4月に入った初めの土曜日、私の妻は完治ではないが退院することになった。
娘と一緒に病院へ退院の支度、1Fのロビーで料金の精算中に志津江に会う。
お互いにあいさつを交わす。
妻の面倒を見て貰ってからもう2~3年になるか「もう この人は科長さんだよ 昔で云う婦長さんになっているんだよ」と妻に言う。
娘を入れて、お互いに簡単に話を交わし、別れる。
「あなたのところは いいわね
奥さんがいて 娘さんがいて
私には うるさい母さんだけ」
「私が 居るじゃないか」
「それはそうだけど
当分 逢えないわね」
「時間を見て 誘うよ」
「ありがとう」
その晩の志津江との電話のやり取り。
何か淋しそうで、投げやり。
月曜の晩、妻には理由をつけて、志津江に会うため外出。
志津江と逢い、すぐにホテルへ。
ホテルの部屋の中で、志津江に泣かれる。
「あの日の 長谷川さん一家を見たら 力が抜けた
私には ああいうのは できないんだなぁ」
「できるよ 志津江はまだ若いんだから」
「若いって もう40よ」
「うちの娘だって 40過ぎたとこだよ
大丈夫 いい家庭が 築けるよ」
「本当かしら」
「本当だよ」
「この世で頼りになるのは 長谷川さんだけ」と抱き付いてくる。
志津江の体を受け止め、志津江の背を撫でる。
「今晩は 目茶目茶にして」
「ああ してやるよ
止めてーと言うまで」
志津江は私の首に腕を回し、きつく抱く。
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