一年前
俺は配送のバイトある会社へ荷物を届けに行った。
その会社の廊下で偶然に美晴さんとすれ違ったのだ。
「あれ~?」
「え?」
すれ違いざまに声をかけられ、驚いたように振り返る美晴さん。
「あら・・・あなた、たしか・・・・・・・え~と・・・」
知った顔だと気付いた美晴さんは表情は驚いた表情だったが、先程のそれとは違い、なぜ僕がこの場にいるのか?というものだった。
「そうそう!たしか誠くんだっけ?」
「そうです。正樹と同級の誠です。そっか~おばさん、この会社だったんだ~」
俺はシングルマザーで母親は、会社員をしていると正樹から聞いていたのだ。
「なに?バイト?」
美晴さんも息子と同級生と判って気軽に尋ねてくる。
「いやあ!大学受かったのはいいんスけど、学費稼がないといけなくって宅配っスよ」
「そっか・・・大学・・・正樹と一緒だったわよね~」
美晴さんは、俺の少し重い話に戸惑いながら話す。
「ええ!また腐れ縁っつ~か、はははっ」
俺は場を和ませようとした。
「でもエライわねぇ。正樹なんて遊びあるいてるわよ。少しは誠くんのツメのアカでも・・・ってね」
美晴さんも俺の話に乗っかってくれた。
その時「主任~いいですか?」と言う声がした。
「あ、は~い」
美晴さんが声がした方へ顔を向け返事をする。
廊下を少し行った所のドアが開き、男性社員の一人が美晴さんを呼んだようだった。
「そうだ!あとで一緒にお昼食べない?おごるわよ」
「え?マジっすか!?」
「もう少し誠くんの苦労話聞いて、正樹に説教してやんなくっちゃ、フフッ」
美晴さんから、昼メシの誘いがあって、それをきっかけに週に二・三回、一緒にするようなった。
それは、美晴さんにとって苦学生の俺に対するほんの少しの援助、それだけのつもりだったのだが・・・・・・・
いつしか美晴さんの密かな楽しみにもなっていたのだ。
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