その日から、擬似夫婦となり、一緒に過ごす時間をできるだけ取るようにした。
残業は必要以上にしない。
帰れば、共に行動する。
外食や買い物も、許せる範囲で出掛け、手を繋いだり、腕を組んだり、常に触れている。
特別決めたワケでは無かったが、二人の思いが、そうさせていた。
私自身、外出時の二人をE子に見られても良いとさえ思っていた。
しかし、M子は、E子から、愚痴やE子自身の行動を聞かされていたので、上手く避けるようにしていた。
そして、約束の休日。
私『買い物行こか』
M子『えっ?今から?』
何時もなら、昼頃までゴロゴロしている私が9時過ぎに声を掛けたので、ビックリしていた。
私『ふん。行くで』
M子『待って!お化粧も、着替えもしてない!』
私『そのままでエエ!来い!』
半ば強引にM子の手を引き家を出た。
M子『もう…!ワガママやなぁ…』
車に乗り、口では文句を言っていたが、どこか嬉しそうに髪を束ね、リップを塗っていた。
繁華街の駐車場へ車を停め、少し歩いて開店直後の貴金属店へ行った。
M子『ここ?』
私『ふん。入るで』
黙って着いてはくるがキョロキョロと挙動不審なM子。
さっと店内を見回し、指輪のコーナーへ行き
私『こっからここまでで、好きなん選べ』
M子『へっ?これって…』
私『エエから!オレには判らんし、お前が選べ』
M子『万さん…。いいの?』
私『ああ。安物やけどな』
それは、ペアリングのコーナーだった。
すかさず店員が近付き
店員『どのような物をお探しですか?』
M子『えっと…』
私『この辺のリングを見せて』
店員『どちらかありますか?』
私『判らん。コイツに聞いて、好きなん見せたって』
そう告げて、一人で店内をプラプラとし始めた。
カウンターでは、M子と店員が何やら相談をしながら、笑い声を上げ、物色をしていた。
離れた所から、その姿を見ていると、胸が苦しくなり、ただ申し訳なく思っていた。
暫くすると
M子『万さん!』
手招きをして呼んでいる。
M子『どっちが良い?』
厳選された2つのリングが並んでいた。
私『嵌めてみ』
一つずつ指を通して見せた。
私『こっちかな』
M子『やっぱり?私もそう思てん!』
私『やったら聞くな!(笑)』
M子『一応、意見を(笑)』
そして、購入をし、ネームを1時間程で入れられるとの事で依頼し、一旦、店を後にした。
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