ラブホからの帰り道
てれ、てれ、てれ、てれ、てれ。
アパートまで、夜道を歩く。----と。
ふらり、ふらり、ふらり、ふらり。
千鳥足で歩く男がが一人ーーー
どくんッーーー
それが、誰なのかわかった瞬間、心臓が跳ねる。
慶次「あるれ?ひー坊?」
俺 「ーーーどうしたの、おっちゃん」
なんとか搾り出した言葉に意味などなく。
慶次「あは、あはははは。こりゃ参ったな。・・・・・・ひっく」
俺 「・・・・・・・・・酔ってる?」
慶次「あは、あはは、ちょっとね。---ひぃっく」
俺 「か、かなりでしょ」
慶次「いやいや、たまに、たまに。たまにだから。たまにだから」
俺 「ま、まっすぐに立ててないよ、おっちゃん」
慶次「いやいや、あはは。なに、明日は休みなもんだからさ」
俺 「・・・・・・・・・・・・・・・また、家に誰もいなかったから、とか?」
慶次「ああそうさ、そうだとも」
俺 「な、何を怒ってんの」
慶次「主婦会だとか、二言目には主婦会だ主婦会だ、ひっく、今日も、フィトネ、ひっ、クラブだって、お母さんも楽しんでるんだから、私だっていいじゃないか」
俺 「わ、わかった、わかってますから、わかってますから」
慶次「ひっく・・・・・・・・・・・・・・ひっく、ひー坊、こんな遅くに出歩くもんじゃない」
俺 「まだ10時前だってば」
慶次「・・・・・・・・そうか・・・じゃあね、ひー坊」
ふらり・・・・・・・ふらり、ふらり・・・・・・・・・・・・
俺 「き、気をつけて」
ゆったりとした千鳥足の背中にそう声を掛けておきながら。
てれ、てれ、てれ、てれ、てれ。
カン、カン、カン、カン、カン・・・・・・・・・。
ガチャッ・・・・・・・・・・。
俺 「ふうぅッ・・・・・・・」
ぎしっ・・・・・・・・・・・。
ベッドに倒れ込むようにして、ひんやりとした枕に顔を埋める。
まだ。
有り余る精力を使い、歳の離れた人妻を何度も絶頂まで到達させ。
熟雌へと変えたにもかかわらず。
そして、
あれだけ熟雌の熟れた蜜壷へ精子を大量に出したにもかかわらず。
何かすっきりとしないーーー何か
そんなことを感じながら。
今頃。
今頃ーーー時間をずらして帰途に着いたおばちゃんが、おもちゃ屋に戻ってるだろう。
お酒を飲んだおっちゃんと、どっちが早いだろうか。
どんな会話を、交わすのだろうか。
またこっそりとお酒を飲みに行った夫を、妻はなじるのだろうか。
いろいろな名目で遊びに行く妻を、夫は非難するのだろうか。
それは絶対にないのであろう。
あの夫がーーー
妻にしろ、息子にしろ。
相手の行動につけこんで、何かを非難するなどーーーありえないのだ。
そうーーーなのか?
あの。
あのおばちゃんがーーー信じられないような淫蕩を隠し持っていたように。
いつもの姿からは信じられない奔放をーーー若い俺の眼前で見せ付けているのに。
はしたなく快楽を貪り、下劣に媚び喘ぐ。
そんな顔をーーー隠し持っていたというのに。
人の本性なんてーーー誰にもわからないのだ。
妻が。
ともに店を切り盛りする、妻が。
若い男と、淫乱な火遊びを繰り返していると知ったとき。
ーーーどうなのだろう。
おっちゃんの男としての『本性』はーーー俺の目の前で、剥き出しになるのだろうか。
子供頃から。
生まれて始めて買ったプラモデルの作り方を教えた。
一人息子の友達が。
自分の妻をーーー呼び捨てにして、ハメ回していることを知ったら。
ーーーどんな顔をするのだろう。
どんな言葉を発するのだろう。
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