大切な彩乃ちゃんの試写会なのにマネージャーがサボってるなんて感心しないわね」
 声の主は芹亜だった。
「そう言う芹亜さんこそどうしたんですか?」
「私は久々に貰えたオフを満喫中よ。そうだ、良かったらお茶しない?この私が誘ってあげるんだから光栄に思いなさい」
「アハハ、喜んで…」
 祐也は少しだけスマートフォンを操作するとポケットに仕舞い込んだ。
11/08/28 20:58 (bJ08OrI5)
4
投稿者: たんたんタヌキの○○
―試写会会場―
 
「ど…どういう事だ…?」
 3分程映像が流れた後、突然全く違う台詞が流れ出した。顔面が蒼白になる彩乃と額に脂汗を流す泉堂。場内は騒然としていた。

『い…イヤ…ヤメテください』
『大人しくしろよ!俺に逆らったらどうなるかは想像がつくだろう?』

 それは彩乃が初めて泉堂に犯された時の会話だった。場内の誰もが声の主に気付き始めている。
「バカヤロウ!早く映写室に行って止めてきやがれ」
 固まっているMCの胸倉を掴み突き飛ばす。
「だ…駄目です。鍵が開きません…ていうか中に誰もいません!」
 映写室の近くに居たスタッフが何度もドアノブを引っ張るってみたがまるでビクともしない。
 詰め寄る報道陣と右往左往するスタッフに彩乃が突き飛ばされる。
「キャアッ!?」
 
 
「マネージャーを辞めた?」
 ホテルのラウンジの片隅で芹亜が驚きの声をあげる。
「ハァ…実は先日祖父が亡くなり、僕が跡を継ぐ事になりまして…」
 淋しそうにグラスを傾ける祐也、その微笑みは何処か自虐的に見える。
「でも、アイドルになりたいという彼女の夢を叶える為にマネージャーをしてたんでしょ?そんな簡単に諦められるの?彼女はこれからなのよ、そんな大事な時期に貴方が支え無くてどうするの。ましてやあの泉堂が彼女を狙っているのに…」
 芹亜は祐也に対し、僅かに苛立っている様だ。いつものクールさが無く、言葉尻が荒い。
「芹亜さん、何故"星"は輝いてると思います?星にはね2種類あるんですよ。自身が光を放ち輝くものと、他の光を反射して輝いて見えるだけのもの…」
「ちょっ…、それはどういう…」 

「彩乃は事務所から離脱しました。つまり彼女は僕より泉堂さんを選んだって事ですよ」
 芹亜は祐也と彩乃が恋人同士だと知る数少ない人間の一人。それだけで何があったか全てを悟ったのだろう。それ以上言葉を継がなかった。
「彩乃はアイドルになり、夢が叶った。僕の役目は終わったんですよ、そう彼女は終わったんです…」
 そう言って祐也は傍らに置いてあった微かに騒がしい音を漏らすスマートフォンを触った。
 
 
「・・・」
 一方、試写会会場は静かだった。先程までの騒乱が嘘のようにその場に居た全員がある一点に集中している。
ゥィィン…
 尻餅をつき捲れたスカート、M字に開かれた彩乃の脚の付け根に蠢く物体に…。
「イ…イヤァーーーッ!!」
 一斉にたき続けられるフラッシュと場内に響き渡る彩乃の叫び声。咄嗟に裾を押さえ込んだが秘裂から溢れる淫水に濡れた内腿は先程までの音声の信憑性を増させる。
「ち…違う、それはその女が…」
 泉堂が保身の台詞を吐こうとした瞬間、スクリーンにある映像が映し出された。
 
 
 立ち上がった祐也の顔を見上げた瞬間、芹亜は言葉を失った。そこには彼女を犯された怒りも、別れた悲しみも無い。
「そうだ…折角だからコレ…」
 そう言うと胸ポケットから取り出した黒いケースの中の1枚の紙を芹亜に手渡した。
「な…何よコレ…」
 その名刺にはこう印字されている。
 
《大東亜興業株式会社 代表取締役 桂木 祐也》
「こ…これは…?」
 それは業界トップ、つまり芹亜が所属する事務所より遥か上位の芸能事務所の名刺だった。
「緊急役員会議でも満場一致でご賛同戴けました。まだまだ頼りないですが、今後とも宜しく」
 
 
「ン…ンン…」
 スクリーンには二人の男女、捲れた裾から見える白いお尻は誰もが何をしているか、そしてその服装から誰なのかを容易に理解させた。
 
『ククク…馬鹿みたいに金出して何枚もCDを買ってまで集まった野郎共が後ろから突かれてケツ振ってるお前を見たらどう思うかな?』
『ァ…アアアーーッ!!』
『な…何を…』
『プレゼントさ…ちゃんと着けて出るんだぞ』
 
 それは開演前の控室での映像。
「ウ…ウワァァァーーーッ!!」
 知りたくなかった事実を確定されたファンが暴徒と化して押し寄せる。最早警備員だけでは手に負えず、関係者全員を奥の控室に誘導した。
「どうにかなんねぇのかよ、この役立たず共ッ!」
 泉堂の怒声が響く。
「無理ですよ!芸能関係者だけなら圧力をかけて口封じ出来ますが…生放送じゃ無かっただけでも…」
「ディレクター!大変です、一連の全てが動画サイトに生中継されてます。それどころか物凄い勢いでネット上に書き込みが…」
 
 
 駆け付けた警察官や機動隊により暴徒と化したファン達を抑え込み鎮静化させられたが、隙を突いて抜け出したレポーター達が控室のドアを叩き、叫んでいる。
「彩乃ちゃん、出て来きて詳しく聴かせてくれ!ていうか出て来い!」
「泉堂さん、どういう事ですか!?」

ドンドンッ!!
ドンドンッ!!
 最早何が起きたかなど判断もつかず、彩乃は部屋の隅で怯え震えている。
「怖い…助けて…助けて祐くん…」
 身体を小さく丸め、大粒の涙を流しながら彼氏(だった者)の名を呼び続けている。
♪♪♪♪~
 まるで呼応する様に専用着信音が流れる携帯を荒らす様に鞄から取り出した。
「ゆ…祐くん助けて!助けて!助け…」
 通話ボタンを押して必死に叫ぶが無情にも返事は無い。ただ無機質にメールの到着を知らせるだけだった。
「………ぁ」
『サヨナラ』
 液晶画面に表示されたたった4文字が全てを語り、彩乃の中でギリギリ残っていた何かを途切れさせた。
 ある意味正気に戻ったと言っていい。正気に戻ったからこそ、鏡に映った自分、その事実に堪えられなかった…。
 ボサボサになった髪と乱れた衣装、そしてボトボトと抜け落ちたバイブが床でうねり、ポッカリとあいた穴から零れる精液が太股を伝い流れる。これが憧れたアイドルの姿?

「ぅ…ゥウ…イヤァァァーーーッ!!」
 信じられない程に大きな慟哭をあげた後、崩れる様に倒れ込み放心した彩乃がブツブツと呟きながら歩き始める。

カチャ…
「あ…彩乃ちゃん、話を聴か…せ…」
 扉を開けて出て来た彩乃の異様な雰囲気に気圧されレポーター達は退くように道をあけた。
「・・・・」
 フラフラとまるで夢遊病患者の様に歩く彩乃、その瞳には全く生気が無かった…。
「祐く…ん何処ぉ?何処にいるのぉ…?」 
 

「畜生、何処のどいつかは知らねぇがよくもやりやがったな」
 混乱に乗じて一人逃げ出した泉堂。自分以外は欲望を満たす為の単なる道具としか考えていない。冷静になった所で思い当たる節が多過ぎる泉堂に首謀者が特定出来はしないだろう。
 
―翌日―
 大手の報道各社は今回のスキャンダルには触れていない。…が、その代わり映画の話題も報じられる事は無かった。しかしいずれゴシップ誌のようにプロデューサーと新人アイドルの醜聞を書かざるをえないだろう。既にネット上では凄まじい勢いでスレッドが立ち上がり、削除していくプロパイダーの作業も焼け石に水、それどころかその必死さが事の信憑性を物語っている。
 芸能事務所各社は泉堂と関係を持っていた人物を秘密裏に抹消して存続を謀り、芸能人は電撃入籍などで誤魔化していく。
 
 
「ゥゥ…畜生…」
 あの日から1ヶ月が経ち、一大スキャンダルは新たなニュースに上書きされ人々の関心は薄らいでいった。だが泉堂は業界から追放され職も影響力も失っていた。
 結局映画は公開されず、多額の負債は原因である泉堂に賠償金と共にのしかかってきた。全資産は凍結され手持ち金も底をつき始めている。
 馴染みの店も門前払い、かつて自身がそうしてきた様にADにすらゴミの様にに扱われる始末だった。
 泉堂が最後に訪れた場所、それは以前ゴタ消しに使っていた闇の巣窟だった。
 
「確かに泉堂さんにはお世話になりましたし、コチラとしても出来る限り恩返しをしたい所です…」
 業界にいる限り直接では無くとも少なからずこういった組織に係わりがでてしまう。
 身なりこそ高級ブランドでピシッとしているものの近寄り難いオーラを纏っている。そして愛想のよい笑顔に隠された眼は決して笑っていない。
「そ…それじゃあ…」
11/08/28 20:59 (bJ08OrI5)
5
投稿者: たんたんタヌキの○○
身を乗り出して喜びをあらわにする泉堂の言葉をNo.2の男が遮る。
「泉堂さんももうご存知でしょうが大東亜の社長さんが亡くなったんでウチも僭越ながら花を贈らせて戴きまして…あ、おかわり如何です?」
 余程コーヒーに拘りがあるのか自分で豆から挽いていた。
「そう言えば…あの一件の小娘のマネージャー、何て名前でしたっけ?その葬儀の席で彼に会いましてね…」
「・・・?」
 このサングラスをかけた細身の男のが何を言いたいのか理解出来ないようだ。
「恋人同士だったんですってね、いやお可哀相に。彼女には光るものがあったし、彼にも何かを感じてたんですよ。私なんて恥ずかしながらCD買い込んじゃいましてね…」
 業界最大手の社長と弱小事務所の新人アイドルと成り立てマネージャー、あまりの場違いだ。
「だから何だって…」
 泉堂の苛立ちを他所にのらりくらりと世間話を続ける。
「いやぁ、驚きましたよ。新社長に就任したのがまだ20歳そこそこの坊ちゃんってんだから、信じられます?」
 ここでやっと1本の糸が繋がっている事に気付き、泉堂の背中に冷たいものが流れる。
「そのマネージャーの彼、亡くなった社長のお孫さんだったそうですよ…」
 業界最大手の社長となればその影響力は泉堂の比では無い。権力を存分に奮ってきたからこそ、その事に恐怖した。

バシャ…
「ぎ…熱ぃ…」
 笑顔で淹れたてのコーヒーを泉堂の頭に零す。
「私等が言うのも何ですが…この世には決して触れちゃいけないタブーとかがあるんですよ。貴方はまさにソレに手を出してしまった。解りますよね?禁を破って自爆の上、全てを失ったオッサンと強大な力を手に入れた若者、どちらにつくべきか…」
 のた打ち回る泉堂の髪を鷲掴みにし、強引に引き上げる。
「今、貴方がこうして無事に私共と話せているのもお優しい若社長さんのお陰なんですよ、解ります?泉堂サン…」
 
 男は組事務所の裏口から文字通り叩き出した泉堂にこう告げた。
「まぁ、世の中には血の気の多い若者もいますし、貴方の慰み物にされたアイドルのファンだった奴らが襲って来ないとも限りません。昔のよしみでウチの若い衆が近くに居ると思いますんで…」
 そう言い残し扉は閉じられた。もう泉堂に安住の地は無い。ホテルでの密会を続けていた為、数ヶ月帰っていなかった家も資産凍結で入れなかった。何も持ち出せず、入手出来たのは1枚の封筒。中身は妻からの手紙と離婚届出証、日付は件の1週間前だった…。
 公園のベンチで身体を丸めて眠り、ゴミ箱を漁って空腹を満たす。その姿はかつて祐也に吐き捨てた[負け犬]そのものだった。

 
「ああなるとかつて業界で畏れられた悪徳プロデューサーも惨めなものですね、見る陰もありませんや」
「そうだな…その点、大東亜の若社長は恐ろしいよ。役目の為とあらば恋人を犯した男にも頭を下げ、裏切り者は愛した女だろうと容赦無く潰す…案外コッチの方が向いてるかもしれないなぁ、あの御仁は…」
 
 
「ハァ…ハァ…」
 泥だらけの服に腫れ上がった顔、口許からは血が滲んでいる。
 浮浪者狩りにあった泉堂は数名の若者に袋叩きにあい、這う這うの体で路地裏に逃げ込んでいた。
 腕力には自信のあった泉堂だが、連日の逃亡生活と空腹が力と気概を奪っていた為、一方的に嬲り者にされていた。少し離れた場所に見覚えのある2名が居たがニヤニヤと笑うだけで助けようとする気配は無い。そこで初めて泉堂はNo.2の男の言葉の真意を理解した。下手な気を起こせば直ぐに始末出来るよう監視しているのだと…。かつて我が物顔で奮っていたその業界の闇の恐怖を…。
 
「畜生…畜生…」
 這い擦る泉堂の視界に女物の靴が映り、見上げると彩乃が立っていた。
(そうだ、まだこの女が居た、自分の性奴隷となり、恋人を捨てた女。天はまだ俺を見放していねぇ…。コイツをAVに売れば暫くは…)
 泉堂は彩乃に襲い掛かると一気に下着を引き下ろす。前戯も無く秘裂に熱り立った肉棒を捩込むとその欲望のままに打ち続けた。
「ハァ…ハァ…どうだ久し振りの俺様の味はぁ?どうだ、嬉しいだろう!?」
 狭い路地の最奥で壁に背中を預けた彩乃を突き上げまくる。相手を思いやるつもりも無い泉堂は彩乃が喘ぎ声すら漏らしていない事に気付かない。
「…ないの……くん、居ない…」
「ハァ?何がどうしたってぇ…」
 彩乃が漏らした声を聞き返す。
「何処にも居ないの…祐くん」
「クッ…何言ってやがる。お前は恋人より俺様を選び、あの男は裏切ったお前を見捨てたんだ。今更そんな男の名前を呼ぶんじゃねぇよ」
 泉堂の溜まりに溜まった欲望は出口を求め暴れ始めている。
「貴方…貴方さえ居なければ祐くんは…」
 
ドシュ…
 
「……ッ!?」
 彩乃の膣内に凌辱の証を吐き出すと同時に脇腹に疾る鈍い激痛。思わず突き飛ばすように離れると肋骨の辺りからジワリと赤い染みが拡がっていく。
「テメェ…何しやが…」
 崩れ落ちるように膝をついて倒れ込む泉堂に目もくれず、フラフラと彩乃は歩き始めた。
「祐くん…何処…?」
「ま…待て…助け…だ…誰か…」
 薄暗い路地裏の奥、掠れた声は都会の雑踏と突然降り始めた雨音に飲み込まれ、やがて泉堂はピクリとも動かなくなった。
「な…何アレ…?」
 降りしきる雨の中、髪も着衣も乱れた少女が傘もささずにユラリと歩いている。頬と胸元は赤い飛沫に染まり、右手に握られたナイフからは血が滴っている。その姿の異様さに人々はズザっと道を空けていく。
「お…おい、あの女見覚え無いか?」
「待てよ、アイツ…失踪中の水無月彩乃に似てないか…?」
 
 誰も皆、携帯を取り出してはいるが警察を呼ぶ者はいない。ただひたすらにメモリー残量を減らしていくだけだった。
「や…ヤベェよ…マジ目がイッてやがる」
 拘わるな…そう本能が告げるように誰もが彩乃の背中を見送るように固まっていた。
 
 
「祐くん…」
 いつしか彩乃は試写会が行われた会場のあるビルに辿り着いていた。
 本来居る筈の守衛も鍵も架けられてはおらず、彩乃は容易に入り込み階段を登って行った。
 何かに導かれるように一歩ずつ…やがて屋上に辿り着いた頃には雨もあがり空には星が瞬き始めていた。
 
カラーン…カラーン…
「やっと…見付けた…」
 手から滑り落ちたナイフが階段を転げ落ちていく。
「ゴメン…ゴメンね…もう離れない…ずっと傍に居るから…私を…抱きし…」
 
 
「アレ…?」
「どうされました社長?」
 大東亜興業の社長室、その大きな椅子には少々馴染まない青年が座っていた。
「ウン…ちょっと音楽プレイヤーの調子が…」
 彼の趣味なのか高価な調度品は一切無い質素な部屋。機能性重視と言えば聴こえは良いが少々色気に欠ける。
「先日お伝えしましたメガプロの件、如何なさいますか?」
 あの試写会から芸能界はひとつの転機を迎えていた。かなりの数の売れ筋アーティストが姿を消し、その隙間を狙って各社の売り込み合戦が激化していた。
「ハァ…ヤレヤレまたかぁ。一度はお世話になった古巣とはいえ、未だ旧態然としたのってなぁ…」
「社長が業界を学ばれた会社でしたね…」
 溜め息を吐くスーツに身を固めた女性、かつて人気アイドルとして頂点に君臨していた芹亜だった。祐也が新社長に就任してすぐ、白紙に戻った関係を持とうと所属事務所から送り込まれて来たのだった。所謂"お土産"というやつだ。
「あの時は大変でしたね…当然と言えば当然ですが、手を出されなかったんですもの。で、私が引退すると言った時の事務所長の顔ったら…」
「僕も驚いたよ、芹亜さんが『私は流れ星になりました』と言ってもう一度やって来きたんだから」 
 
 絶頂期だからこそ辞めた。あとは落ちるだけだし、トップアイドルを枕営業に使う様な事務所にも愛想が尽きたからとも笑っていた。
「でも内心はそんなに魅力無いのかな…?と落ち込みましたけどね」
 笑い合う二人、壊れた音楽プレイヤーの告げる意味も知らずに…。
 
 
 
ヒュー…
ドシャッ!!
 
「な…何だ?何か墜ちてきたぞ…」
「キャーーーッ!?」
 アスファルトに拡がっていく赤い血溜まり…。虚像の世界に憧れ、夢を叶えかけた少女が掴もうとした物。それは月の光に映し出された恋人の幻覚。少しでも近付こうと手を伸ばした瞬間、足はその支えを失った。
 
「ゆ…祐…く……」
 限りなく頂点に近付いた少女はその最期まで何かに手を伸ばしていた。
 
 
 再びヘッドホンを耳に装着するとノートパソコンに向かいあう。新人社長が取り組んでいたのは組織の再編成と改革だった。
「で…お返事はどうされますか?」
 各社が少しでもあやかろうと色々な物を贈って来る。彼にとって一番最悪なのが女の子自身だった。
「会うだけは会ってみるけど…そろそろ潮時かな?」
 そう言って株取引のHPを開き、ある企業の欄をクリックする。そこには件の名前が記されていた。
「全売…っと」
 大東亜興業がメガプロを見限った…そのニュースは瞬く間にネットに拡がり、メガプロの株主達は一斉に売りに転じた。
「今度、オーディションの場を設けてくれないかな?見込みが有りそうな者はウチに入って貰っても良いし、他所に行っても良い。所属タレントは商品であっても道具じゃ無い。ぞんざいに扱う所には消えて貰った方がいいからね」
「それでは早速緊急会議を…スケジュールの調整もせねばなりませんし」
 
パタン…
 ノートパソコンを閉じ、部屋を出る二人。
「そういえばまたアノ曲を聴いてらしたんですか?」
「ああ…初心を忘れない為にね。でもデータが壊れちゃったみたいでちゃんと再生されないんだ、もう一度落し込まないといけないな」
 
 
 社長室に残された消し忘れの音楽プレイヤー。その液晶にはあの1stシングルのタイトル、アーティスト名は水無月 彩乃と表示されていた。

シャカ…シャカ…
 途切れ途切れに再生される楽曲、ヘッドホンから漏れる音が無人の社長室に消える。
 
 
《……ゆ…ん…ゆう…く…》
11/08/28 21:00 (bJ08OrI5)
6
削除済
2011/08/28 21:11:47(*****)
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