バブー様へ
駄文を読んでいただきましてありがとうございます。
単なる叶わぬ恋に落ちた兄妹の悲恋物語ではありません。
家族を残し故郷に帰って来たのは、私の仕組んだ復讐劇なんです。
罪深い私をお許しください。
気が向けば投稿しますが、仕事が忙しくなればNGとなります。
紀子の返事には、私の心情を見透かすようなドキリとさせるもので
した。
何事もなく過ぎ去っていく日常のなかに、私だけが何時も心がざわ
ついていました。
来年の春になると大学進学のため、兄は東京で一人暮らしを始めま
す。
一人暮らしの生活のなかでは、彼女も出来るだろうと思うと、とて
も寂しく耐えられない気持でした。
私の兄への思いを告白することが正しいことなのか迷い悩み苦しみ
ました。
兄を異性として好きになったことが、いけないことなのか?
兄妹で愛することは出来ないのか、一人悩み苦しむ私の心のさざ波
が揺れていました。
兄との会話にも、ときには訳もなく暴言をはいたり、罵ったり、
むきだしの感情をぶつけては兄を困らせていました。
まるで思春期の反抗期が甦ったような、尋常でない精神状態でし
た。
猛暑だった夏も過ぎ、ベランダから見渡す山々の樹々もようやく色
づき初めています。
風呂上り、二階のベランダで涼しくなった秋風を感じながら星のま
ばたく夜空を見上げていました。
ベランダのドアを開ける音に振り返ると、兄の姿がみえました。
久しぶりに二人並んで見上げる夜空、何を話すこともなく秋風の冷
たさににそっと兄に寄り添っていました。
優しく肩を抱いて、ホッペにキスをしてくれました。
妹をいとおしむ兄の行動でした。
「お兄ちゃん、、、いつもごめんね、、、」
もうすぐ離れて暮らす二人にとって残された少ない時間でした。
叶わない愛と分かっていても、兄への思いをいつまでも引きずって
いる自分に情けなく涙が零れていました。
「由紀、、、どうしたんだ、、、泣いているのか、、、」
「泣いてなんかいないよ、、、お兄ちゃんこそどうしたの。ベラン
ダに出てくるなんて珍しいよね、、、どうしたの、、、」
「もうすぐ由紀ともお別れだな、、、俺、、、由紀にお兄ちゃんら
しいことしてやったことがあったかな、、、由紀の小さかった頃を
時々思い出すんだ。どこに行くにもついてくる由紀を、、、」
「お兄ちゃんはいつも優しかったよ。大好きだった、、、今はもっ
と好きだよ。だって私の初恋の人はお兄ちゃんだもの、、、今はも
っと好きだよ、、、由紀寂しいよ、、、」
離れて暮らす寂しさと、兄への思いを打ち明けました。
黙って抱きしめてくれる兄の腕の中で、瞳を閉じてぬくもりだけを
感じていました。
その夜は兄のベットで、一緒に眠りました。
兄に腕枕されて眠る幸せと触れ合う素足のぬくもりに、満ち足りた
時間がゆっくり流れ夢の国へと誘われていきました。
部屋の寒さに目が覚めたのは深夜でした。
兄のベットの中にいる自分がすぐには理解できないまま、これはま
ずいと思いながらベランダ伝いに自分の部屋へ戻りました。
兄との間に密かに期待したことが起きなかったことに安心しながら
も、寂しさを感じていました。
思い切って思いを伝えたことが、仲がよかった頃の兄妹に戻ったよ
うな気がしました。
勉強の妨げにならない程度に、兄の部屋への行き来が頻繁になりま
した。
部屋の鍵をかけることもほとんどなくなりました。
ベランダ越しに部屋を自由に出入りするようになった頃、忘れかけ
ていたあの時の記憶がよみがえってきました。
思い巡らすうちに、あの時、兄の机にしまったある物の存在を知り
たいと思うようになりました。
たとえ兄であろうと人の机の中を勝手に開けることは駄目であるこ
とは判っていました。
それ以上に知りたい欲求が勝ったのです。
兄が帰っていない機会を見て、机の中の物を探しました。
綺麗に整頓された机の中には、想像しているものは何もありません
でした。
机の奥にはA4サイズの雑記帳らしきノートと数冊の雑誌がありまし
た。
ノートの片隅から、はみ出した写真が数枚出てきました。
写真には、私が写っていました。
旅行での家族写真、運動会、いつ写されたのか知らない写真もあり
ました。
もしやと思う心が、戸惑う心へ、ときめく心が生々しく蘇ってきま
した。
兄が見つめていた物が、机の中にしまわれていた私の写真だったら
と
その思うと、嬉しさの半面切なさが込み上げてきました
その日は中秋の名月の夜でした。
ベランダに出て風呂あがりの熱った体を冷まそうと、澄んだ夜空に
浮かぶ月を眺めていました。
耳を澄ませば、遠くに夜汽車の音が聞こえてきます。
なぜか切なさを訴えるような悲しい音に聞こえました。
背中越しに呼ぶ兄の声に、驚きながら振り向きました。
いつもと違う思いつめたような兄の顔に、得体の知れない胸騒ぎを
覚えました。
「お兄ちゃんどうしたの、、、」
不安げに見つめる私に、兄は言いました。
「由紀、、、話したいことがあるんだ、、、俺の部屋に来てくれな
いか?由紀の用事を済ませてからでもいいんだ。遅くなっても待っ
ているから、、、」
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