大学の同窓会に参加したときも、職場で働く民子を、遠くから眺めた。
他の女性従業員の、何倍もある体格、肉を揺すりながらあっちだこっちだ、駆け回っていた。
数分だけ見て、また立ち去った。
大学時代、俺は女性関係は結局、民子しか持てなかった。
彼女は作れなかった。
だから民子は貴重な存在として、俺にとってはなくてはならない存在だった。
一度だけ俺、民子と会って話した。
それは俺が結婚するときだ。
民子の職場で、俺は声をかけた。
六年ぶりくらいだった。
民子はびっくりしていた。
仕事終わったら会えないか、お願いした。
断られた。
でも結婚することを話したら、仕事終わったらと受けてくれた。
場所は住んでたアパート近くの居酒屋。
多少遅れてきた民子の開口一番。
「おめでとうさん」
にっこり笑った。
お世話になったお礼を言った俺。
「昔のことだから」
そしてこう言われた。
「あまり長居出来ない」
理由を聞いた。
今一緒に住んでる男性がいる、そう言った。
「また居候がいるの?」
俺はつい笑った。
でも違った。
「いや、私が居候なの」
俺が地元に帰った直後に、民子も引っ越した。
「いろんな噂が流れてるのは知っていた。だから清隆君がいなくなったら、あそこにいるのがいやになった」
理由をそう語った。
失敗したと思った。
今いる居酒屋、元いたアパートから徒歩数分だから。
「もう六年もたつから、大丈夫よ」
笑ってくれて助かった。
俺の結婚相手、どう知り合ったか、どんな人かを聞かれ、答えた。
民子が今一緒に住む人も聞いた。
「職場に出入りしてる業者さん。若くして奥様亡くされたって人。子供も自立したからって、お付き合いお願いされて、付き合ってるうちに一緒に住むように。その男性の息子さんから、お父さんよろしくとか言われてる」
結婚するのか聞いた。
「このまま孤独のままはいやかな~ってのが、今の心境」
そしてこう付け加えた。
「あいついなくなった、清隆君もいなくなった。寂しいなと思った」
その男性とは付き合うようになって二年、一緒に住むようになって半年ほどだと言う。
そんな話をした。
「ごめん、彼が帰宅する前に帰りたいから」
民子は伝票を持ち立ち上がった。
「結婚祝いにご馳走してあげる」
「いや、無理いって時間作らせたのは俺だし、俺が払うよ」
「いや私が出すって」
伝票の取り扱い、ブヨブヨした感触は昔のまんまだった。
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