降ったり止んだりはっきりしない暗い日でした。
当時私は四十半ば。
早婚だったおかげで子供も手がかからなくなり、暇を持て余し緩やかに毎日を過ごしていた頃でした。
願望がない訳ではないけど機会もなく浮気の経験もなし。
端から見れば貞淑な妻であり、きちんとした母親であったと思います。
そんなコツコツ築いた真面目すぎなくらいの人生が何だったんだって思うような日が我が身にも起こりました。
今までの信用をたった1日で崩壊させてしまうような事を私はしてしまったんですが、その事を後悔したことはなく、真面目に過ごした私への唯一のご褒美だったんじゃないかと割り切るようになりました。
その日私は義理のある方へのお見舞いに電車やバスを乗り継いで全く縁のない土地へ訪れました。
終点が山間の温泉地のバスに乗り、中間地点を過ぎた辺りでバスを降りると背景に山を抱えた大きな病院に着いた…
しっかり義理は果たしてもまだ正午前の時間でした。
坂を下って食事でもできるお店を探すか、タクシーでも呼んでいっそのこと温泉でも行くか…
悩みながら病院前の坂を下っていくと、電話BOXがありました。
中は何やらチラシが貼り付けてあったので、温泉の宣伝チラシでも貼ってあるのかと思って覗いてみた。
そしたら、それはいわゆるピンクチラシの類いでした。
さすがに私が暮らす地域ではすっかり見かけなくなっていて新鮮ですらありました。
熟女レディ募集などより目を引いたのはテレクラのチラシでした。
地域密着ですぐ会えると唱ってるチラシには女性用のフリーダイアルも記載されていました。
耳学問で多少の知識はありましたがもちろん試しでも掛けたことはありません。
ですが、にわかにポツポツ降りだした雨や暗い空。見知らぬ土地。持て余した時間。
ちょうど人肌恋しいといわれる季節にもなり、私は自分でも思いきりがよすぎるくらいにプッシュボタンを押していました。
公衆電話というのも掛けやすさがあった。
一人目はいきなり興奮しているような人で、さすがに焦って切ってしまいました。
やっぱりこんな人ばかりなのかと切ろうかと思ったその時、先ほどとはあまりにもかけ離れた若目の声が耳に飛び込んできました。
まさか、その二人目に繋がった相手と二時間後に肌を重ねることになるとは夢にも思ってなかった。
私を迎えに来てくれたのは私の子供と歳の変わらない少年だった。
運転は安全運転で不安はなかったが、車の免許は取り立てのようで若葉マークが貼ってあった。
私はそんな年頃の子供とホテルに向かっているのが不思議て仕方無かった。
地元民ではないらしかったが土地勘はあるようで、最初から知ってないといけないような場所にあるホテルに行った。
シティホテルにも見えるのは周囲への配慮かもしれない。
でも、中はちゃんとラブホテルでした。
造りもお粗末ではない立派な建物でしたが、部屋も小綺麗な部屋で感心しました。
入るとミラーボールが回りムード音楽が静かに流れ、空調も整っていました。
ちゃんと下準備が出来ているせいか、一気に気分が高揚してきました。
私は朝目覚めた時、今日こんな事になるなんて夢にも思っていなかった。