それから暫くして、M子から電話があり、元のマンションに呼び出された
M子『ゴメンね』
私『どうてん?』
M子『これ、持ってて』
見ると部屋の鍵だった
私『何で?』
売却すると聞いていたので、不思議に思い聞いた
私『売るんやろ?』
M子『も考えてはいるんだけど、まだ、ハッキリ決めてないの…』
私『?』
M子『父だけになったから、こっちに戻って来ようか、妹も含めて、相談してるの』
私『そうなんか』
M子『私の仕事の事もあるしね…』
私『復帰か?』
M子『事務長からも、誘われてるし、通勤とか、父の生活とか、いろいろ考えると、こっちの方が便利かなと思って』
地元では、いろいろ問題がある様子だった
M子『とりあえず、ハッキリするまで、鍵を渡しておくから、自由に使ってくれても良いし、たまに様子だけ見ていて欲しいの』
私『それは構わへんけど』
M子『それに…』
私『ん?』
M子『何でも無い…』
他に思惑があったのか、言葉を濁してしまった
M子『とにかく、持ってて』
私『判った』
そして、その日は、私の結婚式の打ち合わせがあり、M子を抱く事なく別れた
その日を境に、M子からの連絡は途絶え、私も結婚をした
それから2年
たまにだが、部屋へ足を運び、窓を開けたり、様子を見に行っていた
特に変化があるワケでもなく、人気の無い、静かなモノだった
M子が来ている痕跡はあったのだが、連絡はなかった
その後、私は、事情で一時地元を離れ、マンションの事は、頭から消えていた
地元を離れ3年
離婚をした私は、再び地元での生活をスタートさせた
たまたま、仕事でマンションの近くを通り、鍵の事を思い出した
さすがに、もう人手に渡っていると思ったが、念のため、マンションの集合ポストを見に行ったが、名前は、まだM子のままだった
【まさかな】
その時、鍵を持っていなかったので、翌日、再びマンションを訪れ、恐る恐る鍵を差し廻すと
(カチャッ)
何事もなく開いた
マンションは、入居者が変わると必ず鍵を交換する
という事は、まだ、売却されていない証拠だった
中に入ると、当時と変わった様子はなかった
懐かしいM子の部屋
当時を思い出しながら、一通り見て回り、M子が来ているのは判った
しかし、互いに携帯電話の番号も変わり、連絡をする術がなくなっていた
【生きてるんやな】
そんな事を思い、部屋を出た
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