そして、そんなある日
俺は、美晴さんを晩メシに誘った。
「お礼?」
美晴さんは、食後のコーヒーを口運びながら少し驚いたように言った。
「ええ!いつも昼メシおごってもらっているし、バイト代も入ったんで少しでもお返しにって!!」
俺は、気にしないでという意味を込めて、はっきりとした口調で気持ちを伝える。
「そんな、もったいないわよ・・・せっかくのバイト代を・・・」
美晴さんは、俺の予想どおりだった。
「いえ!どうしても、おごりたいんッス!本当にたすかってるし」
俺は別の理由があるのだが、それを押し殺して食い下がる。
「でも・・・こんなオバサンと一緒に晩ゴハン・・・?クス誠くん、恥ずかしくない?」
美晴さんは、年齢を引き合いに出してくるが、今も昼メシを一緒に食っているだから説得力にかける。
「とんでもないっス!おっ・・・おばさんだからっス!だから一緒にっ・・・て!」
俺は少しムキになっていた。
そんな俺に対して美晴さんは静かにコーヒーを飲む。
「・・・・・・いいわ。そのかわり、一つだけ条件」
そう言い、何を言われると身構える俺を前に、美晴さんは残りのコーヒーを飲み干す。
「敬語はやめましょ。上下関係ナシで・・・ね?」
「は・・・はい!」
俺は嬉しさのあまり大きな声で返事をしていた。
ほんの少しだが美晴さんの頬がピンク色になったような気がした。
それは、俺の大きな返事に周りの者の視線が集まったためだけでないように思えた。
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