痺れる様な疼きを抑えられぬまま、私は母親が先に家に帰るのを待った。
幼心ながら家の前で母親が帰宅してる事を確かめると、家に入った。
あの様な光景を目撃した後で、何を喋って良いのか分からず黙ったまま部屋に戻ろうとした。
「お帰り、おやつ有るよ」
何時もの母親の声がする。
私は、ドキマギしながら生返事を返した。
台所の板の間に座ると無言で、おやつに手を伸ばす。
エプロン姿の母親は和やかな笑顔を浮かべながら、色々と話し掛けて来る、これも毎日の事であった。
和やかな母親を、チラッと見ながら…先ほどの母親を思い浮かべてしまう。
男女が交わる…この事は、少しませた友達から話の中で聞いていた事だが、行為そのものが、あんなに卑猥で淫靡なものだとは思っても居なかった私には衝撃で有った。
まさか自分の母親が、あんな事をするなんて…ましてや相手は父親では無く老婆の家の息子…信じたくは無かったが現実に見てしまった。
母親に対する少しの軽蔑心と共に、見る事によって覚えた全身を貫く痺れるような疼きを忘れる事が出来なくなり、私は罪悪感を感じながらも次の日も老婆の家を、それと無く訪ねていた。
昨日と同じ居間に上げてくれた老婆は、母親が来るのは週に一度で、それが昨日だったと教えてくれる。
「私から言うのも何だけど…母ちゃんの事は、そっとして置いてやりなさい」
老婆が言う。
老婆と書いてますが、実際は当時55歳ぐらいだったそうで、当時の私には年寄りのイメージしか無かったので老婆と書かせて貰ってます。
「知ってしまった事は仕方ないけど、坊には未だ早過ぎる事だから…」
それでも最後には、来週に来るかい?と言って貰う。
何故だか、その日が待ち遠しく思えてしまう。
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