なんすぃさん、ありがとうございます。
つづき
ある日、母が怒って実家に帰ってしまい、父が迎えに行ったので、私達は二人きりになった。
(どうなるんだろう)
私も不安だったけど、中3の弟は高校受験なのに、勉強も手につかなくなっていた。
「もし、パパとママが別れたら、どっちと暮らす?」
と私から聞いた。
多分、その事を一番心配していると思った。
父とは相性が悪くて、母は教育に厳しかったので、どちらかを選ぶのは究極の選択だった。
でも私は、秘かに決めていた。
「私と暮らす?」
「お姉ちゃんは、高校を出たら、進学しないで就職するから、働いて家賃や学費を払ってあげるし、高校生になればバイトもできるから、一緒に頑張ったら、私達だけでも暮らして行けるよ」
と言ったら、
「本当に、それで良いの?」
と聞かれた。
「お姉ちゃん、いっぱい勉強してたし、大学を諦めるなんて勿体ないよ」
「俺が働いて、お金の事は何とかするよ」
と言うので、
「二人が離婚しても、高校を卒業するまでは、二人に養って貰うけど、あなたは高校に行かないと、雇ってくれる会社なんてないよ」
と言った。
「でも、でも、お姉ちゃんが、俺の為に働くなんて、やっぱり嫌だよ。だから、俺が頑張って働くよ」
と言ってくれた。
姉弟の関係が深まった気がして、勇気がわいた。
夜になって、母の妹が心配して、夕飯を作ってきてくれた。
資産家と結婚したオバサンに、全てを話したら、
「もし、姉さん達が離婚したら、オバサン家の子にしてあげる」
と言われた。
「姉弟で暮らしたかったら、オバサン家のマンションを一部屋空けてあげるから、子供はお金の心配なんてしないで、勉強してなさい」
と言ってくれた。
「ありがとうオバサン。俺、頑張って高校に行くよ!」
と喜んでる弟の横で、私は泣くのを必死に堪えていた。
「ありがとう」を言わなければいけないのに、言葉が喉に詰まって、涙がポロポロと滴り落ちた。
「なに泣いてんのよ!」
「あんたも私の子供みたいなものなんだから、困った事があったら、オバサンに言いなさい」
と、もらい泣きしながら言ってくれた。
凄く嬉しくて、私は声を出して泣いてしまった。
弟も私の肩を抱いて慰めてくれた。
温かくて、しっかりした腕に抱かれて、私の中の不安も消えて行った。
(もう、何も恐くない)
そう決意した夜、勉強する気にもならず、私は弟と暮らす生活を考えていた。
(新婚夫婦みたいで実は姉弟)というラブラブな生活を妄想してたら、悲壮感は消えて、希望に胸が膨らんだ。
翌々日の朝、二人で勉強しているところに、父が母を連れて帰ってきた。
「二人とも、ごめんね。心配かけたね」
「大丈夫だからね」
と母が、別人みたいになっていた。
どうやら実家で、オジサン(母の兄)と、相談にのってくれたオバサンに、かなり叱られたらしい。
「あなたも泣いてたんだって?」
「もう大丈夫、ママは二度と二人が泣くような事はしないから、許して」
と言われた。
(離婚しないんだ)
と思ったら、チカラが抜けた。
それから、弟も懸命に勉強して、偏差値も何とか志望校を選べるレベルになった。
推薦試験には、内申書で間に合わなかったが、本試験に間に合うよう、私は友達と行った初詣で、合格祈願のお守りを買った。
そして、御守り袋の中に私の陰毛を入れた。
処女の陰毛は、ご利益がある、って迷信にすがった。
(がんばれ!)
と祈りを込めて、お守りを抱いた。
志望校は、全部男子校。
共学は、女子の誘惑もあるから、敢えて男子校を受験するよう、私が理由をこじつけてススメた。
弟は、不可能と思われた志望校にも合格して、家族みんなで喜んだ。
男子校生になった弟は、制服姿も凛々しくて、惚れ直した。
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