うちの辺りは降ったり止んだりね悪天候なんですが、ちょっと肌寒いこうした天気の時に思い出す話があります。
早めに結婚をし子育てもほとんど済ませたせいか、四十代の頃は自分の好きなように時間を使えるようになっていました。
義理で葬儀に顔を出すことになって、中途半端に遠い地まで訪れたついでに、1人近場の温泉宿に一泊するつもりで出掛けた。
焼香を済ませるとすぐに退散し、観光名所になっているダムに行ってみた。
それくらいしか見物できそうな場所がなかったからだが、民家を改築してやっているレストランは地の新鮮な野菜などを使い、思ったより贅沢な食事で満足したし、雨に煙るダム湖をボンヤリ眺めてるのもなかなか乙だった。
バスに乗らずに予約した宿までタクシーで行ってもいいかと思い、電話ボックスに入ると、タクシー会社のシールやら色々な業者のチラシがはってあったのだが、なぜかテレクラのチラシまであった。
この頃って時間に追われていないせいもあり、自分で慰める機会が増えていた。
だからといって不倫するとかの器量もなく、せいぜいハーレクインロマンスの小説をこっそり読むくらい。
要はそれなりに欲求不満だったのですが、自らの生活圏内からそれた土地にいることがちょっとした冒険心を駆り立てた。
貼ってあるテレクラのフリーダイヤルに掛けてみる気になりました。
電話はすぐに繋がりましたが、最低限の紹介のみですぐに誘ってくる横柄な同年代風の男性だったのでパス。
次はすでにハアハア出来上がっていてろくな反応がないのでこれもパス。
今度似たり寄ったりならやめようとして最後のつもりで話した相手が、自身初の浮気相手になる人でした。
ですが、こんな場ではないと言えないような若い男の子で、まだ18才の未成年でした。
私はこんな若い男の客もいるのだなあと感心しながらも、繋がったのがお母さんくらいの女でごめんなさいと詫びました。
でも、彼はとんでもないと言い、むしろ私くらいの相手を求めて掛けてきているから嬉しいくらいですなんて言うから、最初は社交辞令かと思いました。優しそうな雰囲気のある話し方をする子でしたから。
そしたら、満更嘘でもないらしく、同年代のちょっと高飛車な女の子達より、母性愛のある優しい熟女系が好きなのだと言う。
本当にそうなら、こんな嬉しい事を言ってくれる相手に当たってついてると思いました。
こそばゆい感じはしながらも、彼に対する興味がぐんぐん沸いてきました。
そんなこんな話してるうちにそろそろ終了時間になると言う。
こちらはフリーダイヤルだけど男性は違いますからね。
私はこのまま切れてしまうのを残念だと思ってました。
そしたら、彼がタクシー代わりに行きましょうか?と、尋ねてきた。
あらかたこちらに来ている話や、今の現状を話してましたから、どうせ退出したら帰るだけだし、今日は車で来ているから40分ほどでこちらに来れると言う。
私はこの提案を断ったら後悔する気がした。
もし、生理的にダメな子が来てもタクシー代を払ってあげれば向こうも損にはならないだろう。
(あわよくば淫らな一夜を共にできたらと考えなかったと言えば嘘になりますね)
私は資料館の裏の庇がついてる休憩所に要ると伝えました。
彼は大学生でした。
高校時代より時間が自由になるため、たまたま連れられて行ったテレクラを利用するようになったらしい。
戦果はともかく、やはり見知らぬ相手との出会いを求めるドキドキ感が楽しいそうだ。
私もにわかに落ち着かない気持ちで待っていた。
仮にすっぽかされても別に困る訳ではない。
そう自分に言い聞かせて待つこと35分。
それらしき男の子が歩いて来るのが見えた。
大まかな格好は聞いていたから間違いないだろう。
ちょっと照れながらも話しかけてきた彼。
私は待ってたかいがあったと思いました。
私はまだ黒のフォーマルスーツのままだったんですが、彼はそれをいたく褒めてくれました。
シックで色気のある女性が最も惹かれると言ってくれました。
私もカジュアルながらも清潔感のある彼に好感を持ちました。
私みたいなオバチャンじゃなくても、その気にぬれば普通に恋人くらい作れそうです。
私達はお互いにガッカリすることのない出会いに成功した訳ですから、あとは成るように成るだけでした…