『兄ちゃん、昨日ありがとのぉ~。馬、綺麗やったわ~。』と、仕事帰りの僕に安藤さんが声を掛けて来ます。
辺りは薄暗く、お互いの顔もハッキリしない中、おばさんは相変わらずの大きな声で話し、近所にも聞こえてしまうほど。
もしかしたら、それは僕にではなく、家の中にいるおじさん、その隣に住む秋山さんに向けられて言っているのかも知れない。
『おっさんは気にもしないわ。』と口では言っていたおばさんも、やはり後ろめたさはあるように感じる。そのための行動のようにも思える。
それだけ言うと、安藤さんは家の中へと消えて行く。昨日の今日なので、もう少し話したい気持ちもあったが、僕もその辺は考えて家に帰るのだった。
仕事焼けなのか、顔も肌も真っ黒。東南アジア系の男のような堀の深い顔をしているため、とても綺麗ではない。ウルトラマンに出てくるピグモン系なのだ。
口は悪いし、ずけずけ言うし、女性の魅力などほんと乏しい方である。本人もそれを分かっているようで、どこか女を捨てたようなところもある。
しかし、その夜。2軒隣に住んでいるピグモンを思って、アソコをシゴいてしまった。肌の色は黒いが、肌はスベスベに補正をされています。安藤さんは顔を歪め、あのハスキーな声で喘いでくれていました。
それから、しばらくしてでした。安藤さんのお宅に食事に誘われます。もちろん、おじさんと三人でです。
無口なおじさんを前に、僕とおばさんが会話を繰り広げます。おじさんは気にはしていないと思いますが、わざわざ競馬場でのことが話題の中心となりました。
『健全。』、それを証明するかのようです。その中で、おばさんがあることを切り出します。
『次、いつ連れていってくれるん?お金、いっばい持っていかんとー。勝つよー!』と言うのです。
まさか2度目なないでしょうが、おじさんに向けられたメッセージだとも取れました。
その帰り(と言っても2軒隣ですが、)。わざわざ見送りに外まで出てきてくれたおばさんに『また行こやー!連れていってやー。』と頼まれるのです。
どうも、真面目に言っているようで、『なら、行きます?』と第2回目が行われることになるのです。
もちろん日曜日でした。ナイター競馬のため、午後3時過ぎての来場です。前回のようなことを少し期待した僕でしたが、普通に競馬は行われていきます。
やはり、あの時はあの時。あんなことになったのは、二人ともにどこか浮かれていたのが原因かも知れません。
しかし、日が落ちた頃から怪しくなって来ます。やはり闇夜は、人の行動を少し大胆にさせるのかも知れません。
『なんか食べる?』と言って、安藤さんの肩に手を掛けた時からでした。もちろん、僕もその気でおばさんの肩に触れました。
『お腹すいてないわー。ええわー。』と言われ、仕方なくおばさんの隣のベンチに座りなおします。すると、明らかに安藤さんの身体が近づきました。
きっと、おばさんもあの時のように女心に火がついていたのです。僕は足を組み、彼女の肩に手を回しました。
僕の膝に置かれた競馬新聞を覗き込みながら、予想をする安藤さん。更に頭を持ち、自分の胸に押し付けます。
前回よりも寒くなっていたため、防寒ジャンバーで厚着をしていたため、彼女の体温を計り知ることは出来ません。
しかし、ふっくらとしたジャンバーに彼女の身体が埋まっているのが分かります。明らかに、自分から僕に抱きついて来ているのです。
予想外の行動に、引いたのは僕でした。久しく女性とこんなことをしていなかったため、楽しくも思え、少し強く行動をしていました。
ところが、女性が少しその気になってしまったことで、怖くなったのです。『このおばさん、本気で抱くの?』と頭の中で考えてしまったのでした。
僕の行動が変わりました。抱きつかれていることに、『わかった、わかったから~。』とおばさんのせいにしてしまうのでした。
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