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11
投稿者:コウジ
「浩二さん…」
透き通った声でした。
目を開けて声がした方向に視線を向けると、半開
きになっている襖戸の外側に義母が立っていました。
時計に目をやると七時過ぎでした。
僕が起き上がるのを確認すると、義母は襖戸を静
かに閉め姿を消しました。
昨夜風呂から出て室に戻ってからの記憶が定かに
なく、義母がその後どうしたのかも知らない爆睡で
した。
ここが義母の寝室と気づきふと枕の横を見ると、
畳まれた下着と靴下と、ビニールに入ったクリーニ
ング上がりのカッターシャツが整然と並び置かれて
いました。
壁に昨夜、この家のどこかで脱ぎ捨てたはずのス
ーツの上下が吊り下げられていました。
いつもなら二階の夫婦の寝室で、妻の由美とお互
いに慌しく服を着て階下に降りるのが通常で、これ
ほど静かな朝は経験のないことでした。
着替えを済ませ洗面所で顔を洗い、明かりの点い
たダイニングにいくと、テーブルに朝食の用意が整
えられていて、コーヒーのいい香りが鼻腔を擽りま
した。
「おはよう―」
冷蔵庫から何かを出そうとしている義母は、白い
ブラウスに濃紺のカーディガン姿でした。
色白の顔に朝起きて引いたと思われる、紅いルー
ジュが一際映えて見えました。
「おはよう…ございます」
やはり僕とは目を合わすことなく言葉だけの返答
で、普段通りの隙のない義母がそこにいました。
焦げ目が綺麗についたトーストと卵焼きと野菜サ
ラダ、その横に野菜ジュースのコップ。
僕が椅子に座り義母にかける次の言葉を捜しなが
ら、トーストにバターを塗っているところへ、湯気
の立ったコーヒーがすっと差し出されてきました。
「ありがとう…亜紀子は、昨日のこと怒ってるの
か?」
出されたコーヒーカップを手にして、僕は何気な
い素振りで尋ねました。
義母は僕の斜め前に整然と座り、コーヒーカップ
を口に運びながら、僕の問いかけには応えてはくれ
ませんでした。
食事の最中でしたが、僕は昨夜のトイレでの自分
でも想起していなかった突発的で卑猥な行為を思い
返していました。
そのことをこの場で詫びるのはさすがに気が引け、
黙って義母を見るしかありませんでした。
義母はコーヒーカップに付いたルージュを細い指
で摘まむようにして拭き取りながら、俯けたままの
顔を小さく横に振りました。
「浩二さん…」
と急に姿勢を整えるようにして、義母が顔を上げ
僕にきりりとした視線を向けてきました。
「私…この先が本当に怖いの。お出かけの前にご
めんなさいね。…あなただけを責めているのではな
いの。罪の半分以上は愚かなこの私にもあると思っ
ています。私は…」
「亜紀子、その話はもういい。起きたことは事実
で、道理も道義も通っていないのも事実その通りだ。
でも僕はこれまでのこと、何一つ後悔はしていない
よ。亜紀子を愛しているのは本当だ。由美と結婚す
る前に初めて亜紀子に会った時から、僕は亜紀子が
好きだった。許されないことだけど、漠然といつか
亜紀子をだけたらいいなぁ、と妄想してた。そして
それが経緯はどうであれ、現実の出来事となった。
だから、僕には後悔がない。そして妻の由美も愛し
てる。何度もいうけど、この家族の生活を守るため
なら、僕はどんな嘘でもつき通すっ」
朝からの思いもかけない展開でしたが、僕はそれ
だけのことを、自分でも少し驚くくらいに一気に捲
くし立てました。
いった言葉に嘘はありませんでした。
「亜紀子、もうこのことでは悔やまないでくれ。
地獄に堕ちる時は僕も一緒だ。いいね?」
僕の強い言葉と気配に圧倒されたのか、しばらく
の沈黙の後、
「…こんなおばあさんなのに…本当にいいの?」
と何かをふっ切ったような、気恥ずかしげな声で
応えてきました。
「コーヒーが美味しい。あっ、亜紀子の首の下の
とこ…痣…キスマークだ。隠さないと」
義母の着ているブラウスの襟下あたりの白い肌に、
くっきりと仄赤い痣ができていたのは本当でした。
義母の顔が見る間に朱色に染まっていました。
玄関を出る時、僕は振り返り義母の身体を抱き竦
め、唇を奪いました。
彼女からの抵抗はありませんでした。
「浩二さん、口紅が…」
義母はそういってハンカチを挿し出してくれ、そ
れで口を拭うと白い布に赤い色が薄く付きました。
「これ、亜紀子だと思って持っていくよ」
そういい残して僕は玄関を出ました。
妻の由美から電話が入ったのは昼休みの時でした。
昨夜も電話したのに、と最初に聞かれ、マナーに
していて気づいたのが夜中だったと、軽い言い訳で
済ませ帰りの時間を聞くと、
「さっきお母さんにも連絡したらね、今夜は集会
所で団地の会議があるみたいで、浩二さんと二人で
外で食事でもしてきたらっていうの」
と浮き浮きした声でいうのでした。
夕方の六時過ぎに駅に着くということでした。
由美との電話を済ませると、すぐに僕はまたプッ
シュボタンを押し続けました。
一回の呼び出し音で相手はすぐに出ました。
「はい、野村です…あっ」
昨夜に電話をくれていた野村加奈子でした。
昨夜の詫びをいってから、
「ご用件って何でした?」
と尋ねると、僕の都合に合わすので近々に一度会
いたいとのことでした。
先般のメールの件もあったので、少し気が引ける
思いもありましたが、もう一度改めてこちらから連
絡させてもらうということにしました。
「でも、外で二人で会うっていうのも、若い野村
さんもあれだろうし…僕も仕事柄、女の子と二人で
喫茶店というわけにもいかないし…」
「それなら、私のアパートでどうですか?」
「あなたの?…それはよけいまずいでしょ。若い
女の子の室に男の僕が訪ねたりしたら」
「かまいません。ただ相談に乗ってもらいたいだ
けで、変なことするのではないですから…」
「う―ん、弱ったなぁ。…本当にいいの?」
そういうやり取りをして僕は電話を切ったのです
が、何かまたやっかいなことが自分にかかってきそ
うな嫌な予感めいたものを感じました。
六時に駅で妻の由美を迎え待ち、そのまま二人で
郊外にあるフランス料理店に車を走らせました。
そういえば由美と二人だけの外食は久しぶりのこ
とでした。
ただこのことが義母からの提案だったということ
が、かすかに僕の気にかかるところではありました。
由美のいない二日間の僕との淫らな行状の後です。
少しでも三人でいる機会を避けたいという、少し
切ない女心、いや親心からの提案だったのかと僕は
思っていました。
車だったのでワインは口にすることはできません
でしたが、柔らかい牛肉とフォアグラを取り合わせ
たメイン料理はそれなりに美味しく、由美のほうは
屈託のない笑顔を見せていました。
僕も由美とは二日ぶりの逢瀬だったので、妙に新
鮮な思いで彼女の他愛のない言葉に笑顔を返し、相
槌を打っていました。
「昨日電話したのはね、研修中に校長からまた緊
急の電話があったの」
「ん?…何て?」
「女子バレーボール部の顧問をしてた先生がね、
二週間ほど前から身体毀して入院しているの。尿管
結石とかいう病気で手術が必要で、長期の休暇が必
要らしくて…それでね、私のいない緊急の職員会議
で私にバレー部の顧問をやれっていうのよ」
「ほう…」
「ね、当事者の私がいない会議でそんな勝手なこ
と決められたのよ。欠席裁判での判決みたいなもの
だって校長にくってかかったんだけどね、でも一ヶ
月後にね、バレーの大会があるっていうの。私だけ
の我儘で生徒たちを困らせるのもどうかと思って、
バレーボールの経験は中学の頃しか経験ないんだけ
ど、あなたの了解も取らないまま…ごめんね、承諾
しちゃったの」
「それは大変だね」
「顧問になると土日も子供たち練習に出るから、
私も休めなくなる」
「そうか…でも仕方ないんじゃない?」
由美からそれを聞いた時、僕の心の中に何か小さ
な空隙ができたような気がふとしました。
不埒にも僕は義母のことを思い出していました。
「僕のことはいいからさ、子供たちのために頑張
ってやってよ」
とそう締め括って二人はレストランを出ました。
帰宅したのは九時前でした。
義母ももう帰宅していて、居間で朝と同じ服装で
寛いでいました。
母と娘の他愛のない会話が長く続き、僕はパソコ
ンでの調べものがあるのでといって、二階の寝室に
引き込みました。
ベッドに入ったのは十二時前でした。
母親と揃いの薄いピンクのパジャマ姿で由美は僕
のいるベッドに潜り込んでくると、
「ねぇ、私、福岡のホテルで…シングルの室だっ
たんだけどね。…そこでテレビ点けたら、びっくり
するような映像が出てきたの」
と少し顔を赤らめて切り出してきたのでした。
「…それがね、あのアダルトビデオっていうの?
若い女の人が裸でベッドにいて…男の人に抱かれて
いるの」
「おやおや…そんなものを」
「初めてだわ、あんなの観たの。…すごいのね、
何もかも丸出しだったわ」
「由美も興奮した?」
「五分くらい観ちゃったけど…」
「興奮したんだ?」
「いや…そんな」
パジャマ越しに由美の乳房をまさぐりながら、僕
は彼女の耳朶のあたりに息を熱く吹きかけていまし
た。
義母との二日間の狂ったような愛欲で、正直なと
ころ、僕の性欲はそこそこでしたが、ここで怯むわ
けにはいきませんでした。
由美の乳房は義母のものよりはるかに大きく膨ら
みも豊かでした。
唇を重ねながら由美のパジャマのボタンを一つず
つ外し、直接その膨らみを直接手に感じると、若さ
の故か僕の下半身はまた勝手に反応し始めているの
でした。
「ああっ…あなた」
由美はすでにその気でいたかのように、僕の首に
両腕を巻きつけてきていました。
由美の体型は義母を一回り大きくしたくらいで、
身長は百六十二センチで体重は多分五十キロ前後で
すが、肌の色は父親似だったらしく健康的な小麦色
です。
教師を親に持つ謹厳実直な家庭で育ったせいか、
男性経験も僕と知り合った三十五歳まで一人しかな
いということでした。
由美のパジャマの上下を脱がし、ショーツ一枚の
裸身にして、僕は乳房から首筋にかけてを丹念に舌
での愛撫をしながら、片手をショーツの上に持って
いくと、
「ああっ…」
と薄暗い照明の中で、彼女は身体を激しくくねら
せ喘ぎの声を間断なく洩らすのでした。
僕の手が由美のショーツの下に潜り込みます。
潜らせた僕の指の先が彼女のショーツの中の肉襞
を割ると、そこはもう夥しく濡れそぼっていて、熱
を持った粘液が僕の指だけでなく掌までをしとどに
濡らしていました。
「由美、どうしたの?」
「ああっ…」
「今夜はめちゃ感度いいね。…ホテルで観たビデ
オのせい?」
「いやっ…い、いわないでっ」
「もう、欲しい?」
「…………」
言葉はなくすでに汗の滲み出した顔だけを縦に振
る由美でした。
義母と較べるとはるかに弾力と豊満感のある乳房
をわし掴む手に少し力を入れてやると、由美はまた
激しく全身をくねらせてきて、室の外に洩れそうな
くらいの声を上げて悶えるのでした。
義母もそうでしたが、由美もまた乳房への愛撫に
は過敏に反応するのは結婚当初からそうで、母娘と
もに体験した僕だけしか知らないことでした。
「欲しいなら欲しいっていわないと」
「ああっ…い、意地悪っ」
「いってごらん」
「…ほ、欲しいっ」
「そうか、じゃ入れてやる」
そういって僕は情態を起こし、由美の下半身のほ
うに身体を移して、昨夜義母にしたのと同じように
両足首を高く持ち上げおし拡げた間に割り込み、彼
女の茂みの中に突き立てたものを一気に深く沈みこ
ませていきました。
「ああっ…あ、あなたっ…す、すごいっ」
いつになく激しい由美の反応でした。
まさか本当に福岡のホテルで観たアダルトビデオ
に触発されたわけでもないのでしょうが、下腹部か
らの滴り具合も気のせいか、いつもより多い感じで
した。
由美のその部分の狭窄感も今こうして彼女を挿し
つらぬいていると、義母と似たような感じがするの
は僕だけしか思うことのできない実感でした。
「ああ…あなた…も、もっと突いてっ」
僕の真下で由美の両手が何かにすがるように宙を
彷徨っていました。
腰の律動に微妙に強弱をつけながら僕は飽くこと
なくつらぬき続けました。
途中で上体を折り曲げ由美に覆い被さっていくと、
彼女は待ち望んでいたかのように僕の背中にしがみ
ついてきました。
唇を重ねてやりそれから耳朶、首筋への舌の徘徊、
さらに乳房まで舌を這わせてやると、由美の悶えよ
うは僕も少し驚くくらいの激しさでした。
薄暗い明かりの下で乳首を捜し当て、そこに歯を
当て甘噛みしてやると、由美はもう自我を失くした
かのように悶え狂い、これまでにないくらいの咆哮
の声を上げようとしたので、思わず彼女の口を塞い
だほどでした。
僕はそれでも由美へのつらぬきを続けました。
僕もそれなりに昂まってはいましたが、頭の隅の
どこか一部分に覚めた箇所があり、そこで階下にい
るはずの義母のことを少しだけ思い出していました。
どんな思いで義母は今布団の中にいるのだろうか?
もしかして自分のことを少しでも考えていてくれ
ているだろうか?
理知的で賢い義母のことだから、由美と同じベッ
ドに寝る自分に対して、悶々とした嫉妬心みたいな
ものはまさか抱いてはいないだろう、とかの色々な
思いが錯綜していました。
そしてその錯綜の中に出てくる義母の、あの切な
げな声で喘ぐ顔が、妻の由美をつらぬいている僕の
心と身体に、それこそ錯綜的な昂まりを沸々と湧き
上がらせてきて、僕は彼女を強く抱き締めて絶頂の
渦の中深くで燃え果てたのでした。
「気持ちよかった…」
眠りにつく少し前、由美はそういい残して目を閉
じました。
「僕もだよ」
と応えた僕の言葉も嘘ではありませんでした。
自分が眠りにつく少し前、何気に今日が木曜日だ
ということをふと思いました…。
続く
※元投稿はこちら >>
15/07/10 23:10 (Cdy/lB.4)
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