2007/10/25 02:13:42
(MTnx1cKe)
私は支倉舞、ある日から魔法が使えることに気づいた。
私には好きな男の子がいた。
初めて会ったのは小学3年生。列の順番でも戦闘にいるほど小さな男の子。
やさしくてからかうと涙目になってとにかくがんばっていた記憶しかない。
クラスの女子の中でも可愛いと人気があった。
私はというと暇さえあれば彼をからかっていた気がする。べただけど彼が
好きだったからいじめてしまったんだと思う。
私を少しでも見て欲しかったのかも知れない。
中学に上がったころ、彼は急に男らしくなった。
サッカー部に入って肩幅が広くなり、身長も直ぐに追い越された。
そのころには小学生時代、彼が小さかったことなど笑い話になっていた。
彼を可愛いとからかっていた女子も日に日に成長していく彼を気に留める
ようになった。
私はそんな彼を遠くから眺めていた。まるで彼を失ってしまったかのよう
な喪失感が私の中に渦巻いていたから。
私は彼と同じ高校に入学した。
そのころになると私の中の喪失感はいっそう強まっていた。彼を遠目に見
ることもできなくなっていた。
「は……ん……」
そうして今も私は小学生の彼を思い浮かべて自らを慰めている。
昔の彼の姿。
彼の涙を浮かべた瞳。
少女のようにはかない子供の彼を。
ゴールデンウィークがあけ、憂鬱な梅雨の季節に差し掛かったある日、私
は計画を実行した。
目の前には彼がいる。彼に私の部屋に来てもらったのだ。
見上げなければならないほどに成長した彼。男性らしい体格の彼。
「用ってなに?」
襟足をクルクルと指に巻きつけながら言う。
出会ったころからの彼の癖。
「ん……」
私は節目がちに視線をそらす。
彼を正視できない。小さかった彼との差異に私はもはや絶望に近い感情を
抱いている。
「別に難しいことじゃないんだけど……お願いがあるの」
気持ちを落ち着かせて彼のあるべき姿を思い浮かべる。
私だけの彼を。
思い出の中の彼を。
小さくて触れたら壊れてしまうような少女の彼を。
「私のものになって欲しいの」
「……は?」
頭の中のスイッチを押した。
彼を私の思い描くホントの姿に変えるスイッチを……。
彼の姿が淡く光った。
そして、私の思い描く本当の彼がそこにいた。
以前投稿した者です。
欠点を指摘していただければ幸いです。