去年、大腸の炎症で市民病院に入院した。
こんな時のための保険である。個室にした。
三日もすると担当看護師も一巡して仲良くなった人、合わない人、だいたいわかった。
この歳だしデブだし、いいことなんて起きやしないからと、淡々とすごしていた。
一人おっちょこちょいの同年代のかわいくない普通体型の看護師が、なんとなく個室で二人きりの状態にドキドキしているように見えた。
点滴調整してるときに、オレも点滴の調整するところ見てるだけなのに
チラっと俺のことみて目があうと顔が真っ赤になる。
彼女が夜中見回りのとき、小声で質問してみた。
「ねぇ。こんなデブと個室で二人きりでドキドキしてるの」
「えっ、ヤダッ」
肩を叩く彼女。
「おじいさんとか若者とかは全然平気なのに同じ年齢の人はなんかドキドキしちゃうのよ」
彼女も俺と同じ歳だったのだ。
「なんか、彼の部屋で世話してるみたいじゃない」
「バカか(笑)」
急に打ち解けて、とっても仲良くなった。
彼女がきて、「由美子まってたよ」と耳元でささやくと嬉しいようでボディタッチしてくるようになった。
個室でコソコソささやき声でのコミュニケーションは二人をエスカレートさせていった。
耳にふぅーってすればふぅーって返してくる。
「好き」って耳元でささやけば「好き」って返してくる。
軽くキスもしたしあとはエッチだけって感じだけどそれは無理だと思っていた。
退院の前日。遅番で22時あがりの彼女は消灯の見回りのとき、アドレスを書いたメモを俺に握らせた。
「連絡してね」
目を潤わせてささやいた。
かわいくない普通体型がなぜかかわいく見えた。
以来時々あって激しい肉弾戦をしている