10年ほど前の冬、以前働いていた、飲食店での話。
店の更衣室は、一室だけの男女共用。バイトが着替えるときは、男女交代で出入りしていた。
そんな更衣室に、汗でジトジトになったバンダナを替えるために入ると、膝丈のロングブーツが置いてあった。
(これって、雨宮さんの…?)
雨宮さん(仮名)は、土日祝日限定でシフトに入ってくれていたギャル系女子大生。人当たりが良く、ルックスはそこそこ良かった。
(あの美形ギャルのブーツ……どんなニオイがするんだろう……)
急激に湧いた嗅ぎたい衝動を抑えきれず、ブーツに顔を突っ込み、一気に鼻息を吸い込んだ。
(!!!)
(クッサ!!!)
いかにも「足の裏!」という感じのニオイが鼻腔に突き刺さった。
(マジかよ雨宮さん…あのルックスでこの足臭……)
もう一嗅ぎ…。
(うーん、臭い!納豆みたいだ!)
ニオイケアされていないギャルのブーツ臭はたまらなかった。
もう少し長く嗅いでいたかったが、他のスタッフに不信に思われてもいけない。予備のバンダナを手に、更衣室を後にした。
結局その後は、再び嗅ぐチャンスは巡ってこず、店は営業終了。
「お疲れ様です~」と笑顔で去って行く雨宮さん(の脚を包んだロングブーツ)を、惜しい気持ちで見送った。
その後も雨宮さんは低頻度ながらシフトに入ってくれたが、彼女のニオイを味わえたのは、あの時だけだった。