仕事帰りの8時過ぎスーパーで買い物。
この時間は刺身売り場に人が多い。
3割引がずらりと並んでいる。
値札シールを乗せたワゴンを引いおばさんが
来ると、更に人が多くなる。
半額の値札シールが貼られたものから刺身がはけて
いく。そりゃそうだ人間の心理だもん。
半額シールを貼り終えたおばさんに声をかけてみる。
「この時間だと新鮮な刺身はないんですよね?」
「新鮮なものは開店時間と3時頃ね」
「仕事の日は刺身は無理ですね」
「すいません、この時間は無理ですね」
そんなやり取りがあった2週間後、どうしても
刺身でいっぱいやりたくて3割引の刺身を2点
買い物カゴへ。
精肉売場に移動するとワゴンを押したおばさんに会う。
「あら、我慢できなかったの?」
私はカゴに目を写した。
「今夜はどうしても刺身が食べたくて買っちゃい
ました」
「仕事大変ね、そう言えば土曜日は開店と同時に
来てるわね」
「はい、見られてました?」
「あら、シール!怒られちゃうわ!」
翌日は総菜買ってスーパーを出ると、後ろから
声をかけられた。
「お疲れさま、今帰り?」
「あっ、はい。今日は終わりですか?」
「木金は早番なんだけど、今日はお休みがいたから
残業よ」
「お疲れさまです」
「いつも一人でごはん?よね??」
「おねえさんもこれからご主人とごはんですか?」
並んで歩きながら会話が続く。
「ダンナは2年前に死んじゃったわよ、だから
一人ごはんよ」
「ごめんなさい、やな思いさせましたね」
「そんなことないわよ、2年経ってるんだもん」
「よかったらそこでごはんどうですか」
スーパーの並びにあるファミレスに誘う。
おばさんは「私でいいの?」と笑顔で誘いを受けて
くれた。
深い話はしなかったが、スーパーを挟んで反対方向
住んでいることや、息子がいて結婚はしているが
遠距離にいること、私がその息子さんより5歳上である
ことなど、食事お茶を含め2時間も時間を割いても
らった。私や息子さんの年齢から推測すると60
前半か?50代と思っていたが、後でわかったこと
だが、この時63歳だった。
それから1カ月後、スーパーと同じ建物にある本屋
で再会しランチ。
そのとき名前を教え合い、おばさんから年齢を教えて
きた。私は50代だと思っていたことを伝えると
「50代って59歳のことでしょ」と笑いながら言う。
私は熟女好みではないが、このときおばさんを可愛い
と思った。名前は佐世子さん。