夕食のとき、俺が持参したビールを俺には注ぐのですが、美穂さんは口にしませんでした。
「飲まないんですか?」
俺の質問に美穂さんは答えました。
「嫌いじゃないけど、飲まないようにしてる」
そう答えました。
息子さんも寝て、ビール数杯飲んだだけでもうほろ酔いだった俺でした。
あまり長くいてはと思い、帰ろうとしたとき、美穂さんは俺を止めました。
「ちょっとだけ飲んじゃおっかな?もうちょっと付き合って?」
グラスを用意し、ビールを注ぎ、美穂さんはぐいっとグラス半分、飲みました。
「私、お酒で失敗しちゃったんだよね」
俺はその意味を美穂さんに聞きました。
息子さんがまだ一才になったばかりのとき、友達と飲む機会があって、息子は旦那さんにお願いして、羽を伸ばしたそうで、酔った勢いでナンパしてきた男性の誘いに乗り、一夜を過ごしてしまったんだそうです。
それは当然旦那さんにバレて離婚。
以来お酒は飲まないようにしてきたそうです。
「こんなお馬鹿な女だから、誰からも相手にされないしね」
そう言って、寂しそうに笑っていた美穂さんが印象的でした。
俺にも飲めと言わんばかりに、グラスにビールを注ぎ、半分残っていた自分のグラスのビールもぐいっと飲み、自分のグラスにもビールを注ぎ足してました。
そんな話しをされるとは思わない、女性経験0の俺は、対応に困りました。
注がれたビールに口をつけた俺、でももう美穂さんのグラスは空でした。
俺がビールを注いでやろうとしたら、グラスを手で蓋をされました。
「ダメ!酔っ払うと変なことになっちゃうから」
ちょっと困りながらも、俺はなぜか美穂さんの蓋した手をどけて、注ぎ足しました。
すると美穂さんはそのグラスを見つめながら、俺に対する評を言いました。
「純朴で真面目で一生懸命で。いい子だな~って思っていたから、息子と遊ばせたら、息子にも安本君にもいいかな~って思ったの」
俺をそう評価していたのか、その言葉に勇気をもらった俺は、入社以来、持っていた気持ちを、美穂さんに伝えました。
素直に嬉しいと言ってくれました。
でも言葉の最後には。
「嬉しい…けど」
そして目線の先には、タオルケットをかけられ、寝ている息子さんに向いていました。
それまで数回訪れていて、襖の隣部屋には、息子さんの布団が用意されてるのを知っていました。
襖を開けると案の定、布団が用意されていて、俺は息子さんを抱き抱え、布団に寝かせ、襖を閉めました
※元投稿はこちら >>