私が25~26歳くらいの話です、取引先の非常に私を可愛がってくれた社長(当時61歳)が、ある時ちょっと相談に乗って欲しいと電話をいただいた、
その深刻そうな口調に、当然未熟者の私は社長の相談に乗れるほど人生経験がない事を理由に、失礼の無いようにお断りしたのだが、先方の「君じゃない
とダメなんだ、話だけでも聞いてくれ、その上で断ってくれてもいいから」の言葉に押し切られ、渋々ながら話を聞くことに、待ち合わせをした場所も初
めて使う居酒屋で、当時としては珍しく半個室の店であった、早めに行ったつもりだったが、既に社長は始めており、注文も済んでいるとのことで、いつ
もと違う社長の振る舞いに、些かの違和感を感じながら挨拶もそこそこに、店員が持ってきたウーロン茶を持ち形だけの乾杯を社長と交わした、目の前に
次々と社長が注文した料理が運ばれ、もうこちらが呼ばなければ店員も来ない状態になってから社長は「相談の事だが単刀直入に言う、俺の妻を抱いてく
れ」私は驚きながらもしばらくの沈黙、そもそもこの雰囲気で、こんな冗談を言う人ではない、普段から豪快で明るく返事に困る下ネタをトークに入れて
くる事はあるが明らかにこの場ではおかしい、いくら未熟な自分でもそれくらいは理解出来る、私は社長から顔を背け何度も今の社長の言葉を心の中で反
芻しながら、やっと出た言葉は「それってどういう意味ですか?」と問い返すのがやっとだった、私の言葉を待っていた社長は、堰を切ったように話し出
した、要約すると、社長は数年前から糖尿病を患っており、特にこの2年はEDが深刻になってきた、しかし妻は喜ばせてやりたい、けれども相手が誰でも
良い訳が無い、身近過ぎるのも困るし、と言って行きずりの男に妻を触らせるのは嫌だし、何よりそれでは妻が承知しない、数か月前から誰が良いかとご
夫婦で思案していたところ、取引先の担当の私ならと奥様も承認してくださっているとの事、どうりで商談や仕事の事とは関係なくこの数か月間お誘いが
多かったわけだ、それも奥様同伴の時もあったり、居もしない彼女を連れておいでとか、それも私に彼女が居ないのを確認する意味だったとこの時社長は
話してくれた、正直私は困った、それが顔に出ていただろう、百戦錬磨の社長はお見通しである、社長は次いで「君を困らせたくて言っているのではない、
ただ妻が可愛く愛おしくそんな妻が女でいて欲しいだけなんだ」と言われてしまい、ますます自分は狼狽しながらも「刹那的に風俗に行くわけではないし、
奥様にも良くしていただいてます、だからこそ他にご恩返し出来る方法はありませんか?」と一応言ってみた、すると社長は間髪入れず「君がそうやって
返してくる男だから俺も腹を割った」と返ってきたこの申し出を断っても仕事に支障を出すような器の小さい人間ではない、がしかしその場で即答出来る
ような問題でもない、その日は課題として持ち帰らせてもらい、明後日にお返事すると申し上げると、社長は満足気に頷きながら、後は仕事の話とか普段
の他愛ない会話で私にとってはハード過ぎる宴を締め括った。