大学の頃、田舎過ぎてバイトをしたい学生と求人の比率が7:3くらい(感覚値)の異常な状態となっている町だった。
移動手段がある学生は隣の大きな街へバイトに行っていたが、家が裕福でない私はバイクすら購入が難しく学費もやっとだったので激貧生活をしていた。
1年くらいは食糧援助を親族から受けていたが、やはり学年があがると金がいる。
友達も出来てくるし、呼ばれる飲み会も増える。
何とか誤魔化し交わしてきたけど次第にキツくなる。
そこでどうにか近場で無いかと、町の商店街を1軒1軒周り求人がないか聞いて歩いた。
すでにシャッター街と化していた商店街に求人があるはずも無く、心が挫けそうになりながら2日目の10件を過ぎたところで花屋に行き当たり、店主である40代後半(だったと思う)の女性と話をした。
「バイト代を支払えるほどの余裕はないけど、住み込みすれば家賃が浮くでしょう?ちょうど2階に空いている部屋があるし、店番や仕入れた花の管理をしてくれるなら私が外に売りに行けるから助かる。」
と提案された。
問題は親や大学への説明だった。
今いるアパートを出て家賃の仕送りを小遣いにするなんて、我が家の経済状況からは考えられなかった。
大学も得体の知れない人の家に住み込むなど、学生に万が一があった場合に責任がとれない。
順序的には両親だった。
まず金が必要な事。何をするにも自由に使える金が必要で、家賃4万円と食費3万円の全額と言わないまでも5万は欲しい。それで学生生活は何とかしてみる。援助は学費と5万のみでとプレゼンをした。
3日粘って説得し、親が折れて花屋の店主に手土産持って挨拶に来た。
次に親から大学に、遠い親族という事で口裏を合わせて納得させた。
晴れて花屋に住む事になった。