「こういう場所で携帯をいじるのは、お止めなさい」
「はい、お母様」
新しいお父様とお母様と行った高級レストラン。
美味しいのか不味いのかも解らない料理を、食べながら談笑してきた。
ドレスの下に着ているコルセットに締め付けられて、ちょっとしか食べられなかった。
(妊娠したら、絶対にこんな格好はできないなぁ)
と思いながら、叔父との関係を知らない叔母の娘を演じていた。
宴の主役も、表向きは私だけど、本当は私と叔父が叔母をもてなした物。
夫が娘を身籠らせようとしている事も知らずに、私を他人に自慢している母に罪悪感を感じながらも、私の中で甘美な背徳の悦びが沸く。
盛装して、食事をしながらも、お酒を飲んで酔った私は、前日のセックスを思い出して、サテンのショーツを汚していた。
食事の帰りのクルマで、携帯を確認したら、弟から何度も着信があった。
マンションで待ってると言うので、クルマを回して貰い、私は二人と別れた。
「ただいま」
「おかえり、どこへ行ってたの?」
「お姉ちゃん達と食事してた」
「凄い格好だね。お姉ちゃんにメイクして貰ったの?」
「まぁね。まだ腕は錆びてないらしい」(笑)
叔母は若い頃、モデルをしていた母の専属メイクをしていたので、成人式の時も別人みたいなメイクをして貰っていた。
「お兄さんは?」
「元気よ?話は聞いてないの?義妹から聞いてると思ったんだけど」
私は養子になる話を、弟に告げる頃合いをみていた。
ドレスを脱いでハンガーに掛けると、
「ねえ、コルセットの紐を解いてくれる?かたくて解けない」
と言って、弟を背後に立たせた。
「お兄さん、長くないらしい」
「そうなんだ。あの家も大変だね」
「私、養子になるって決めた」
意を決して告げた言葉に、弟は驚いていた。
「どうしてだよ!姉ちゃんが、何であの家の養子になるんだよ!」
以前から、私が養子になる話に反対していたから、反応を予想はしてたけど、いざその状況になると、思った以上につらかった。
私は弟に背を向けながら、コルセットを脱いで、トップレス状態になった。
「こっちを向けよ!ちゃんと俺を見て話せよ!」
と怒りを露にしている弟に、
「本当は、お姉ちゃんのオッパイが見たいから、振り向いて欲しいんでしょ?本当にエッチなんだから」
と、心にも無い言葉を吐いた。
弟への恋心を断ち切る為には、嫌われた方が良いと決めていた。
「なに言ってんだよ!大事な話だろ?こっちを向けよ!」
「あんたこそ、誰に口を聞いてるの?弟の癖に生意気に説教する気?」
我慢していた思いが暴発して、逆ギレした。
もう冷静に話をできる気分では無かった。
私は振り向いて胸を隠す事もなく、弟の顔を見て怒鳴った。
「お兄さんが死んだら、お姉ちゃん一人になるんだよ!あんた、うちらが、どれだけお世話になって来たのか忘れた?」
「それで、どうして姉ちゃんが養子になるんだよ?今まで通り親戚のままで良いだろ?」
「親戚で良いなら、あなたと私も姉弟じゃなくて、親戚で良いじゃん」
「屁理屈こねるなよ!」
「あなたと私は血が繋がった姉弟なんだし、結婚してるんだから、私が養子に行こうが、結婚しようが、私の勝手でしょ?」
「本気でそう思ってるのかよ?」
姉弟のケンカは一段落した。
「明日、あんたの家で続きを話してあげるから、午前中に娘は実家に預けて来なさい」
「逃げるのかよ?」
「逃げたりしないわよ!今日は私も疲れたから、あんたに帰れって言ってるの!」
「わかったよ!明日待ってるからな!」
と言って、弟は部屋を出て行った。
私は興奮した気持ちを抑えようとシャワーを浴びた。
何年ぶりかの本格的な姉弟喧嘩。
もう、セックスで仲直り出来るほど、互いの距離は近くない。
過去と別れる潮時だと思った。
※元投稿はこちら >>