2016年3月14日
朝から空は薄曇りで、肌寒さの残る春の川崎駅に、私は少し早めに到着していた
ホワイトデーということもあり、駅前の花屋やスイーツ店には人が集まり、どこか街全体が甘い雰囲気に包まれているようだった
淡い期待を抱きながら、その日もまた、いつものように募集スレをひとつ上げた
「どうせ、誰も見てないよな」
そんなふうに卑下することで自分を納得させる
まるで悲劇のヒーロー気取りだ
諦めるための投稿──そう思おうとしながらも、
心のどこかでは、誰かが見つけてくれることを、やっぱり祈っている
出会いなんて、宝くじのようなものだ
買わなければ当たらない
だが、買ったところで当たるとも限らない
それでも、人は買う
愚かだと思いながらも希望を捨てきれない
──哀しいかな、それが男の性というものだ
投稿しては、音沙汰もないまま沈んでいくスレ
期待しなければ失望もしないと分かっていても、心は勝手に動いてしまう
そうして、投稿閲覧がゼロで終わることもある
結局、投稿そのものが、モヤモヤの原因であることに気づいていながら
それでも、懲りずにまた投稿するのだろう
もしかしたら、万が一にも、奇跡的に、あるいは偶然にでも何かが起きるかもしれない、などという、根拠のない期待を抱えて
だが──その日は違った。
投稿して間もなく、ひとつの通知が届いた
まるで歯車が噛み合ったように
あるいは、神様の気まぐれか、いたずらか
画面に表示されたメッセージの送り主は、都内在住の看護師さん
文面は短く、けれど丁寧で、どこか落ち着いた気配を感じさせた
飾り気のないやりとりの中に、真っ直ぐな誠実さが滲んでいた
「この方なら、きっと安心してお会いできる」
そう思わせるような、何かがあった
何かが違った
偶然か、奇跡か、それとも──運命か
だから、出会い系はやめられないのだ
期待を裏切られる日々の中に、
こんな風に、たった一度でも、
当たることのある宝くじ
──
そして15時
改札前で出会った彼女は、想像を遥かに超えていた
『……こんにちは。待たせちゃいましたか?』
白いロングコートに身を包み、やや伏し目がちに微笑むその姿は、まさに“清楚”という言葉がぴたりと当てはまる
知花くららを思わせる涼やかな顔立ちと、細く通った首筋。声は少し掠れていて、それが妙に耳に残る
『すごく……緊張しちゃってて、お酒の力借りないと』
彼女はそう言って小さく笑いながら、コンビニで缶チューハイを一本手にした
私はお茶を選び、二人でホテルまでの道を並んで歩く
すぐ横にいるというだけで、手のひらがじんわりと汗ばんでくる
チェックインを済ませ、部屋に入ると彼女はコートを静かに脱ぎ、荷物をソファに置いた
『先、シャワー……お借りしてもいいですか?』
遠慮がちにそう言い、バスルームへと消えていく後ろ姿は、自然と視線を惹きつけた
数分後、湯気とともに戻ってきた彼女は、バスローブをふわりと纏っていた
前は緩く結ばれ、胸元がわずかに開いている
柔らかいボディソープの香りが漂い、肌は白磁のように滑らかで、ところどころに蒸気の熱が残ってうっすらと桃色に染まっていた
『なんか……恥ずかしいですね、こうして会ったばかりなのに』
彼女はそう言いながら、照れ笑いを浮かべる
私はオイルを手に取り、彼女をベッドにうつ伏せにさせた
まずは首筋から肩にかけて、優しく指を滑らせていく
『……んっ……くすぐったい、けど……気持ちいい……』
最初はくすぐったそうに肩をすくめていた彼女も、やがて緩やかに呼吸を整え、声を漏らしはじめる
肩甲骨の内側、背骨に沿って下へ。肋骨の際をなぞるようにオイルを広げていくと、彼女の身体が少しずつ熱を帯びてゆく
『そこ……あ……すごく……、効く……」
吐息は湿り気を帯び、やがて腰のあたりを撫でると、小さな呻きが漏れた
『ふぁ……あ、ああ……そこ、だめ……いやらしい感じ、する……』
バスローブの裾がずり上がり、下着の端が覗く
私はあえてその上から指先でなぞる。微細な震えが腰に伝わる
『っ……んん……お願い、そんなふうにされたら……ぅ……』
彼女が仰向けになった瞬間、バスローブの前がはらりと開いた
白い肌が露わになり、胸元の膨らみと、締まったウエストの曲線が目を引く
私は静かに、胸元から下腹部へと手を滑らせた
『ん……あ、だめ……だんだん……おかしくなっちゃう……』
指が下着の上から柔らかな膨らみに触れた瞬間――
『や……そこ……もう、濡れて……恥ずかしい……』
すでに彼女の身体は、明確に応えていた
下着越しに熱と潤いが指先に伝わる
私はそっと下着をずらし、素肌に触れた
濡れた音が指の動きに合わせて響く
ぴちゃ……くちゅ……
『
あっ……んっ、すごい音……っ、いや……聞こえちゃう……』
彼女は恥じらいながらも、身体を私に預けていく
十分に濡れたその奥へ、私はゆっくりと指を入れた
『んっ、ふあぁ……っ、だめ……そんな……っ、ゆっくり……んぅぅ……っ』
濡れた音と、彼女の艶やかな吐息が交じり、部屋の空気が粘度を帯びていく
やがて私は身体を重ね、目を合わせる
「大丈夫?」
『……はい。来て、ください……ちゃんと……入れて、ください……っ』
そして、結び目を解くように、私はゆっくりと彼女の中へ――
『んっ、あっ……ぁああ……っ、すごい……っ、奥まで入ってくるの……わかる……っ』
ぬぷっ、ずぷっ、じゅぷ……
濡れた粘膜が絡み合うような音が、規則正しく、そしてだんだんと熱を増して響く
くちゅっ……ずちゅっ……
『んんっ、ふあっ、もっと……奥まで……来て……っ』
彼女の脚が私の腰に絡みつき、身体はとろけるように柔らかくなっていった
リズムが早まるたび、彼女の声は甘く高まり、
『ああっ……あっ……すごい、こんなの……初めて……っ、わたし……っ』
やがて、震える声とともに、彼女の身体が大きく弓なりに跳ねる
『イっ……ちゃう……あっ、ダメ、止まらな……いっ……!』
最後に一際大きな濡れた音が響き、彼女は小さく何度も震えながら、私の腕の中で息を荒げた
しばらくして――
『……ホワイトデーなのに、もらいすぎちゃったかも』
と、私の白いモノをたくさん受け止めてくれた彼女は、恥ずかしそうに笑った
私たちは並んで横になり、静かに指を絡めながら、しばし言葉もなく、肌の温もりだけを確かめ合っていた
別れ際、彼女がふと囁く
『……今度は、プロフィールにあったパウダーで、お願い……してみたいです』
そう言って、もう一度笑ったその顔が、今も脳裏に焼きついている
そう、その場の空気が言わせた言葉であることを、私は知っている