とにかく、変に緊張してるところを悟られたくないと思って、
そそくさと立ち去ろうとしてました。それを見透かしたように
クミカさんが言いました。
「おうち帰っても今日明日は一人なんでしょ?お夕食一緒に
していかない?」と
「あっ、いえ、その、夕食は母が容易してくれてってますんで
それ、食べちゃわないと・・・。」
「そうね。だったら、それ、持っていらっしゃいよ。夜景、見
ながらいただきましょうよ。」
結局、一度戻って、陽が沈むころに今夜食べるものを持ってきます
という約束をして戻りました。母より少し若いとはいえ私からみれば
18も年上のおばさんで、ほとんどいやらしい感じをいだいたことの
ない人だったのですが、最上階のクミカさんの部屋で夜景を見ながら
食事なんてと考えたとき、なにかが起きそうな予感がして胸が高鳴り
ました。陽がそろそろ沈む午後6時少し前、母が冷蔵庫に入れて行っ
てくれたおかず類の入ったタッパウエアと保温中のジャーからご飯を
別の容器に移してそろえ、意を決して昼間のままの格好、とはつまり
短パンにティーシャツという夏の格好で最上階、クミカさんの部屋へ
向かいました。そして玄関のインターホンを押すと、「開いてるから
そのまま入ってきて」と図々しくも上がり込んで、廊下を抜け広いリ
ビングに。リビングに入ると端のほうにあるアイランドキッチンのと
ころでクミカさんがサラダの盛り付けをやっていました。それで、
「あっ! いっけない。箸持ってくるの忘れた。とりに行ってきます」
と戻ろうとすると、お箸くらいあるからと引き留められ、持ってきた
タッパーをキッチンに置くように言われそうしました。するとその中
身を手際よく皿に盛り付け、ご飯をフライパンに入れると、その辺に
あった何かを適当に加えてピラフ風に仕上げ型にいれて皿にポンと。
手際の良さに見とれていると、
「ほら、これで、見栄えのするディナープレートの出来上がり。」
と皿をプレートに乗せて渡してくれました。
「窓辺のテーブルでいいわね。もう、座ってまってて。」と言われてそ
この席に着くとクミカさんはサラダや数点のおかずを盛りつけたものを
ワゴンに乗せてやってきました。
「私はワインをいただくけど、マー君も飲む?」
「い、いえ。ぼ、僕はまだ未成年ですから。」
と断ると、
「そうだったわね。まだ、高校生だったわね。じゃあ、ジンジャエールとか
コーラとか飲む」
「いえ、お水でいいです。」
「あら、遠慮することないのよ。高校生なんだし、それに、マー君のお母さ
にはよくしてもらってるし。」
そういうと冷蔵庫からジュースをだしてきてくれてしゃれたグラスについで
くれました。それで乾杯して食事をしながらいろいろ話してくれました。ク
ミカさんはワインをよく飲みました。ついであげてもすぐに飲んでしまうので
「ワインって、そんなにおいしいんですか?」ときいたのが運の尽きはじめで
した。
「おいしいわよぉ。マー君も飲んでみる?」
そういわれて、「僕は、未成年なんで・・・。でも、未成年がお酒飲んじゃい
けないのは、なんでなんでしょうね。」と聞くとクミカさんは「それはね、お
いしいから子供に飲ませたくないからなのよ。」と、なんかちょっと酔った感じで
いいました。「じゃ、飲んでみようかなぁ。」というとクミカさんは「じゃあ、
とっておきの飲みやすいの開けてあげるね」ともってきた瓶の栓を抜きました。
細長いスマートなグラスを二つ並べて入れ乾杯して飲みました。ちょっと苦くて
甘い、大人のサイダーという印象でした。食事が終わるまでに二人でそれを飲み切って
しまいました。クミカさんはもう一つ濃い紫色のワインを飲んでいたのでそれも少し
もらいましたが、発泡ワインとちがって渋く苦い感じがして半分ぐらいしか飲めませんでした。
食事が終わったときはすでに外は完全に夜景でした。窓辺に立って
「すっごい、きれいですね」と言いながら、なんかクラクラしている自分に気づきました。これが
よっぱらうということかと理解しました。そのとき、クミカさんは私の少し後ろに立っていて
私の肩に手をのせていました。なんか、ヤバイんじゃないかなと思いましたが、体が硬直し動けない
感じでした。
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