障子の向こうに消えた母親と男の人…今、見えていた光景より更に、いけない事が障子の向こうで行なわれるんだ…幼心にも、えも云えない興奮を覚えてしまった私は、垣根の間を抜け庭に入る。
他人の庭とは言え無断で忍び込む事じたいが、悪い事だと感じ、少し怯えながらも少しずつ縁側に忍び寄った。
ピタリと閉じられた障子の向こうが見える由もなく、ただ部屋の中が気に成った。
縁側の床板に、這いつくばるように中の気配を探ろうとする私…。
その時程、全神経を障子の向こうに集中させた事が無いくらいに耳を、そば立てた。
やがて周りの音は無くなり部屋の中の音に集中出来るようになる。
当時は知らなかったが、犬や猫が水を飲む時のような音…時折に母親の声だろうか?途切れ途切れに吐き出すような、くぐもった粗い息が聴こえる。
やがて粗い息から、小声ながらも何とも妖艶な声が漏れ聴こえて来る。
私の幼い股間に例えようの無い、むず痒さを覚え、その感覚が頭の先まで走り抜けて行った。
声が低く、何を話すのか聞き取れないが、男の人が言葉を発している…母親の声は高く、嫌…とか、もうこれ以上は駄目…とかの声は聞き取れた。
何をされてるんだろう…?
二人は、どうしてるんだろう…?
更に、這いつくばり床に上がろうとした時に、廊下の向こうに人の気配を感じ、ビクッとして私が振り向くと、そこには老婆がいた。
驚いた私は這ったまま外に後ずさる。
老婆は私を見ながら、静かに…と言う仕草で自分の口を指で塞ぐ。
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