結婚して、妻子持ちの身だけど、今でも忘れられない彼女が一人いる。
それは、大学出て就職した時にできた彼女で、2歳年下で栞というやや小柄な子だった。
特に、栞とのセックスが忘れられない。
栞は、入口はスルリと入るんけど、中が大学時代に経験したことのないオマンコの感触だった。
正常位で入れると、下側は、掻き分けたヒダが左右から絡まってくるような感触がすごかった。
上側はザラザラ感があって、動かすと、入れるときは下側、抜くときは上側が気持ち良かった。
安全日には中出ししたけど、射精した精液が亀頭とカリにまとわりつくような感じで、いかにも中に出したという感覚に変わって、それがまた気持ち良すぎた。
たぶん俺だけじゃないと思うけど、リーマンショックの煽りを食らった人は、多いんじゃないかな。
俺が大学出て入社した年にリーマンブラザーズのサブプライムローン破綻が発生し、これがアメリカにとどまらず世界的に波及していった。
そして俺が入社3年目に、俺の勤め先もこの影響を受け、会社の所有不動産を整理しなければ生き残れなくなった。
その時、その不動産の簿価が取得したバブル期のままで、粉飾が発覚、負債を整理できなくなり倒産した。
俺は、大学進学で上京して、そのまま東京に就職して、彼女もできて順風満帆だと思ってたのに、全て失った。
栞に別れを告げ、アパートを引き払い、帰郷した。
最後のセックス、覚えている。
甘く、切ない交わりで、それまでで一番優しく、穏やかで、快感よりも愛情を感じるセックスだった。
一貫して体位は正常位で、ずっとキスしてて、二度と会えない二人の最後の夜が更けていった。
「元気でね。あなたと過ごした日々は忘れないから。さよなら。」
「元気でな。幸せになってな。さよなら。」
東京駅で別れた。
帰郷して、同業に就いて、地方もリーマンショックの影響はゼロではなく、特に担保割れに伴う金融がグラついていた。
栞のことをぼんやり考えながら過ごし、そんな中で今の妻と出会った。
田舎臭い純朴系の可愛い女の子で、俺28歳、妻25歳で結婚した。
結婚して12年が過ぎて、俺も四十路を迎えた。
今でも、時々栞を思い出す。
どうしてるだろうか、元気だろうか、幸せになっただろうか、お互い連絡先を絶って前を向いたから、音信不通だ。
連絡先なんか、下手に携帯電話に残ってると、声が聞きたくなるし、声を聞けば、会いたくなる。
だから、遠く離れてしまう二人は、友達ですらない、赤の他人という一番遠い存在になって別れた。
失業して帰郷した翌年春、東日本大震災があったが、俺は、まだ東京にいるであろう栞を心配したものの、栞に安否を尋ねるメールさえできなかった。
栞と遠く離れ、時間が過ぎることで、東京へ残してきた思い出は深まり、あの頃には見えなかったものが見えてきた。
栞への思いはあれど、この思いは違うような気がしてる。
この思いは、東京へ残してきてしまった、二度とない、ただ眩しかった青春時代の恋愛への哀惜なのかもしれない。