中学時代の思い出話。
所属していた吹奏楽部では、練習はキツいわ(そのくせ弱小)、先輩は恐いわ、楽器は上手くならないわ、男子部員が僕の他にいなくて心細いわで、辛い日々を送っていた。
コンクール予選に向けて邁進していたある年の夏。
キツい長時間練習が連日続き、フラストレーションが溜まっていた僕は、憂さ晴らしをすることにした。
暑さに耐えかねて、裸足になる部員がちらほらいた。匂いフェチの僕は、あちこちに荷物と一緒に脱ぎ捨てられているであろうソックスに目を付けたのだ。
昼休憩の合間、僕は校舎をさまよい、放置されているソックスを探した。
家庭科の調理実習で使われている部屋を覗いてみた。ここはサックスパートの練習に使われている。室内は無人だが、鞄が二つ、テーブルの上に置かれていた。
幸い、近くに人気はない。そっと室内へ。
鞄はそれぞれ、水野先輩と谷先輩(いずれも仮名)のものだった。恐い先輩だらけの部内で、特に恐い先輩のツートップだ。
水野先輩は、ロングヘアに姫カットの美人。今で言う北川景子似だった。
谷先輩は、ショートカットで、丸顔と大きな目がトレードマーク。小柄で、ミオ先輩程ではないが可愛らしい先輩だった。
どちらの鞄にも、脱ぎっぱなしの白ソックスが!
見つかって問題になるといけないので、さっさとことを済ませることにした。
まずは、手前に置かれていた水野先輩のソックス。ほんのり汚れがあるソックスをさっと手に取り、爪先を嗅いだ。
(……?)
匂いはあるが、何だろう、胡椒みたいな匂いがする。イマイチ興奮する匂いではない。
水野先輩のソックスはさっさと見切りをつけ、谷先輩のソックスへ。
こちらは、水野先輩のより黒ずんでいる。おまけに汗で湿っている。というか、ほぼ濡れている。期待を胸に鼻に押し当てた。
(うわっ、くっせぇ!!)
谷先輩のソックス爪先からは、酢を混ぜた納豆のような匂いがした!
ちょっと嗅いですぐに退散するつもりが、興奮のあまり30秒くらい嗅ぎ倒してしまった。
奇跡的に、現場を見られる事無く、家庭科室からの撤退も、無事達成することができた。
その後、昼休憩時には放置ソックス探しをよくやるようになったが、間が悪かったりして、なかなかソックスにたどり着けず。たまにありつけたソックスは無臭…といったことが続き、結局、新たな興奮材料は得られないまま、夏は終わったのだった。
尚、その年のコンクールは、銀賞で予選落ちに終わった。