ここに車を停めた停めた時にはまだ明るかった空も、日が落ちてしまい、夜の世界に変わりました。
ここには外灯はほとんどなく、僅かに行き来をする車のライトが、暗闇に停まる僕の車を照らします。
車の中で、時間を潰すためにスマホをいじっていますが、視界はしっかりと彼女の家をとらえていました。
午後8時過ぎ。正子さんの家の前に灯りがつきました。
その灯りは動き始めると、そのまま南へと流れるのです。おじさんが帰ったのです。
家に目を戻すと、真っ暗な中、更に灯りは落ちました。正子さんが家の中へと消えたのだと思います。
しかし、僕の車のエンジンは始動をしません。いざその時が来ると、動き出せないものです。
結局、更に15分の時間が必要で、ようやく正子さんの家の前へと車を停めることが出来ました。
玄関に立つと表札を見えました。「水沢」と書いてあり、正子さんの名字をここで初めて知ります。
チャイムを押すと、玄関の灯りがつき、正子さんが無言で扉を開け始めました。
僕の顔を見た彼女は、一度頭を下げます。こんばんわの意味です。
しかし、すぐに理解をしたのか、扉を持つ手にも力が入ります。
「ちょっと、会いに来たんですが。。」
僕の言葉に、おばさんは少し考えているようでした。昼間にあんなことがあったのですから。
しかし、僕の手が扉に掛かり、横に滑らせ始めるとおばさんの手が緩むのです。
「遊びに来ただけ。。」、そう言って足を一歩踏み入れると、おばさんは家の中へと身体を向けました。
来客を迎えるためにです。
古い家でした。薄暗い玄関を入ると、すぐに居間があります。
そこのテーブルには、2人分のグラスが置かれていて、おじさんがここにいたことを裏付けるのです。
ソファーに座り、僕は辺りを見渡します。おばさんな隣のキッチンにいて、その間に観察をします。
しかし、テレビと小さなタンスだけしかない、質素な部屋でした。
そこへ、正子さんが現れます。お盆にコーヒーが置かれていて、僕に出されました。そんな彼女に、
「おじさん来てたぁ~?。。」
と聞いてみます。正子さんの顔が変わり、心情が手に取るように分かります。
おじさんが帰ってから、すぐに僕が現れたのです。この言葉に、おばさんも少し考えたことでしょう。
結局、その答えは帰っては来ませんでした。しかし、
「おじさん来てたんでしょ~?。。おじさん、エッチして帰ったのぉ~?。。」
と、追い詰めるように聞いてみます。正子さんは座ったまま、固まっていました。
僕の言葉で、もう動くことも怖いようです。
そんな彼女に少し時間をあげようと、「トイレ借ります。」と僕は席を立ちます。
初めて来たお客なのに、正子さんはトイレの場所を指示してはくれません。
どこか追い詰められている感じがします。
僕は一旦廊下へと出ると、目の前には明らかにトイレと分かる扉を見つけます。
そこで用を済ませて出て来ましたが、イマニハ戻らず、廊下を奥へと歩き始めました。
奥には扉の開いたままの部屋があり、中から光りが漏れています。
居間からおばさんが出て来て、慌てたように僕の背中を追って来ました。
しかし一足遅く、僕が先にその部屋を覗いてしまうのです。
その部屋には、布団が敷かれていました。布団は少し乱れていますが、何かの跡はありません。
部屋に足を踏み入れると、背後におばさんが来たことが分かりました。
そして、彼女の手が僕の服を掴みます。前に進むなという意味です。
しかし、掛け布団をめくると、そこにはおじさんと何かをしていたと思われる跡が残っていたのです。
白い敷き布団の真ん中に液体が乾いた跡があり、黄ばんだそれが残っています。
そして、枕元のティッシュ、それを捨ててある小さなゴミ箱、セックスの跡が残されまくっていました。
「恥ずしがらなくていいですよぉ~。。セックスすることは恥ずかしいことじゃないですよぉ~。。」
完全に言葉を失っている正子さんに、普通に声をかけてあげます。
しかし、今の彼女には追い討ちとしか感じないでしょう。相手は愛人、彼女も後ろめたいのです。
そして、見てたのは開けっぱなしになっている押し入れのふすま。
そこには引き出し式になっている白いケースがあり、下の段の引き出しが少し出ています。
そこを引くと、無造作に入れられている数々の品をが見えました。大量のアダルトグッズです。
バイブからローターから、SM用のグッズもあり、バラエティーに飛んでいます。
更にその白いケースの横には、後から片付けようと置いたのでしょう、マッサージ機まであるのです。
「ここって、セックス部屋~?。。正子さんって、セックスばっかりしてる人~?。。」
その言葉に、ただ立ち尽くすしかない彼女でした。
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