【末路】
『あんた達、なんかおかしくない?』、真面目な顔をした母の言葉。言っていませんでしたが、怒れば姉よりもおっかない母です。
下手な言葉で切り抜けようと考えていた僕でしたが、隣に座った姉の顔を見て、言葉を飲み込みました。姉は下をうつ向き、戦う様子もありません。
『私、怖いんよぉ~。あんた達から返事聞くのも怖いん。けど、何かあるんだったら、構わないから言いなさい。』と母は続けました。
母の目を盗んでは、この家の中でも姉との情事は行われていました。しかし、やはりそんなものは、ほころびが出ます。母もそれは見逃しませんでした。
『してる…。この子としてる…。』、うつ向いていた姉が白状をします。僕を『この子』と呼び、セックスという単語を使わなかったのは母への配慮でしょうか。
『あんたもそう?』と母の矛先は僕に向けられ、『うん…。』としか、もう答えられません。『どうして、そんなことになったのぉ~?』と聞かれました。
『姉の妊娠も僕なのか?』とも聞かれましたが、それには姉は首を振り続け、父親が誰なのかは口を閉ざしました。
姉は娘を連れて、この家を出ました。その後も、姉との関係を望んだ僕でしたが、姉にはかたくなに拒否をされました。
姉とは会う機会も減り、久しぶりに会ったのは母の入院先でした。母が病院に運ばれたと聞き、僕が慌てて駆けつけると、先に姉が来ていたのです。
姉は現在52歳。その後、ある男性との間にもう一人女の子をもうけました。きっと幸せに暮らしていると思います。
僕も43歳になりました。結婚はまだしてませんが、ある女性との間に娘を授かっております。名前は『あかり』。
偶然なのか、姉が産んだ子の名も『あかり』です。
【完】
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