田中さんと逢うきっかけが、ようやくできた。
二人が 3時の早や帰りの日。
「誰かに見られるとこまる」と、田中さんの言うとおりに、2~3駅先の隣町で逢うことにした。
前の日に調べておいた、この町のラブホへ。
部屋に入るなり、田中さんは強い口調で言う。
「いま お店の噂 何だか知ってる?」
「・・・・・」
「高ちゃんと主任の福田さんが 怪しい関係にある
いやもっと 主任の福田さんが いつもの若者狩りじゃ ないかって」
「・・・・・」
「高ちゃん どう なってるの?」
「田中さん 心配かけて ごめん
実は 俺はドジだから 福田さんから その度に 注意されたり 叱られたり」
「・・・」
「福田さんは みんなの前で 叱るのは まずいからと 職場の隅っこやら 倉庫の中でやら
俺に気を使っていたみたい」
「・・・・・」
「あ 俺ばっかり 喋っちゃって」
「いいのよ
わかった 疑ったりして 私のほうこそ ごめん」と言いながら 俺に抱き付いてくる。
俺は田中さんの背中を 撫でる。
田中さんは泣いているようだ。
少し体を離すと 両目から 涙が 一滴二滴。
その粒を 俺は舌で掬ってやる。
「ありがとう」
泣き顔と笑い顔の混ざった顔を 俺に向ける。
田中さんの口にキス。
長いキス。
口を離すと なおも力を込めて抱き付いてくる。
「田中さん 田中さん
背中が 痛いよ~~」
「あ ごめんごめん
それに今 気が付いたんだけど
田中さんじゃなくて 下の名前で 呼んで
和子 かずこって」
「かずこ」
「ああ うれしいー」とまた 抱き付いてくる。
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