俺って何だか柴犬。意味はないけどそんなイメージを持ってる。
俺の故郷はクッソ田舎でさ、学校も小中が校舎の真ん中から左右に別れていて左が中学で右が小学だから中に進級しても何も変わらず感動もないw。今は廃校になってるよ。子供がいないからさ。
俺の嫁はそんな学校の2つ下の子なんだ。
再会はコワイほどの偶然でさ、世の中狭いってよく言うけど本当だよね。
再開したとき妻は30で独身、俺が言うのもナンだけど結構美人なのに独り身は意外だった。けど…嫁にしてしばらくしてその理由がわかったんだ。
前置きが長くてごめんね、ではボチボチ話そうかな。
俺の家は学校から一番遠かったのね。子供の足だと片道に一時間もかかった。
ボロい神社の鳥居のある森を曲がると赤いスカートに黄色のシャツと赤いランドセルが前方の遠くに小さく見えた。今の俺の嫁さんだ。その時は俺が四年生で嫁は二年生かな。
何気に歩いてるとカーブの都合から見えなくなった。(あれ?)そう思って少し急ぎ足で歩いてもヤッパリ見えない。何だか不安な気持ちになったのを覚えている。道が直線になっても赤いランドは見えなかったからさ。
朽ち果てた物置小屋があって、そこは吉岡さん(仮名)という当時70過ぎの白髪頭て独身の爺さんの家が藪のなかにあった。
状況から言ってその家の他には寄り道をするような場所はなかったから嫁がその家に行ったのだろうと思い、物置小屋を曲がると…嫁が小屋の脇から歩いてきた。
俺を見てハッとした顔をみせたけど直ぐに下を向いて無言で俺の脇を通り抜けた。
「なんで吉岡さんの家に行ったの?」そう声をかけても返事もしない。
「なあ」更に後ろから追いかけて声をかけると急に走りだしたんだ。嫁の背負った赤いランドセルの中の物がカタカタいってる音を今でも覚えてるよ。
振り返ると吉岡の爺さんが物置小屋の陰からこちらを見ていて、直ぐに隠れるように姿を消した。
立ち止まった俺は駆けていく赤いランドセルと物置小屋をしばらく交互に眺めていた。
嫁の話から結局はその時の出来事が始まりで、30になっても独身でいた理由みたいだね。それは可哀想な話で、つくづく女の子ってのは生きてるだけで大変なものなんだなと思って聞いていたよ。
その吉岡のクソジジイはとっくにくたばったけどね。地獄に行ったんだろうよ。
まあ、そのおかげで嫁にできたとも言えるからそれだけは少しだけ許してやってもいいのかな?。