『親父とHなことでもしてた?』、その質問に『全部、もう分かってるよねぇ。子供じゃないもんねぇ。』とスッキリした表情で答えた西本さん。
『あんなコソコソしたこと、謝るから。おばちゃん、恥ずかしいわぁ。』とハッキリと全てを話す西本さんに、どこか好感が持てました。
父とセックスした事実を突きつけられたのにも関わらず、それで彼女を汚くは思えず、むしろ好感を持った。変な方程式だ。
それからは他愛ない話が続き、『なんかスッキリしたわぁ。帰ろ。』と言われ、喫茶店を出ます。しかし、すぐには家路に着かなかったのです。
『ドライブしません?』、喫茶店の一件でより親しくなり、普通に言えた言葉でした。西本さんもさっきの告白で気分が晴れたのか、嫌とは言いませんでした。
アテもなく高速道路を走りました。父親の彼女を乗せているのに、僕は気分はウキウキでした。彼女の方はどうなのでしょうか。
彼氏の息子に『お父さんとセックスをしてる。』と告げ、その告白した息子が運転する車の助手席に座っているのです。
けど、二人にそんな違和感など微塵もありません。僕にはそう思えました。喫茶店で本音で話が出来て、二人の間に妙な連帯感が生まれていたのです。
彼女の手をとったのは、1時間半後のこと。『西本さん、手きれいやねぇ。』これが最初です。突然、男に手を握られ、彼女の頭にも『?』がともりました。
『おばちゃんの手!』と引っ込められましたが、少ししてまたとると、『お父さんに言うよぉ~。』と笑いながら言われました。
おかけで緊張がほぐれ、『彼女の手を握る=これはギャグ』という図式が出来、いつしか当たり前のように手を握っていました。
人間って、ダメです。手が触れ合うだけで、次々と変な感情が込み上げてしまいます。気がつけば、当たり前のように恋人繋ぎになっていました。
西本さんも同じです。年が離れていると言っても、彼女も女です。男に手を握られれば、思ってもいなかった感情が出てしまいます。
西本さんの手が緩みました。『手を繋ぐのをやめよう。』という合図でした。僕は手を離し、その手はハンドルに掛けられました。
妙なものでした。こんな時って、言葉が出ない、話したくない、そんな気分です。繋いでいた余韻を楽しんでいたんですね。
彼女を見ました。同じような気持ちなのでしょうか。繋いでいた手は膝に戻され、うつ向いて何かを思っている、そんな感じです。
5分も経ってないと思います。僕の手が、再び彼女の手を探しました。しかし触れた瞬間、手は引っ込められました。
そして、『もういかんよ。』と今度は真面目な言葉が返って来ます。やはり、彼氏でもない男に手を握られるのは、『なにか違う。』と考えたのでしょう。
それでも、僕の手は彼女の手を求めました。握った瞬間、彼女は手の力を緩め、僕の方に引っ張られると、息を吹き返したように握り締めて来たのです。
『おばちゃん、なんか恥ずかしいわぁ。』と照れくさそうにいう彼女に、『大丈夫。』と言って声を掛けてあげる僕でした。
高速道路を走ってきた車でしたが、僕の町のIC近くににまで帰ってきていました。この頃でも二人の手は握られ、彼女の太ももの上に置かれていました。
更に蓋をするように、彼女のもう片方の手が上に乗り、僕の手は挟まれるようにして握られていたのです。
僕の家が近付くと、彼女の手は僕の手を離しました。やはり、現実が見えて来たのでしょう。彼女は、父の彼女なのです。
駐車場に車が停まりました。家からは見えませんが、父も気づいたかも知れません。二人小声になり、『ありがと。』と西本さんは言いました。
僕の返事は、『送ります。』でした。暗闇の中、問答が続き、結局は送ることになります。
僅か3~4分ですが彼女を送りたかった、そのくらい一緒にいたかったのです。
西本さんの家に着きました。さすがにこれでお別れです。ところが、『お茶だすわぁ。』と彼女が言ったのです。『うちに上がっていけ。』ということです。
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