もう五年くらい昔の話だけど、消化器系のちょっとした病気で、市内の大きい病
院に一ヶ月ほど入院したことがある。
最初は苦しかったけど病気は順調に治り、二週間め頃にはいつ退院させてくれる
んだろうかと考えるようになっていた。まだそれほど回復していた訳じゃなかっ
たけど、身体が楽になると今度は仕事の方が気になってしまって。
私が入った病室は四人部屋で、内科病棟だけあっておじいちゃんばっかり。
当時私は27歳で、周りの入院患者に比べるとずっと若い方だった。
気のせいかも知れないが、若い看護婦さんは私とは暇を見つけてよくしゃべって
くれていた。でも忙しそうだったから長くて二~三分ってところだけど。
その若い看護婦さんの中の一人に、くみちゃんと言う「阿部なつみ」似の、手足
は細いけど胸は大きい私好みの女の子がいた。歳は22歳。背も高く(163センチ
だとか言ってた)スタイルのいい、色白で笑顔が素敵な看護婦さんだった。
当然、患者からは人気がある。そりゃそうだろう。聞いた話では、患者からだけ
でなく、医者や病院職員からも大人気だそうな。納得しまくり。
そんな人気者のくみちゃんをただの入院患者の私がどうこうしようとしても無駄
だろうと思いながら、退院予定日が決まった日に何気なく「俺が退院したら、飯
でも食いに行かない?」と誘ってみたら、「うん。行きたい」との快い返事。
もうダメモトのつもりだったので、くみちゃんのあまりにあっさりとした快諾に
こっちが驚くほどだった。
「じゃ、ここに連絡ちょうだい」と看護婦寮の部屋の電話番号を書いたメモを渡
してくれた。平静を装った笑顔で「ありがと」と受け取ったけど、内心では「や
った~っ!」と叫んでいた。当時、私に彼女がいなくて本当によかったと思った。
行儀のよい入院態度とさわやかな会話(シモネタ言いたいところをぐっと我慢)
が、くみちゃんを始め病棟の看護婦さん達に好印象を与えていたと後でくみちゃ
んから聞いた。あ~、おとなしくしといてよかった。
さて、退院当日、お世話になった病棟の皆さんに挨拶して、私は無事退院した。
くみちゃんは準夜勤で会えなかったのが残念だったが、これからは二人で会える
と思ったら、「病気になってよかった」と「喉元過ぎればナントヤラ」な都合の
いいことを考えていた。
つづく(…かな? って言うか、全然エッチじゃなくてごめんね)。