先日、両親から実家を二世帯住宅に改装する話を聞かされた。
私の使っていた二階の部屋と客間を、弟夫婦と子供達が使うらしい。
弟と暮らした思い出が無くなると思うと、寂しい気持ちになった。
夜のうちに実家に戻って、要らない物の処分を始めた。
フリマに出す物と捨てる物を分け、段ボールに入れると、壁に掛けていた物や棚に飾っていた物が片付いて、殺風景になった。
父が浴室に行ったので、
「パパ、背中を流してあげるよ」
と言ってみた。
(たまには親孝行しないと)
と思ってたら、
「良かったわね」
と母が言った。
いつの間にか、母も娘に干渉しなくなった。
「パパ、入るよ?」
と言って浴室に入ると、湯船に浸かっていた父が立ち上がり、浴室の椅子に腰かけた。
久し振りに見た父の裸は、だらしないオッサンの裸になっていた。
すっかり薄くなった髪を洗う後ろ姿が、哀愁を漂わせていた。
背中を流しながら、
「もっと強く擦ろうか?」
と言ったら
「ちょうど良いから、」
と言われた。
子供の頃は、いくら強く擦っても
「もっと強く」
と言ってた父が、なんだか懐かしくなった。
「私も、汗をかいたから、お風呂に入るね」
と言ったら、冗談だと思ったらしく、返事がなかったから、私は服を脱いで、脱衣所のカゴに入れた。
「おい、本当に入る気か?」
「入るって言ったよ」
驚いたように私を見た父は、こっちを見ようとしないで、背中を向けたまま、後ろ向きで湯船に浸かっていた。
「一緒に入るのも、10年ぶりだね?」
と言ったら、
「ママにバレたら大変だぞ」
と言うから、
「なんで?」
って聞いてみた。
娘を相手に照れてる父が、カワイイと思った。
「ねえ、パパも私の背中を流して」
って言ったら、黙って背中を流してくれた。
「最近、ママとお風呂に入ってる?」
って聞いたら、
「全然」
と言うので、
「たまには温泉にでも行って、混浴したら良いじゃない?」
って言ったら、
「今さら」
と言われた。
「じゃあ私と一緒に行く?」
「もちろん、パパのオゴリだよ」
と言ったら、父は笑って
「オマエと行くなら楽しいだろうな」
と言って、浴室を出て行った。
正直に言って、もっと父親にオトコを意識するかと思ったけど、意外と冷静だった自分に、少し驚いた。
もう父と混浴するなんて機会は無いかも知れないけど、もし一緒に旅行へ行けたら、楽しくお風呂へ行きたいと思った。
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