撮影は、もちろん止められていました。母は身を屈め、ベッドに横たわっています。回復までには、少し時間が掛かりそうです。
僕は長引いている撮影時間を気にすることもなく、横たわった母を見て、どこか勝ち誇っていました。
『僕が逝かせてやった。』『母の逝ったところ見てしまった。』などと、受かれてもいたのです。
母は顔に手を当てていました。その手が左右に擦られるのを見て、涙が出ていることに気がつきます。
母の味方のはずの僕が、いつの間にかこっちサイドにいるのです。母に味方などいないのです。
母の回復には時間が掛かりました。身体のダメージよりも、精神的なものの方が強いように思えます。
母の傍らに、男性が腰をおろしました。彼氏と思われる、あの男性です。母の髪を撫でたりして、耳元で声を掛けています。
しばらくして、『ほらぁ~!立てぇ~!終わらんだろうかぁ~!』と男性が叫びます。『なにごと~?』と思った僕は、ベッドの方を見ました。
彼氏は母の髪を掴み、引き起こしてします。せっかく束ねていた髪はほどけ、長い髪を引っ張られている女性がベッドで泣いていました。
監督がある男性と打合せを始めました。戻って来た、年配の男性です。どこまで進んだのかを説明しているようです。
僕は、一緒に出ていった真由美さんの姿を探しました。しかし、彼女の姿はなく、頭に浮かんだのは、ベッドで精液を撒き散らさて横たわる彼女の姿です。
年配の男性には、今の状態が説明をされます。撮影が止まっている理由、『母の回復待ち。』ということです。
男性は、『犯させ!』と言いました。僕に、沈んでいる母をレイプしろと言うのです。監督は僕を見ましたが、『それは無理でしょ。』と告げます。
彼は、『勃たんですよ。』と続け、レイプなんて簡単ではないことを男性に伝えるのでした。
母の精神的な回復が待たれました。ベッドの上に座り、下に垂れた顔は上がりません。その姿からは、『もう、やりたくない。』と言うのが見え見えです。
彼氏が母を離しました。母はこちらに背を向け、塞ぎこんでいます。
その時でした。『もう息子、帰せ。』と年配の男性が告げます。その言葉は母の耳にも届き、『私も帰らせてぇ~!』と叫び始めます。
母のその顔は狂喜に満ちていました。『もうゆるしてぇ~!息子と一緒に帰らせてぇ~!!』と言って、暴れ始めます。
彼氏が母の手を握り、僕の手を握ったのは戻ってきた真由美さんでした。真由美さんは、初めて見るガウンを羽織っていました。
その下には、さっきまで着ていたホステス風の衣装を着ていますが、首もとから引っ張られたように破れています。ボタンも数個取れ、遊ばれたのでしょう。
真由美さんの手が僕を引きました。その手は、入って来た裏口に向かっていました。『イヤァ~!一緒に帰るぁ~!私も一緒に帰るぅ~!』と泣き叫ぶ母。
母の声が気になる僕に、『振り向かんの!早く、出るの!』と真由美さんは声を掛けてくれます。僕の姿が見えなくなった母は、更に泣き喚きます。
『もうイヤァ~!なんで、あんた達に犯られないかんのぉ~!もうイヤァ~!』と叫び、このあと母の身に何が起こるのかを察知してしまいます。
数時間ぶりに、この施設から出ることが出来ました。すっかりと日が落ちていて、外灯がなんとか照らせてくれます。
『こっち。』と真由美に呼ばれ、川沿いに停めてある車の方へと向かいます。3台止まっている車の中で、彼女がむかったのは大きなミニバン。
一番、真由美さんには似つかない車が、彼女の車でした。僕は助手席に乗せられ、車は走り出します。
あの男達から開放され、本当はうれしい気分のはずです。しかし、やはりあの母の絶叫を聞いてしまうと、気持ちが下がります。
隣の真由美さんが頼みでしたが、彼女も思うところがあるのか、しばらく無言を貫いていました。
7~8分走った頃でした。ようやく、真由美さんが口を開きます。『お母さんとしたの?』と聞かれ、『してないです。』と答えます。
『親となんか、したくないよねぇ?』と気づかってくれるのです。『私も子供いるけど、絶対に無理!』と、彼女に子供がいることを聞かされるのです。
僕の家は、県道をこのまま道なりのため、説明は少なくてすみました。ようやくと開放された気分となった僕たちは話を始めるのです。
お客相手の商売のせいか、真由美さんは年下の僕をまわすのもなれたもの。母には申し訳ないが、帰る車は盛り上がりました。
『真由美さん、きれいですよねぇ?』、僕のその一言から始まった会話で、かなりの時間持ってしまうのです。
20分後。『ここでいいです。』と彼女に伝えます。この先、道も狭くなるので遠慮しました。しかし、彼女は止まらずに、結局は家の前まで送ってくれました。
『ありがとうございます。』とお礼を告げ、降りようとした時でした。『あんな人達と関わったらダメよ。』と真由美さんに言われます。
『お母さん可哀想だけど、たぶん抜け出せないから。たくみくんは関わったらダメ。』とアドバイスをくれるのでした。
『わかったぁ~?』と先生のように聞かれ、『分かりました~!』と答えるのでした。
その日、母は帰って来ませんでした。帰ってきたのは、次の日の夜遅く。玄関に母の車が停まり、なぜか緊張をしてしまいます。
玄関が開き、母が居間に現れました。着ていた服は、昨日のまま。服に傷みもなく、少し安心します。
『ごめん。』、母はそう一言告げ、部屋に戻りました。気になったのは、手に持った手さげの紙袋。
あんな状況です。買い物などして帰ってくるはずもありません。
※元投稿はこちら >>