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『無題』十七
カテゴリ: 官能小説の館    掲示板名:ノンジャンル 官能小説   
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1:『無題』十七
投稿者: 菊乃 ◆NAWph9Zy3c

ずいぶん涼しくなった。

部屋の中でも、部屋着のワンピースの上に薄いガーデガンをはおっている。





ジャイアンを会社へ送り出し、洗濯と、部屋の掃除もすませて、そろそろお昼だ。




さて、何か作ろうか、と思っていると急にお腹の中で胃が奇妙に飛び跳ねた。



…また、だ。




口を押さえて、トイレに駆け込む。




朝食べたトーストと目玉焼き…おかえりなさい。





済んだ後に口をゆすいだけれど、今一つスッキリしないので、シャワーを浴びた。



食欲はあまりないけれど、何もたべないわけにもいかないので、赤肉のグレープフルーツを適当に切ってお皿に盛り、炭酸水をコップに注いだ。コップの中で、炭酸水の表面がパチパチと、楽しげに弾けている。




そういえば、小さいころ、炭酸水は骨を溶かすと聞いたけれど、あれはほんとうなのだろうか。






食事を終え、お気に入りのCDをかける。

ものが沢山あってごちゃごちゃしている鏡台の上から、ネイルオイルを探す。花びらが入った透明のオイルで、すごく香りがいいのだ。


その小瓶を手に取ろうとした瞬間、はずみで瓶の後ろに置いてあったものが倒れて床に落ちた。

フタが開いて、中のものが覗いている。




落ちたものは、缶だった。フタの部分にばかに大きい熊の人形がついた、えらくファンシーで、可愛らしい缶。




目を閉じて、深呼吸を一つ。



ゆっくりと、その缶を拾い、抱えたまま、ソファに座った。



熊がついたフタをテーブルに置く。

ガラスのテーブルに触れて、カツン、と音がした。



これ を、開けるのは、いつぶりだろう。



CDをかけているはずなのに、何の音も聴こえなくなった。




缶の中には、紙が二枚、入っている。一枚は原稿用紙で、大きくて丁寧な文字が濃いえんぴつで書かれている。

もう一枚は、レポート用紙で、こちらは大人のような、綺麗で読みやすい文字がボールペンで書かれている。


もうどちらの内容も、暗記してしまっていたけれど、実際に、この手書きの文字を見ると、胸の内側、一番深いところがザワザワした。




それからもう一つ、缶の底には、小さな小さな巾着袋が入っている。


巾着袋の中には、さらに小さな指輪。



シルバーの、本当に安っぽい指輪。


あたしの一番大切なひとがくれた、大切な指輪。





鼻がツンとする。目頭がキュンと熱くなる。呼吸が浅くなる。





もう泣いてはいけない。あたしは、強くならなければいけない。





…ああ、でも駄目だ。毒のように、悲しみが、指先まで、身体中にじわじわと広がっていく。




目を閉じて、深呼吸を一つ。



お腹の下の方、そこに、左手をそっと当てる。



そこには小さな幸福が生きている。その幸福は、やがてあたしを満たしてくれるだろう。



それは、あたしを照らす希望の光だ。



誰もが簡単には手にすることができない、光。



一切の光を浴びることなく、暗い灰色しか知らないまま去ってゆく人もいるのだ。



そっと当てた左手の薬指には、小さなダイヤが光っている。


もう、独りじゃ、ない。




優しい気持ちになれた。

微笑むことができた。



中身を缶に戻して、テーブルに置いた。




すっと立ち上がって、窓辺へと歩いた。



窓の外には、秋晴れの、雲一つない美しい青空があった。




2007/08/10 10:49:34(Olsq6SFu)
7
投稿者: ゆう
お盆休みだったかな?
慌てずに執筆してください。
07/08/17 22:22 (3wl8ILGs)
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