俺 「う、うわあ」
独特な、匂い。
複数の照明で複雑にライトアップされた、色。
何より。
その設えのーーーある種の目的に特化した、機能美が。
俺 「・・・・・・・・うーん、感動的」
多香子「何が?」
俺 「・・・・・・・・おもちゃ屋のおばちゃんと、ラブホに入っちゃったなあ。と思って」
多香子「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
熟母の眉が、複雑で官能的な形に顰められ。
多香子「そう・・・・・・・・ね。・・・・・は、入っちゃたわね」
そう。
駅前からーーーうらぶれた、昼間のラブホ街まで。
手を繋いで。
親子ほどに歳の離れた二人が。
母親ほどに成熟した女性がーーーこのような格好で。
息子と同年の、若い男に手を引かれ。
性欲の巣へと。
ただセックスだけをするための場所へとーーー二人で入る。
あまりにも露骨で。
あまりにも即物的な、その行為が。
多香子「・・・・・・・・?な、なに?なによ」
俺 「いや、別に」
いつもより。
いつもよりも、目の前の熟母が。
より純粋な意味でのーーー肉体関係の相手という存在に見えてきて、興奮する。
そんなことを口にしたら、また怒られるだろうか。
俺 「おばちゃん、ラブホテルに入ったことあるの?」
多香子「---な、何よ、突然」
突然でもなんでもない質問を、一児の母ははぐらかそうとする。
俺 「あるの?」
多香子「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・お・・・・・・・・・・大昔にね。一度」
俺 「へーーー」
多香子「ラ、ラブホテルってもんじゃなかったし、それに十年以上も前だし、こんなんじゃなかったわ」
俺 「ふーん」
誰と?
と聞きたい気持ちに、自然とブレーキが掛かりーーー減速する。
多香子「そ、そんなことよりあんた、お金大丈夫なの?」
俺 「はっ?」
多香子「この服もだけど・・・・・ここだって、安くないでしょ?」
俺 「だいじょうぶだいじょうぶ」
多香子「また変な商売とか始めてないでしょうね」
俺 「ま、またってなにさ」
多香子「あんた昔、偽トレカ売りさばいてたじゃない、ウチの店の前で、まぁ、コピー用紙なんでモロ偽物ってやつだけどね」
俺 「だだだだから、あれは山岸、山岸が」
多香子「そうだったかしらねぇーーー永作先生はそうは言ってなかった気がするけどー」
とぼけた口調で言いながら、おばちゃんは浴室を覗きに行く。
俺 「・・・・・・おばちゃん、ちょっとそこへ座ってみて」
多香子「え?なに?」
俺 「そこに」
多香子「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
俺 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
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