挫折‥
しかも1日で。
札幌に向かう列車に揺られて感じずにはいられなかった。
誰も知り合いのいない‥
雪が舞い散る車窓の景色を見ながら不安さえ感じてしまったのでした。
早めに住む場所と仕事を決めなければ‥
札幌の街に戻ると夕方と呼べる時間なのに,既に辺りは真っ暗になっていた。
駅前のビジネスホテルに取りあえず落ち着いて明日からの事を考えている時に携帯電話が鳴った。
番号を見て見慣れない局番に首を傾げながら出てみると牧方氏からだった。
「どうですか?良い就職先は決まりそうですか?家内が心配して電話してみろと。」
その時の電話ほど心強く,温かく感じた事はなかった‥
まるで父親と話している様に‥
小樽では就職先は望めない事‥
札幌に戻りビジネスホテルへ泊まっている事を話すと
「失礼だが‥何のツテもなく東京での仕事以上を望むのは難しいと思う。これは現実なんです。悪い事は言わないから私に任せてみないか。」
と諭す様に話してくれて,聞いているうちに涙が出てきたのでした。
「何も恥じる事はない。人と人とのつながりとはそう言うものだから。」
その言葉を聞いて甘える事にしたのでした。
「気を使う様なら,うちでなくても知り合いの所に聞いてあげる事もできるから。」
「ありがとうございます。」
ありがたく思いました。
「札幌のビジネスホテルにいるのかね?」
「はい。」
「良かったらうちへ来ないか?」
「いえ。そこまでしていただいては。」
「構わないよ。空いてる部屋もあるし,暇な年寄りの話し相手になってくれれば私も嬉しいから。家内も喜ぶし,そうしなさい。」
「でも‥」
「嫌じゃなければそうしなさい。気を使う事もないし。」
迷っていると
「今から迎えに行くよ。」
「え?今からですか?」
「よし。そうしよう。」
「そんな,明日でも‥」
「気が変わるといけないから今から行く。」
年配の人にありがちな言い出したらきかない様なところを感じて,迷っていると
「少し遠いから君も途中まで出てきてくれるかね。」
話しぶりで同じ札幌市内だと思っていたのですが話しを聞くと北海道の中央,美瑛と言う所に住んでいるとの事でした。
「どう行ったら良いのですか?」
札幌から列車でもかなりかかる所の様で不安になったのでした。
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