買い物が終わる頃には息子の帰宅時間になっていました。
息子が通学時に必ず通る公園のベンチ。
そこで具合の悪い振りをして待つことにしました。
優しい息子は見て見ぬ振りをしないはず。
しばらくすると息子が公園に入ってくるのが見えました。
大きいから直ぐにわかります。
目が合うと私の様子がおかしい事に気付いて
こちらにやってきました。
大丈夫かと私に声をかける息子。
一瞬だけ胸に視線を向けはしたものの
それは男の子だから仕方がないと思いました。
本気で心配している様子を見て
本当に優しく良い子に育ってくれたと感心。
不覚にも涙が出そうになりました。
反抗期だけど他人を思いやる気持ちは忘れていない息子。
その様子を見られただけで私は満足した気持ちになりました。。
だからもうこれ以上はと思い
家はこの近くだから大丈夫と行って立ち上がると
私に一言断りを入れて重たい荷物を持って着いてきてくれました。
「今の体調で、この荷物持って帰るの大変だろ?近くまで送るよ」
帰り道、久しぶりに息子と色々話をして
有意義な時間を過ごしました。
特にその中でも印象に残ったやり取りがありました。
『家にたくさん食べる子が居てね、いつも大変なの』
『それに最近文句も多いから、凄く困ってるのよ』
「何だよそれ。作って貰ってるのに文句言うとか有り得ないだろ」
(どのお口が言っているのかしらね。)
(知らない女の子に見栄をはるなんて
やっぱりまだまだ子供なのね。)
「でも感謝してるんじゃない?」
『……え?』
「俺も同じような感じで母さんに文句ばっかり言ってるけど
やっぱり感謝してるもんな」
「こんなにデカくなれたのも母さんの飯食べてきたおかげだし」
(やだ、ちょっと泣きそうなのだけど)
息子の言葉に泣きそうになりながらも平静を装い
一番聞きたかった事をこの勢いで聞いてみることにした。
『お母さんの事……好きなんだ?』
「まぁ、そりゃあな。
とういうか自分の親が嫌いな奴とか意味わかんないし」
『へ~。じゃあ反抗期とかもないの?』
「それは……まぁ、今それなんだと思う。
何か照れくさくて上手く向き合えないんだよ」
『照れくさいって……え?なに、お母さんが美人だからとか?』
「そんなんじゃないけど。」
「まぁ、家族だからわからないけど美人な方じゃないかな。
歳の割に若く見えるし」
「友達からの評判も良いんだよなぁ。
あいつ等家に来たら母さんの胸ばっか見てるしな。」
『ふ~ん。私も大きいから良く見られるけど
そういう視線って女の子は気付くから気を付けた方が良いよ?』
「まぁ気を付けるけどさ
デカかったら見てしまうのが男ってもんだろ?」
こんな事を会ったばかりの子に言うなんて。
素直で良いかもしれないけど、もう少し発言に
気を付けて欲しいと思う。
まぁ、何となくですけど
息子は私の事を凄く良く思っているみたいなので
良しとしましょう。
そうして話をしているうちに
いつの間にか家の前まで来ていました。
『ありがとう。その階段上って直ぐの所だから、ここで大丈夫よ』
「何だよ。家近所じゃん。
なぁ、せっかくだし連絡先交換しない?」
(この子、結構手が早いのね)
『ダメよ。だってタクヤ、お母さんの番号知ってるでしょ?』
丁度良いのでネタ晴らしすることにしました。
そっとマスクを外して息子に振り返る。
「……え?」
『タクヤお疲れさま。重かったでしょう。
直ぐにご飯の支度するからね』
『今日はタクヤの好きな生姜焼きよ?
大好きなお母さんの手料理嬉しいでしょ?』
「ま、マジかよ!?母さん良い歳して何してんだよ!?」
『あらあら……良い歳って
さっきまで鼻の下伸ばしてたのに、どの口が言ってるのかしら?』
『ほらほら、先に行って玄関の鍵開けてきて頂戴な』
「はぁ?俺荷物持ってるんだから、それぐらい自分でやれよ」
『何よ、急に冷たくなっちゃって。
でも、母さんが先に階段上ったらスカートの中見えちゃうでしょ?
それとも何?タクヤは母さんのパンツが見たいの?』
「あぁ!もうわかったよ!行けば良いんだろ!ったく!」
(うふふ……あんなに顔真っ赤にしちゃって可愛い)
さきほど息子の気持ちを聞けたおかげで心に余裕が出来ました。
悪態をつく姿が可愛く思える。
(最初はどうなる事かと思ったけど、結果オーライね♪)
年甲斐もなく実行に移して良かっと思いながら
息子の逞しい後ろ姿を追って家に入りました。
しかし、この時は知る由もありませんでした。
この出来事から、息子が徐々に私を
オンナとして見るようになってしまうことを……。
※元投稿はこちら >>